香具師
733 の例文
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自由自在な機智で時事問題などについて巧な解剖を試みる。こうなると香具師も一種の芸術だと思わせられることがたびたびある。そのときもわたしは彼の話を聞いていた。
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インチキを売り物にしている香具師なんかを見ると、腹が立ちましたよ。短い反物をごまかして売りつけたりするでしょう。
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香具師たちが、戸来刑四郎とたたかったことをきいても、その死闘の様相をくわしく目撃した者はほとんどいなかったし、それどころかなお彼らをヘンな奴らだという疑いをぬぐいきれなかったし、さらにこの連中を人間以下のものとみる蔑みの心を捨てきれなかったのだ。死んだ香具師と女忍者の墓は、三ノ丸の隅にある小高い丘の上であった。むろん、まわりは、芦のしげる沼で、その中に小さな円錐形を作って浮かんでいる土地だ。
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その他、ガラス切りの道具、電気のなくなった乾電池を新品にする薬、下駄の鼻緒立て器。どれもが香具師の手に掛かると生き生きし、しかも決して高価ではない。そのうちのいくつかは誰かが買って来て、試してみると、これがうまくいったためしがない。
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夕顔の花、水葵、芙蓉の花、木槿の花、百合の花が咲くようになった。そういう季節の或日のこと、香具師はフラリと家を出て、野の方へ散歩した。野には陽炎が立っていた。
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「あのものどもを捕えろ」 と、彼はいった。六人の香具師たちが逃げ散ろうとするまえに、騎馬はそれをとり巻いた。「うぬら、何者だ」 と、ちかづいてきて馬上から叱咤したその将は、まだ三十前の若さだが、いかにも鋭い、白皙の顔をしていた。
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とまれ愛妾のお半の方と、香具師とは関係があるらしい。どんな関係だか知らないが、俺を香具師だと信じているらしい。
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年より夫婦は、ついに香具師のいうことを信じてしまいました。それに大金になりますので、つい金に心を奪われて、娘を香具師に売ることに約束をきめてしまったのであります。
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年より夫婦は、ついに香具師の言うことを信じてしまいました。それに大金になりますので、つい金に心を奪われて、娘を香具師に売ることに約束をきめてしまったのであります。
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そのうち、秀吉にも劣らぬ大喝采を受けたのは、ひとりの香具師であった。
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はじめて彼が、いつのまにかわらじをぬいで、はだしになっていることに気がついた。「どうだ」 眼をまるくして見まもっていた七人の香具師は手をふった。
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「香具師さん、香具師さん、驚いたかい妾だよ」 女の声が聞えて来た。
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鬼っ児などを取られた者もなかった。香具師仲間の詮議の蔓はもう切れた、と、亀吉は落胆したように話した。「そうすると、因果者には何もかかり合いのねえ素人の餓鬼かな」と、半七は考えながら云った。
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彼女の祈願は、たゞ、それのみではなかつたか。稲荷の山へ見廻りに来て、その足でこゝへ立寄る香具師の親分があつた。すると主婦は化粧を始め、親分は奥の茶の間へドッカと坐つて、酒をのみだすのであつた。
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香具師独特の軽捷さに加えて、この男、眼だけは人間ばなれしているほどいい。ふだんはこの世のすべてがつまらんような顔をして、むしろものうげな身のこなしだが、このときばかりはいのちにかかわる、いや、夜狩りのとろ盛がそのいのちをかけてやってのけた奇襲の戦果をつたえる義務があるのだから、ありきたりの忍者など、あっけにとられて見送るほどの速さで逃げ出した。
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それも最初のうちはあやまって堪忍されたのであるが、あまりにそれが度重なるので、ほかの芸人がすべて彼女と一座するのを嫌うようになった。結局かれは香具師のなかまから構われて、どこの小屋へも出ることが出来なくなった。お紺はよんどころなく商売をやめて、そこらを流れ渡っているうちに、吉原の或る女郎屋の妓夫と一緒になって、よし原の堤下の孔雀長屋に世帯を持つことになった。
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生きているのが、奇蹟にちかい。彼が生きているのは、野の獣と変らぬ香具師の生命力だけといってよかろう。生きようという意志はない。
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商取引は、あきらかにそのために苦労していた。香具師や手品師や軽業師などは、掛小屋の前で大声を張りあげていた。それは理解できた。
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けさ未明、濠端での決闘で、逃げた奴は二人いた。ひとりは女香具師にきまっているが、もう一人もどうやら女であったような感じがする。それが何者かはわからないが、里見家から派遣された甲賀者であることに相違はない。
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戸外に面した壁の一点に、棒のような物が突き刺されていた。その端が坐っている香具師の口の辺へ真直に突き出されていた。そうして其先が漏斗型をなし、矢張り黒く塗られていた。
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ところで、七人の足軽は小田原からやってきたものだ。そして、そこの街道で、ブラブラと先をゆく七人の香具師に追いついた。話をしながら歩いているうち、何のきっかけからか、しばらく野天ばくちをやる破目になったのは、この足軽たちがまだ戦機にうとく、また箱根の嶮をたのんで、どこか気のゆるんだところがあったせいだろう。
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お源のいう顔役さんとは、上総屋虎五郎という香具師の親分、ふつうカズ寅でとおっていて、お粂も名まえはしっていた。香具師といっても、これくらいになると人間ができている。
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すると、このとき、表の方が騒がしかったのです。いつかの香具師が、いよいよこの夜娘を連れにきたのです。大きな、鉄格子のはまった、四角な箱を車に乗せてきました。
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するとこの時、表の方が騒がしかったのです。いつかの香具師が、いよいよその夜娘を連れに来たのです。大きな鉄格子のはまった四角な箱を車に乗せて来ました。
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江戸のまん中にむやみに熊なんぞが棲んでいる訳のものじゃあねえ。どこかの香具師の家にでも飼ってある奴が、火におどろいて飛び出したんだろう。伊豆屋でさっき聞いたんじゃあ、あの熊のために二十人からも怪我をしたそうだ。
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坊主風の者もある。武士姿をした者もあれば、香具師風をした者もある。老人もいれば若者もいる。
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日本で香具師という職業が、いつ、どのように発生したか、よくわからない。蒼空を天井とし、大道を店とする巷の商人、みずからの足に乗るキャラバン、漂泊する野のジプシーともいうべき彼らに、信頼すべき文献などがあるわけがない。
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いままで激烈な戦闘や大がかりな水攻めを受けたときにも見られなかった雰囲気であった。一つには、香具師たちの陽気な笑い声がきこえなくなったせいもある。彼らはこの三日のあいだに葬式をした。
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