慰藉
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名詞
308 の例文
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彼はただ坂井へ客に来る安井の姿を一目見て、その姿から、安井の今日の人格を髣髴したかった。そうして、自分の想像ほど彼は堕落していないという慰藉を得たかった。彼は坂井の家の傍に立って、向に知れずに、他を窺うような便利な場所はあるまいかと考えた。
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双方で腹蔵なくすべてを打ち明け合う事ができたという点において、いまだに僕の貧しい過去を飾っている。相手の市蔵から見ても、あるいは生れて始めての慰藉ではなかったかと思う。とにかく彼が帰ったあとの僕の頭には、善い功徳を施こしたという愉快な感じが残ったのである。
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清三には自己の寂しい生活に対して非常に有力な慰藉者を得たように思われた。
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セルギウスはいつもし馴れている儀式通りに膝を衝いた。体をこの格好にしただけでも、もう慰藉になり歓喜を生ずるのである。セルギウスは俯伏せになった。
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世界は研ぎ澄まされて、甘美に揺れ動くのだろうか。静かな慰藉に似たものがかすかに訪れて来たようだった。
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ゆえに他より見れば非常な苦痛のように見えるが、自分はさらに苦痛を感じない。これはつまり仕事に変化があって、その変化が肉体と精神に慰藉を与えるからである。休むということは室の中に寝ころぶばかりをいうのではない。
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いったい、そんな犠牲者たちには、どんな慰藉の方法がとられているのか。私はついぞ聞いていない。
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女の無言でうつ向いて居る時僕も唯腕拱いて默して居た。かういふ時間の長い程自分の心に慰藉を與へられるやうな感じがするのであつた。自分も女もはじめて苦い經驗を甞めたのである。
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現実性のある文芸のみが、民衆の文芸として生き得るであろう。此人生や自然はどんな人にも感激を与え慰藉を与えまた苦痛や悲嘆を与えている。そうして瞬時も人間にその姿の全体を掴ませない。
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僕の顔さえ見ると、きっと冷かし文句を並べて、どうしても悪口の云い合いを挑まなければやまない彼女が、一人ぼっちで妙に沈んでいる姿を見たとき、僕はふと可憐な心を起した。それで席に着くや否や、優しい慰藉の言葉を口から出す気もなく自から出した。
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彼は毎日庭の掃除をしたりして、只管死病の自分に来るのを静かに待つてゐるのであつた。彼にとつては、かの物静かな松風の音は今は何よりも偉大な慰藉であつた。そして何よりも強い憧れであつた。
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もし不滅者が「汝は愛さねばならぬ」と誡しめるとき、それは「汝の愛は永遠の意をもつものである」といっているのであります。しかしそれを慰藉として言うのではなく、司命として言います。なぜなら危険が近づきつつあるのですから。
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昼間、子供たちの授業の合間に、彼の行動の唯一の規範である彼の熱狂の対象である書物をたずさえてあの岩のところへ彼は来るのだった。そこへ行けば彼は幸福と法悦と、失意の時には慰藉とを、同時に見出した。ナポレオンが女について言った言葉と、その時代に流行した小説の功罪についてのいろいろの議論が、このとき初めて、彼と同年輩の他の青年たちならばみなずっと前から抱いていたような考えを彼に抱かせた。
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これからもまだ幾度となくそれをかくかもしれない。自分には猫の事をかくのがこの上もない慰藉であり安全弁であり心の糧であるような気がする。
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ある時まではそれに疚しさを感ずるように思って多少苦しんだことはある。しかしそれは一個の自己陶酔、自己慰藉にすぎないことを知った。ただし第三階級に踏みとどまらざるをえないにしても、そこにはおのずからまた二つの態度が考えられる。
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長い砂丘の一本道は誰とも会わなかった。何か人に新しい慰藉を恵みつづけてゆくような閑寂な道だった。砂地の上に痩せた裸麦が伸びていた。
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セルギウスはいつも為馴れてゐる儀式通りに膝を衝いた。体を此格好にしたゞけでも、もう慰藉になり歓喜を生ずるのである。セルギウスは俯伏になつた。
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