普請中
53 の例文
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すぐに二人前の注文をした客と分かったのは普請中殆ど休業同様にしているからであろう。この辺まで入り込んで見れば、ますます釘を打つ音や手斧を掛ける音が聞えて来るのである。
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「お客の方にも、馬をあげろ」 忽ち、三頭の馬が曳かれ、使者たち各〻の前に鞍をすすめた。普請中の大手の道を、秀吉と三使の姿が駒をならべて降りて行った。城下の辻へ来ると、利家がたずねた。
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すぐに二人前の注文をした客とわかったのは普請中ほとんど休業同様にしているからであろう。この辺まで入り込んでみれば、ますます釘を打つ音や手斧をかける音が聞えてくるのである。
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都甲太兵衛はその後重く用いられて江戸詰の家老になったが、このとき不思議な手柄をあらわした。丁度藩邸が普請中で、建物は出来たがまだ庭が出来ていなかった。ところが殿様が登城して外の殿様と話のうちに、庭ぐらい一晩で出来る、とウッカリ口をすべらして威張ってしまった。
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材木をはこびこみ、普請をはじめている見世や、すでに建ちあがった見世も幾つかあり、そのあいだに残る空地は、材木置場、ごみ捨て場になっている。笹屋の跡は、隣りの見世を普請中の大工が鉋をかけるのに使っていた。木屑、鉋屑が大工の足もとに堆くたまり、風に舞い上がる。
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身も心も境もおしなべて変っている。普請中の精養軒で、主人公が外国からやって来た昔馴染の女を待ち受けている。
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おふくの目に映った江戸のお城は案外な感じであった。まだ天守閣が完成して居らず本丸は堂々としていたが、その他は普請中のところが多い。しかし、江戸の町には異様なほどの活気があふれていた。
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ある雨上がりの夕刻、参事官の渡辺は、築地の西洋料理店に出かける。店内はまだ普請中で、応接室にまで響きが耳につくが、五時になると職人が帰ってしまって静かである。やがて独逸人の若い女性がやってくる。
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この屋敷は前に司令長官をして居られた時分の屋敷であって、それほど大きくない。この頃新たに造って居る屋敷は非常に立派なものですが、まだそれは普請中で移られて居らんので、元の屋敷の方へ参ったのです。それでもなかなか大きなもので三丁四面余あります。
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この屋敷は前に司令長官をしておられた時分の屋敷であって、それほど大きくない。この頃新たに造っている屋敷は非常に立派なものですが、マダそれは普請中で移られておらんので、元の屋敷の方へまいったです。ソレでもナカナカ大きなもので、三丁四面余あります。
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すると渡辺は日本はまだ普請中で、進んでいないから、アメリカ行きを勧める。
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今日赤い広場はみちがえるような光景である。普請中のレーニン廟の数町に渡る板がこいは、あでやかな壁画で被われている。集団農場の光景だ。
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途中で一人の煙突掃除人がその煤だらけの脇を突き当てて、彼の肩をすっかり真黒にしてしまい、普請中の家の屋の棟からは石炭がどっと頭の上へ降ってきた。が、彼はそんなことには少しも気がつかなかった。
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はいったのは松坂の三好屋という質屋だったが、そんなわけで、やっぱりあっしもだいぶあわてていたんですね。ちょうど三好屋は土蔵を普請中で、高く足場が作ってあった。それだけを見て、これに決めた、と、その足場伝いにはいろうとしたんだから。
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道の両側に畠があり、材木が積みかさねてある。普請中の材木の匂いが霧の匂いにまじって香ってくる。長崎の街はまだ街づくりの最中なのである。
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成程、人を襲うにはうってつけの場所といえた。道の片側は空地で、すぐ向い側に家が普請中ということもあって、その材木置場になっていた。人がかくれようと思えば、まことに都合がよい。
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あの日の午後、私たちは鎌倉山のロッジの前で自動車を棄てた。ロッジは何かの普請中でしまっていたが、私たちはそれを遺憾とも思わないで、初秋の冷かに澄んだ光の中を、恋人どうしのように歩いていった。秋草の花、薄の穂、青い海、そして富士山がくっきりと空に浮出していた。
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曽田屋の父兄らに注意をあたえて、適当の治療法を講ずればよい。だが困るのは、その問題が問題であるだけに、父兄の方から言い出せば格別、わたしの方から父兄にむかって、ここの家の普請中にこんな出来事があったか、又その後に娘たちがどうして淫蕩の女になったか、それらの秘密を露骨に質問するわけにはゆかない。殊に今度初めて投宿した家で、双方の馴染みが浅いだけに猶更工合が悪い。
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かういふことを考へざるを得ないやうな刺戟を唐招提寺の金堂はわたくしに与へたのであつたが、しかし最初の見学の日にわたくしはさう長くそこに留まつてゐたわけではない。その頃講堂は普請中であつて、内部を参観したのは金堂と開山堂とだけで、さほど長い時間を要しなかつた。だから夕暮れで幾分薄暗くなる頃にはわたくしたちは唐招提寺の構内を北西の方へ抜けて、垂仁天皇陵の方へ歩いてゐた。
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八王子の農園は、あれは当分あのままにしておくつもりだ。いいあんばいに、今あそこに建てている家が、おもいのほか工事がはかどっているから、住もうとおもえば普請中でも一部に住めないことはない。あの家ができあがるまえに、ここのうちを売ってしまったら、貞子は一足さきに八王子に住まわせよう。
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「お早うござい」 「お早うござい」 とあいさつする。藤吉郎とは朋輩なわけだが、この普請中は藤吉郎は奉行だ。中間らはくすぐったいような顔をしている。
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だから狭い台場の中は、目にしみるぐれえの杉の匂いでいっぱいだった。おかげで俺ァ今でも、普請中の家の前を通りがかると、あの千代ヶ岡の台場のありさまを思い出しちまうのさ。あの砦は白木の棺桶そのものだったな。
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それに本来なら、吉左衛門の家が今度の和宮様のお小休み所にあてられるところだが、それが普請中とあって、問屋分担の九太夫の家に振り向けられたというだけでも鼻息が荒い。思わず寿平次は半蔵の声を聞いて、神葬祭の一条が平田篤胤没後の諸門人から出た改革意見であることを知った。
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政長から事の次第を聞いた一休が普請中の庭に出ると、そこには義政の御用作庭師善阿弥がおり、手には1枚の絵図面を持っていた。それは初代善阿弥が義政の指示で引いた東山殿御庭の絵図面だった。
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安土の山が見えてくると、秀吉は駕籠から出てまた馬に跨がった。安土城は山頂の石垣の上に五層の天主を持つ予定であったが、最上階の天主閣はまだ普請中で、白木の柱が張りめぐらされていた。奇妙な形の天主閣を見なれてから、もう三年近くになっていた。
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ところが他の兆候が現われてきた。ひとりの大工が、ルーイイー街で、普請中の屋敷のまわりに板囲いをこしらえていた時、屋敷の中に引き裂かれた手紙の一片を見いだした。それには次の数行がまだ明らかに読まれた。
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鶴見ははじめからこの三つを名文だと思って見ていたのである。芥川竜之介も、鴎外の作中では『普請中』などをよく読めと、人に薦めている。傑作は名文を心としない。
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享保十三年の八月に、両国橋は出水で流されたことがあつた。それで普請をして仮橋が出来、本橋は引続き普請中、寛保二年にまた流されてしまつた。やつと本普請が出来て仮橋を取払つたのが延享元年五月のことである。
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