好事家連
3 の例文
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それは片野が妻の死や阿婆ずれ女との同棲で菊の栽培をないがしろにしたためではなくて、反対に彼は人工交媒によって新種の菊花を作りだそうと熱中していたらしい模様だからである。片野がそうした野心を起したのは勿論金儲けのためで、見事な新花によって町の好事家連をあっと云わせ評判の好い彼の菊苗の値をいよいよ高くしようと企んだからにほかならなかった。交媒によってえられた新種の菊の実生の第一年は失敗した。
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そんな老人の分際で若者を真似て夜這いなどに忍びこむから罰があたったのだと一般から笑殺されたが、片野のつもりははたしてどんなものであったろうか。こうした巷説にもかかわらず瀬谷が展覧会へ出品した片野の菊は、稀有の名花として好事家連を驚倒させた。その評判を聞いて斯道の専門家達がはるばる都から観に来たくらいである。
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彼が会場へ出品する二三鉢は、ただならぬ気品と生彩とをはなち群花を圧してしまうのである。よろずに物惜みする片野は菊の苗にかけては殊にひどく、その方の好事家連とは随分高値で取引きしているらしい。
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