粗忽
250 の例文
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おたがいに打ってつけのこの二人のあいだをとりもったのは少佐だった。彼はパガネルに、結婚は君がなし得る〈最後の粗忽〉だと言いさえした。パガネルはひどく狼狽し、まったく奇妙なことに運命を決する言葉を発する決意を下せなかった。
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演若は或朝、鏡で顔を映して見た。粗忽にも鏡の見当を間違えて、自分の頭や顔を鏡の中へ映し入れなかった。演若は鏡の中に頭の無いのに驚いて、自分を化物と思い込んだ。
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彼女は少し粗忽なところもありますが、努力家なのは俺が保障します。
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もうこのうえは、実際に人間に牛痘をうえて、実験してみるよりほかはないと思いましたが、さてそれは容易のことではありません。人間一人の生命にかかることですから粗忽にはできません。かような実験は小児でなくてはできませんが、さて自分には子供がなし、むやみに他人の子をかりてくることもできません。
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ファブリツィオ猊下が危険な目に遭わせられたことに対して仕返しをしようなどという意図はこちらには全然ありませんでしたし。あの粗忽な侍僕には阿片のはいっている小壜しかあずけませんでした。このことは誓って申し上げます!
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私にいわせれば、これは不注意のためではありますまい。ことは重大なのだから、不注意や粗忽があろうとは思えないからです。では急いだのかというと、早朝までに出しさえすれば、ヘンリー卿がホテルを発つまでには必ず届くはずなのですから、なぜそう急いだかという点が、興味ある問題となります。
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紳士の床の間は尽くこれ偽物の展覧会さ。心ある者に見せたらばかえってその主人の粗忽にして不風流なるを笑われる位だ。西洋の油画にはマサカこんな事はない。
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この粗忽が原因になって、私はこれから信用を得る事が無くなるのかも知れない。ほんとうに私の粗忽でした。
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衛兵も召使も、それぞれの部署についていた。王虎が門内にはいってくるのを見ると、彼らは恐れをなして粗忽のないようにつとめた。王虎は帝王のように威風堂々とあらわれた。
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なぜかと訊くと、わしが信じられんからという意味のことをいう。わしはみなも知る通り少々粗忽なところがあるから、それも道理だと承知した。杉はまた、これであなたの顔が立つ。
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いそいで方々のポッケットを捜したが手にさわらなかった。私は心で今朝までいた宿屋の二階の一室を思い浮べて、自分の粗忽を怒った。
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考えてみると、毎回、違った運転手さんと、或る時間二人きりで密室の中で過すわけである。私の粗忽からきまりの悪い思いをしたこともあるが、心に沁みる話を聞くことも多い。この間、現職の警察官が制服姿で女子大生の部屋を訪ね、乱暴して殺してしまうという事件のすぐあとで乗った車がそうだった。
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そして己が励ますとき、また走って行け。この場所で粗忽があってはならないのだ。
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と、其処へ、何を慌ててか、一人の助手が肘を縮めながら、駆け込んで来た。彼れはいきなり板の間の洗面器へ、粗忽な足の先を突きあてた。血は丁度嘗て人間の体内に居た時の如く、波打った。
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胡の寝返りは、もとはと言えば彼が悪いのではない。日本の一軍人の粗忽さから発していた。ある日、「曙」で胡振玉主催による月見の酒宴が開かれた際、招待された関東軍の一将校が彼に礼状を書いて手渡した。
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さらに剃っているうちに剃刀の柄が外れてきてしまったので、柄の部分を内匠頭の頭にトントンと叩きつけて直した。かなり無礼な行為であったが、内匠頭は唯七の粗忽ぶりを知っていたので笑って許した。またあるとき唯七は芸州浅野本家に使いに行く事になった。
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当時の北魏の政界は多難であり、元略は保身につとめて、他者を裨益する方策を持たなかった。爾朱栄は元略の姉の夫であったが、元略の粗忽な性格を嫌っていた。元略が鄭儼や徐紇らの仲間であったことも、関係をより険悪化させた。
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これはあながちに辻番人の粗忽や伊平の臆病とばかりは言われまい。念のためにその西瓜をたち割って見てはどうだな。
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しかしそういうこととはべつに、依頼人が死闘しているときに、ほんのわずかはなれたところでそばを喰っていた兵六の姿には、救いようのない滑稽な感じがつきまとっている。そして路は、話を聞いたときに直感的にその滑稽さが兵六の粗忽とつながっていることを悟ったのであった。家にもどる道すがら、路が考えたのはそういうことだった。
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認めて、過不及なく使って行く事が生命である。演若は自分の粗忽から、自分で自分の頭を失うたと思った。演若の心がそう思っても演若の頭は元より演若の肩の上に据わって居るのである。
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打消しても打消しても、人は先入の誤解を忘れなかつた、甚しいのになると、自分に兄のある事を熟知してゐながら、尚且廢嫡問題が自分の身に起らんとしてゐるのだと考へる粗忽な人も多かつた。否その粗忽な人ばかりだと云つてもいい程、人々は憎む可き記者の捏造の世界に引入れられてしまつた。たとへその記事を全部は信じなかつた人も、多少の疑念をいだいて自分を見るやうになつた。
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あなたのことだから、こいつは粗忽で言つたことぢやないんだ、腹に一物あつてのことなんだ。そんな悪口といふものは、罪のない一人の男から、あらゆる糊口の道を奪ひ去り、その男を世間の食ひ物にし笑ひ物にしてしまふといふ、致命的な結果を生みかねないことを、あなたは百も承知なのだ。
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それ所ではなく、日本の何処へ旅するとも、沖縄においてほど古い日本をよく保存している地方を見出すことは出来ません。粗忽にも沖縄を台湾の蕃地の続きの如く思ってはなりません。ですがこの島のことは既に種々なる文献があるにかかわらず、一般にはよく知られていない恨みがあります。
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うかつながら、超さんに武道会の開催場所を聞いておくのを忘れていたのだ。同じ出場者である龍宮がさっきまでいたのに場所を聞いておくのを忘れるとは、何とも粗忽な話だ。
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野卑ではないが無骨者と評されても仕方が無い。もっとも、本人は無骨と言われようが粗忽と誹られようが気にしないに違いない。そして最後の一人、二十代半ばの見るからに精悍な若者は口をきく素振りも無くジッと座っていた。
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お疑いをかけましたのはてまえの粗忽でござります。
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仕出し屋の女中の方では、食われてしまってもこちらの粗忽だから文句のないところへ、米友が手を附けずに返してくれたのだから大へん喜びました。「気をつけなくっちゃいけねえ、俺らだから手を附けなかったが、ほかの者なら食ってしまうんだ、俺らも実は食ってしまおうかどうしようかといろいろ考えたんだ」 「どうも相済みません」 仕出し屋の女はきまりの悪い面をして、一合の酒と鰻の丼を持って急いで敷居を跨いで外へ出ました。
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粗忽噺の代表的なものであり、「風呂敷を持ち上げる」「引越し先に向かう」「釘を打つ」「向かいの家に向かう」「隣の家に向かう」とすべてやろうとすればかなり長尺な噺だが、演者やその時の都合に応じて部分的に省略されることも多い。また、各場面ごとの男の粗忽ぶりを簡略化したり、逆に増やすことでも時間が伸長する。そもそも本来のサゲもホウキではなく、さらにその後に家族の人数を聞かれ、父親を忘れていたという話が続き、現在に知られるものも実は途中で打ち切ったものが広まったものである。
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