小さな築山
11 の例文
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小さな瀬戸物で、家とか鳥居とか、燈籠とか鶴とか蟹などになぞらえたものを、おもちゃ屋で売っていたが、それらを小さな植木鉢か木箱に土を入れた中に並べて、庭を作るのが流行っていた。鉢などうちにはなかったが、私は母にせがんでそれを買って来て、庭の小さな築山の前へ並べた。瀬戸物の中には、石碑のようなものがまじっていた。
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町名は小さな築山があったことに由来する。
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と、草萌えで青み渡っている、小さな築山の前へまで来た。その築山の裾の間から、新しい苔をまとったところの、筧が一本突き出されていたが、清らかの水が筧の口から、泉水の中へ流れ落ちて、細かい飛沫を上げていた。
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最近に王の前で処刑されたバビロンからの俘囚共の死霊の声だろうという者もあったが、それが本当でないことは誰にも判る。千に余るバビロンの俘囚はことごとく舌を抜いて殺され、その舌を集めたところ、小さな築山が出来たのは、誰知らぬ者のない事実である。舌の無い死霊に、しゃべれる訳がない。
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霧菜は、木の根に車椅子の車輪がひっかからないようにゆっくりと庭に入っていった。こんもりとした小さな築山も、コンクリートの四角い池も、庭の隅の大きな楠も、以前と少しも変わっていない。霧菜は見覚えのある庭を前にして、吐き気を覚えた。
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庭の構いの板塀は見えないで、無限に地平に抜けている目途の闇が感じられる。小さな築山と木枝の茂みや、池と庭草は、電灯の光は受けても薄板金で張ったり、針金で輪廓を取ったりした小さなセットにしか見えない。呑むことだけして吐くことを知らない闇。
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襖を閉め切ると、座敷を歩み過し椽側のところまで来て硝子障子を明け放した。闇の庭は電燭の光りに、小さな築山や池のおも影を薄肉彫刻のように浮出させ、その表を僅な霰が縦に掠めて落ちている。幸に風が無いので、寒いだけ室内の焜炉の火も、火鉢の火も穏かだった。
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鳳仙花の、草に雑って二並ばかり紅白の咲きこぼるる土塀際を斜に切って、小さな築山の裾を繞ると池がある。この汀を蔽うて棚の上に蔓り重る葡萄の葉蔭に、まだ薄々と開いたまま、花壇の鉢に朝顔の淡きが種々。
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ここでもまた歳月は、小さな岩や小さな泉水や小さな溝を、苔むす緑にそめて過ぎ去った。小さな築山には風化作用を及ぼし、これらすべての微細な人工の風物に天然さながらの風情を与えて。樹木はわたしにはわからないある日本式の方法で矮小に仕上げられ、大きく伸びることができなかったにも拘らず、すこぶる蒼古の趣を呈している。
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富岡八幡宮の北側を流れる油堀川から鉤形にひき込んだ水路に面して河岸があり、二軒とも、舟からいきなり座敷へ上れるように出来ていた。どちらも広い庭を持ち、小さな築山や植木のあしらいに趣向を凝らし、石燈籠などを巧みに配して、四季の風情を売り物にしたので、けっこう繁昌したものだったが、天保の改革の際、奢侈をとがめられて廃業した。その後、世の中が変って、松本のほうは旧に戻って華々しく再開したが、伊勢屋は潰れたままで、ただ二軒茶屋の名ばかりが残った。
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