海千山千の女
7 の例文
(0.00 秒)
-
中でもとりわけ際立っているのは、隅の壁に背をつけて立つ長身の若者で、何かをじっと考えこんでいるらしい黙考の姿が、戦慄的な美貌とあいまって、他の全員の視線を引きつけていた。そのくせ、男あしらいにかけては海千山千の女たちも手を出さない。出さないどころか声もかけられない。
...
-
それが、かえって、いけなかったんです。あれが、海千山千の女だったら、私は、一度で、止めてしまったろうと思います。ところが、相手は、ぴちぴちした若い娘です。
...
-
わたしの虫ずの走るような経験から言うと、これは、ある種の男たちが胸に一物あるときの明白なサインなのです。それに、このフォーセット博士は、海千山千の女でさえ手を焼くような男なのですからね。そうですとも、スキさえあれば、有無をいわさずつけこんでくる、厚顔無恥な手合いなのです。
...
-
川島は最初にその話を聞いた時から、海千山千の女に言いくるめられただけではないか、と疑っていたのだから。綸太郎もさやかの言うことを真に受けたわけではなかったが、同じ日に京王プラザで宇佐見彰甚と意見を交換したのがまずかった。
...
-
相手は水商売のプロだろう、海千山千の女にうまいこと言いくるめられただけなんじゃないか?
-
-
向き合いも突き放しもしない絶妙の笑みを浮かべ、シンシア・マーセナスはさらりと受け流す言葉を紡いでみせる。大らかで物怖じしない御令嬢の外面の下に、一刻一刻自分の位置を見定める冷徹な観察眼を持つマーセナス家の長女は、三十路を前にしてすでに海千山千の女主人の風格だった。「あら、またそんなご謙遜を」と飛んできた声を躱す微笑にも澱みがなく、ついでにテーブルに目を走らせ、全員のワイングラスが満たされているかチェックするのも忘れない。
...