窓外
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名詞
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母と嫂は物珍らしそうに窓の外を眺めて、田舎めいた景色を賞し合った。実際窓外の眺めは大阪を今離れたばかりの自分達には一つの変化であった。ことに汽車が海岸近くを走るときは、松の緑と海の藍とで、煙に疲れた眼に爽かな青色を射返した。
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皇帝の前から退出しながら、ミッターマイヤーは、瞼の熱さに耐えていた。そして、窓外を見やって動かない皇帝もそうであろうと信じたのだった。大本営から退出したミッターマイヤーは、自宅へ帰る前に、マリーンドルフ伯爵邸を訪れた。
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それは朝からのひどい雨の日であつた。彼は寝衣の乾かしやうのないのに困つて、ぼんやりと窓外を眺めて居た。梧桐の毛虫はもうよほど大きくなつてゐるのだが、こんな日にはどこかに隠れてゐて姿を見せない、彼は早くこの不吉な家を出て海岸へでも行つて静養しようと、金の工面を考へてゐたのであつた。
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十時に彼は、姉たちが玄関口を通るのと、大扉がぎいと鳴るのとを聞いた。そしてしばらくすると、その三人の婦人たちが窓外を通りすぎるのを見た。しかし格別気にもとめなかった。
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問題の窓ガラスは布でふきとった形跡があり、指紋は一つも出なかった。窓外の地上に落ち散っていたガラスの破片にさえ一つの指紋もなかった。この一事をもってしても、賊が並たいていのやつでないことがわかるのだ。
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寝過ごしたかと思ったのだ。まず窓外へ目を遣るが、どの辺を走っているのかまったく見当がつかない。
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夜が明けて山陽線の駅々を過ぎ、広島に近づく。広島は間もなくかと思いつつ窓外を見ていると、他の乗客も皆外を眺めている。広島近郊に入るにつれ驚いたことには緑の山の広島に面した斜面の木々の葉が褐色の枯葉になっている。
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その視線は彼を通りすぎて、窓外の深く積もった雪の方へと注がれていた。「あなたは、しっかりしていらっしゃる」と、ポワロは優しく言った。
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「落盤かしら、ガスかしら」 そう言った美津子の顔が真っ青でした。汽車の乗客たちも、ようやく窓外の街の異常な空気に気がついたようです。美津子と同じように、青くなっている男や女が何人かありました。
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私は店内に眼を転じた。どの客も視線は自然に窓外の眺めに吸い寄せられていくようだった。ただ、老女だけが店のあちこちに母親が幼児を見るような暖かくて熱心な視線を送っていた。
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それは朝からのひどい雨の日であつた。彼は寢衣の乾かしやうのないのに困つて、ぼんやりと窓外を眺めて居た。毛蟲はもうよほど大きくなつてゐるのだが、こんな日にはどこかに隱れてゐて姿を見せない、彼は早くこの不吉な家を出て海岸へでも行つて靜養しようと、金の工面を考へてゐたのであつた。
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迷うところがなかった。彼はビールが来る前から楊子を使い、つまらなそうな顔で窓外を見ていた。実に堂々たるものであって尊敬しないわけにはいかなかった。
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加速度なしでは、せいぜい一・〇メートル以内に落下してしまう。そこで加速度をもって窓外に出るためには、どのようなことが想定されるか。下半身麻痺した人が窓ぎわに接したベッドの上で、仰臥位から起き上がろうと、右手で足元のベッドの柵に取りつけてあった紐を手前に引きよせる。
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「その四庫全書が、この杭州にあるのですよ」 思いがけなかったことなので、危うく私は声をあげるところだった。ゆるやかな窓外の闇のうごめきが激しく渦巻き始めるように感じられた。「そして翁の一味はその四庫全書まで焼き払おうとしたのです」 老主任の声は再び暗く激しい調子を帯びた。
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それはあらゆる感覚器官を通じて絶えずはいってくる。目の前には常に自分のいる部屋の一部あるいは窓外の景色がある。耳には何かの音が聞こえている。
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ちょうど私が四条河原町界隈で遊んでいた頃合いだ。弟は聖護院蓮華蔵町の偽電気ブラン工場、工場室から窓外を眺めていた。薄汚れた三階の窓からは、しんとして薄日に輝く夷川ダムと、そこへ半島のように突き出した京都市上下水道局疏水事務所が見える。
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東京駅では三時五十五分の山北行に乗って車内で持参の弁当を食べた。持参の本を読みかけたが、頭に入らないので、窓外の景色に眼をやった。大井、大森、蒲田にかけて、線路沿いの家が取りこわされ、あとに石を敷いた大通りが、いつの間にかできている。
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