煩悩地獄
全て
名詞
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御息所は、源氏のひそかな、男の好色ごころを俊敏に明察して、さかしくも、釘を打ったのだ。その言葉には愛執の煩悩地獄を味わわせた人、源氏に対するひそかな怨嗟のひびきもあった。しかし源氏は色にも出さず、まめやかにいった。
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源氏を恋の狩人、と私は書いたが、しかしそれは粋人ということではない。源氏は生涯、悟ることはなく、恋の諸訳を知ることなく、無明の煩悩地獄をさまよう。昏きより昏きうちに生を終えてしまう。
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兄は意識を弁ぜぬ。彼の次なる作「犬」や「提婆達多」のような愛欲煩悩地獄からの解脱に苦しむのは彼自身の心象風景であろう。小説の筆を絶った中は、鳥の物語や隠棲生活の随筆などをぽつりぽつりと書き、短歌や俳句をつくる。
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もし、いま、突き放されて、灯をつければ、淀君は、たちまち、大阪城の女あるじの威厳をその身にみなぎらせて、烈しく咎めだてて来るであろう。しかし、この暗黒をさいわいに、替玉の侍女と察知したふりをして、あえて人倫の道をふみはずしてしまえば、実母もまた一個の女性として、煩悩地獄の中で、肉欲におぼれてしまうに相違ない。秀頼は、淫虐狂暴復た人理なしと評された金の廃帝海陵王にでもなったような凄まじい気組みになると、四肢に淫獣の暴力を張って、いきなり、片腕を下方へのばして、淀君の寝召も、腰裳も、ひきめくった。
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