四面楚歌の声
6 の例文
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こうして伊沢家が四面楚歌の声のなかにたたされているある日、金田一耕助をその住居にたずねてきたものがある。金田一耕助は松月という友人の二号が経営している大森の割烹旅館の離れに居候しているのだが、その離れの一室の茶卓をへだてて、いま金田一耕助がむかいあっているのは、早苗の婚約者雄島隆介である。
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失敗もその通り、世の中で何某が大いに失敗したと四面楚歌の声が聞こえても、本の当人はどこを風が吹くかという顔をしていることがたまさかある。
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単なる利害関係か、あるいは、習慣のようなものか?時によると、この父は、四面楚歌の声につゝまれる。それにも拘わらず、時によると、かれは、「一番大事なひと」としての成光を保つているのである。
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最近に制作劇場主ルュニェ・ポオを相手取り、元同劇場専属俳優にして劇作家なるジャン・サルマンが、自作の上演権取戻しに関する争議を捲き起し、一時劇壇の注目を惹いた。時節柄、ポオは四面楚歌の声を受けて、たうとう譲歩したやうだが、これも、劇作家協会に加入してゐなかつたサルマンが、ポオの搾取に遇つてゐたわけである。それは表面の問題で、実際、二十を越えたばかりのサルマンが、自作を上演して貰へると知つたら、どんな契約にでもサインしたに違ひない。
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ユダヤ人共同体からは異端者として排撃され、かつての友人からは名指しで「無知蒙昧の輩」と罵倒されても、そのひとつひとつにつねに反撃して活発な言論活動をつづけたウリエル・ダ・コスタにも、シナゴーグから第二回目の破門を言いわたされた時、不意に失墜の時が訪れる。その後のダ・コスタは、新たに論争を挑む気力ももはやなく、四面楚歌の声を聞きながら、孤独で貧しい生活との戦いを七年間もつづける。そして、破門を解いてもらうために、彼はついにシナゴーグ共同体に屈服し、大きな辱めを伴う奇妙な儀礼を受ける決心をした。
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