相好
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名詞
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自分を信じない者が唯孫四郎に止まるなら「あんな奴に俺の何が分つて堪るものか」と平気でゐられる。併し孫四郎の冷たい表情の裏には同じ相好の運命の顔があるやうな気がした。それを自分の莫迦らしい気の故であるといかに思ひ、その不快な幻影を払ひ退けようと頭を打ち振り乍らも脳裡にこびりついた孫四郎の顔は只孫四郎の顔とは思へず、その皮肉は只孫四郎の皮肉とは思へなかつた。
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「旦那ぁ」 途方に暮れた岩太は立ち上がり、肘を枕に寝そべる主人を困った顔で眺めた。が、その後には、思わず相好が崩れてしまうのをどうすることもできない。一人悦に入っていた。
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糸島の屍骸のあったところです。あそこへ埋めておいて、相好の見分けがつかなくなるのを待っていた。そして、二十日の晩、いよいよ、お誂えむきの状態になったので、日兆君が掘り出してかつぎ出し、あらためて『黒猫』の庭へ埋めた。
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ゴルトムントは屍の顔を見くらべた。少女の顔はひどく相好が変っていたが、絶望的な死の恐怖がまだ残っていた。深く荒々しくベッドへめりこんだ、母親のうなじと髪には、怒りと不安、逃がれようとする激しい気持が、読みとられた。
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実際のところ、部屋に踏み込んでベッドのほうに目をやるや、その予想が外れてはいなかったことを悟った。ベッドに横たわった少女は、顔の筋肉が弛緩して相好が変わって見える。これは、死んでいる。
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高里はほとんど自失したように呆然としていた。警察がやってきて高里に死体の確認を求めたが、相好の区別などつくはずもなかつた。ただ泥のように形を失った手に金の指輪を見つけ、母の結婚指輪だと思います、とだけ高里は答えた。
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一座の気分はほとほと動きが取れなくなった。その間でいちばん早くきげんを直して相好を変えたのは五十川女史だった。
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今まのあたりに見る顔はわたしの顔よりほかのものではない。ときどき鏡の中に見かける顔、まごう方ないわたし自身の相好なのだ。じつはさきほど原の中で善太郎の顔を見た際、ゆえ知らず胸をとどろかし、いや、これは京子のまぼろしに脅かされたか、とんだ通俗小説の一場面を演じたものかなと苦笑したのであったが、今はもう苦笑どころではなく、わたしは瘧やみのごとくがたがたふるえ出す全身を抑えようもなかった。
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啓太、こんな時だというのについ「にへえっ」と相好を崩してしまった。美少女揃いの彼の周りに唯一いない大人の香りが激しくした。
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そこで、さっぱりと全部の歯を抜いてしまって、痩せた歯ぐきの上から、前とは正反対に厚い肉の出っ歯の総入歯をかぶせたのだ。そうすると、君がいま見ているように、相好がまるで変わってしまう。この入歯を取った時に、はじめて君は僕の正体を認めたくらいだからね。
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五郎兵衛はそれを見てゐるうちに、再び驚いた。髪をおろして相好は変つてゐても、大塩親子だと分かつたからである。
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まるで剛を真似たように、上半身は裸、ベルトに包丁を挟んでいる。剛と違っているのは、その男の姿が相好の判断もつかないほど血で汚れていることだった。男はぎしり、と音をたてて一段低くなった裏庭から廊下へ上がりこんでくる。
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入って来たのは原聡一郎氏である。一晩のうちにあんなに相好のかわった人物を、私はまだかつて見たことがない。昨日の聡一郎氏には微塵も暗いかげは見られなかった。
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むしろ願ってもないことじゃとでもいうように、相好を崩しおったよ。
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宴会の一座が純客観的に僕の目に映ずる。教場でむつかしい顔ばかりしていた某教授が相好を崩して笑っている。僕のすぐ脇の卒業生を掴まえて、一人の芸者が、「あなた私の名はボオルよ、忘れちゃあ嫌よ」と云っている。
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そんなわけじゃから、今も人付き合いは苦手じゃ。まさか子や孫を憎いとは思わぬが、つい相好を崩すおのれが嫌でたまらぬ。近藤勇はことさらわしに目をかけてくれたが、この気性を侠気と誤解したのじゃろう。
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何気なく足を運び、距離が縮まる。相手の相好が見て取れるほどになったとき、田中は足を止めた。思わず、ぽかんと口を開けた。
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