胡散
全て
名詞
形容詞
134 の例文
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庸三はもちろん他の男にも同じ表情をしあるいはもっと哀切凄婉な眉目を見せるであろう瞬間を、しばしば想像したものだったが、昨夜のように気分の険しさの魅惑にも引かれた。昨夜連れこまれた時から、庸三は何か胡散な気分をこの家に感じていた。ずっと後になってからここのお神の口から洩れたことだと言って、そのころ葉子は例の外科の博士をここへ連れこんで来たものだが、他にも若い人と一緒にタキシイを乗りつけたりした。
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夕方になると、しゃなりしゃなりと、ルイズは腰をくねらせながら酒場へと向かい、ワインを注文した。主人は胡散臭げにルイズを見たが、それでも黙って注文の品をよこした。ルイズはコップにワインを注ごうとして、思い直す。
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感性が放縦で、そして性愛に対してはあくまでもナイーブで優しい。彼女にとって言葉は多少とも胡散くさく、だからこそそれを厳密に選ぶ。そのような女の恋愛はどこかミステリアスで、孤独で、少なからず秘密のにおいがする。
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坂を上ってきたのは、三十五、六ぐらいの、背の高い男だったが、先方も意外な所に人間を見つけたというような顔をした。彼は私に軽く会釈をしたが、何か胡散げに横眼で見るのだった。男は埃っぽいオーバーを着ていた。
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「そこで何をやってるんだ」 突然、とがった声が背後から浴びせられた。声の方を振り向くと、六十前後の農夫体の男で胡散臭げな視線を向けている。「いやべつに、そのなにも」 味沢は、無防備なところを衝かれてへどもどした。
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別のところでは巨人が盛んにコーヒーを勧められていた。また今一人の巨人はある家族が連れて来たアルザス犬を胡散臭げに見降ろしていた。犬は尻尾をちぎれるばかりにふっていた。
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久蔵は自分が胡散な行動をとってきただけに、断る理由を失った。彼は苦虫を噛んだような顔で、不承不承、六兵衛と歩いたが、途中でふりかえって見ると、駕籠には、三十くらいの士と、あの大奥女中とが今や乗り込んでいるところであった。
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更に他の家ではこの中学生は力が弱そうに見えた。実際を云えば夕方近くに自分で自分を売り込みに来た少年をみんな胡散くさく感じたのだ。時々雇人たちは薄笑いを浮べた。
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ひとりの声は若く、ひとりは嗄れて、年寄りじみている。卯之吉の眼には、前田家下屋敷の前を通っていた胡散気な侍と医者の姿が浮んでいた。おもに、しゃべっているのは若い声で、年寄りの声は聴き手に廻っている。
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むしろ、長井が介在したことで、その逆の立場にいるともいえよう。口にこそ出さないが、なんとなく胡散臭げに、小泉を捉えているようである。これは、聞き込む浦上にとっては有利だ。
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この旅館には無線タクシイやハイヤーを呼ぶことができる。周囲にある胡散くさい気配を感じるような日には、まっすぐこの旅館に行くのもいい方法である。そして、ハイヤーを呼んでもらうのだ。
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構えは解いたが、警戒心と胡散臭げな視線を添えて、彼女を見据える。雨は正座したまま向きを変え、ジュウの視線を正面から受け止めた。
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これは他の者全部が顔もあげられずにいるのに、この女一人が顔をあげていたために驚いたのではない。相沢には、女がこちらを胡散と見抜いて、わざとじっと見つめていたような気がしたのである。これは、充分度胸をきめて来たことでいて、ぎょっとせずにはいられなかったことだし、またその刹那のこちらの急に臆病になった心持をあるいは見られはしなかったかの不安もあって、相沢も最初の内のような気合には、またとなれなくなった。
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車掌と、馭者と、他の二人の旅客とは、胡散そうに彼をじろじろ見た。
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考へれば考へるほど、この「松の木の根」はをかしい。あの夫に限つて、とは思ふものの、なぜか、「松の木の根」が胡散である。様々な情景が、松の大木の盛り上つた根を中心にして、頭に浮ぶ。
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しかし、どんなに色濃い秘密の影で事件を覆いかくすべく、注意おさおさ怠りなかったにしても、この事件にはやはり発覚すべき何かがあった。なるほど女たちの死は誰知る者もなかったが、夫の事件には、誰の目にも何かひどく胡散くさい不公平な点があるようだった。動機は半ば公然と知れ渡っていた。
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いったい、何者なんだろう?ルイズが胡散臭げに自分を見ているのに気づき、ジャネットは笑みを浮かべた。
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