従容として
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名詞
163 の例文
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つまり雨を祈るのは無駄なことなのだ。そうとわかったので、来年は従容としてこの時を待つことになるだろう。やらなくてもいいことなら、やらない、やらなければいけないことなら手短に。
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ただ偉大な思想家のみはそのことを行動人よりも深く知っている。ソクラテスが従容として死に就いたのはそのためであったであろう。誤解を受けることが思想家のつねの運命のようになっているのは、世の中には彼の思想が一つの仮説であることを理解する者が少いためである。
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そのとき俊基は、頭の中に新田義貞の顔を思い浮かべていた。「余はこれで安心して死ぬことができる」 彼は従容として刑の座に坐った。元弘二年六月のことである。
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いかにクリスチャンの家に育ち、幼い時から日曜学校に通っていたとはいえ、わずか十三歳になるかならぬかの年である。そんなにも従容として死につくことができるものだろうかと、わたしは激しく心を打たれた。だから、前川正に会って、わたしが一番先に聞きたかったのは、その妹の美喜子さんの臨終のことであった。
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このとき、万福寺の住職空円は断固としてこの命令を拒否したため、終に空円は六本松原のもとで断殺され、寺は破却された。このとき空円は静かに念仏を唱え、従容として死についたという。寺は、享保3年8月に没した良意によって中興されたが、1897年9月焼失した。
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父を始め、母や礼子が転移性ヒトガンウィルスに感染したり、亮次の自殺を目の当たりにしたりと、不幸が続いたとしても、総体では、今生もまたよしと言い切ることができる。従容として廊下を進むことができるのもそのためだ。「少し、ここで話さないか」 エリオットは口の端から、いつものようによだれを垂らしていた。
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切腹の儀式が整ったのは、江戸時代になってからだ。この時代は従容として心静かに切るのを武士の面目にはしない。最も壮烈な形で切るのを男らしいこととした。
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潔白な処女であり、かつ椎ノ葉刀馬という恋人を持つお京は、そんなことを他の男に期待するどころか、もし好色的な眼をそそがれれば、おびえ、苦しんだであろう。忠長が自分の素姓を知っていて、身辺に置いて従容としているからであった。次第に彼女にも、事件の輪郭がおぼろげながら見えて来た。
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八ヶ国連合軍が天津に入城すると、黄蓮聖母と城内の紅灯照はみな殺害された。多くの女性が従容として死につき、また少なからぬ殉死者もあった。その他の地区の紅灯照も義和団の崩壊とともに瓦解した。
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そう思うと、重右衛門は一層心が落ちついた。遺言状さえ書いておけば、いついかなる時でも従容として死ねるような気がした。やがて重右衛門は静かに立ち上がって、水主部屋に入って行った。
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昭和17年5月8日、珊瑚海海戦があり、その直後の5月12日、基地に戻ろうとしていた「松栄丸」は米海軍潜水艦「S-44」の雷撃を受けて沈没。松本艦長は、乗組員全員を脱出させた後、従容として艦と運命を共にしたという。
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もともとそんな体力など残っていなかったのだろうが、彼女は悲鳴もあげなかったし、恐怖や絶望の表情もみせなかった。従容として自分の運命を受け入れ、深い闇の中へと落ちていく。その姿には、むしろある種の儚さと美しささえ漂っていた。
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なすべきことをするというのは、気にいることをすることではありません。男の方は国家のために従容として死におもむかねばならないこともありますし、一人の女のために喜んで生命を捧げることもあるかもしれません。礼儀作法の知識のうちで、いちばん大切な規則の一つは、あなたご自身のことについては、ほとんど完全に沈黙をお守りになるということです。
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いよいよこれからあの世へ送ってやるぞと言われる。従容として受け容れられる人間がどれだけいるだろうか。死にたくないという気持ち、いや気持ちではない。
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そう思うと、裕之の気持ちは少し楽になった。従容として死を迎えられそうな気がする。一定の間隔を置いてふたつ、頭上で音がした。
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これだけの人々が甘んじて死につこうというのである。誰も、自らこの途をえらんだという自覚に沈んだ誇りを感じて従容としていた。
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友人と喫茶店で、何時間も他愛のない話をした。大学というこの奇妙なモラトリアム期間が終わったら、みな従容として会社という現実の世界に入るのを、当然としていた。私は、自分の将来をまだはっきり考えていない。
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