四斗樽
139 の例文
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油断があったので、浮いた川島の身体が、狭い路にまではみ出している漬物屋に横倒しとなった。その拍子に彼の身体は蓋をあけている沢庵の四斗樽の中にはまりこんだ。黄色い汁が川島の身体にかかるのを見てから、藤兵衛は一散に逃げた。
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平気で彼らはタン、ツバ、ハナなどを高貴薬、海人草のなかへとばした。そしてそれもいっしょくたにして四斗樽へ入れ、〝第二工場〟へ送った。倉庫のなかは寒くて冷たいので彼らはたえまなく咳きこんだ。
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五つに切った女房の死体をね、四斗樽の中へ入れて、冷していたのですよ。
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三十歳を越した年齢になって思い返してみると、父はかなり荒い酒飲みだったことを知った。親しい者を十人近く連れて飲み歩いたり、四斗樽を据えて酒宴をひらく。待合遊びをして外泊することも多いようだった。
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見物の男衆にもサーダーはそのつど「シェー、シェー」と言って酒を飲ませてやっているので、大変な物入りだろう。あまりやらない私でさえ一升は飲んだから、四斗樽一本では足りなかったのではないかと思う。食事はご飯とヤクの乾肉入りの辛いカレーだった。
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兵部は珍しく松坂町の屋敷へ来て、あるじの方へは別段の挨拶もせず、付人達のいるお長屋の方へふらりと入った。すぐ後から、酒屋の亭主が四斗樽を車からおろして運び入れて来た。「この長屋だ」 兵部が亭主にこういったのを聞いて、小林平七が顔を出してのぞいた。
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吹き降りの大嵐の中を、こっちの同勢が、近づいて行くと、ポオン、ポオン、音がする。もう射って来たかと思うたら、四斗樽の鏡を抜きよったんじゃ。
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横穴壕の支柱に使う松材を肩にかついで峰から谷へ、谷から峰へと、一日に何往復と知れず歩くのである。四斗樽に高粱飯をもらい、ドラム罐を寺の庭にすえつけて風呂をたてた。私たちは豆粕や芋しか食べないのに、夕方になって寺の庭に裸になって並ぶとミルクくさい匂いが発散するのは不思議だった。
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僕のところのお勝手は、手ぜまなものだから、四斗樽を玄関へ据えつけた。昨夜おそく仕事から帰ってきて、僕が茶の間の餉台の前へ胡座をかいていると、女房が片口を持って玄関の方へ出て行った。
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稍淡い影ではありましたが、モーニングの上に、確かに首らしいものが出ています。その頭がまた四斗樽のように大きいのです。モーニングの袖からも手らしいものが出ていますが、それが不釣合にも野球のミットのような大きさです。
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おまけにこの太鼓たるや、気まりの悪いくらい真赤な塗胴で、天女の舞う図の金蒔絵がしてあって、陽を受けて燦然と輝き、てれくさくって思わず顔をそむけたいくらい。しかも大きさは四斗樽ほどあって、棒を通して二人でかついでも、なかなか重い。女房はじめは我慢して神妙らしく担いでいても、町はずれに出て、杉林にさしかかる頃からは、あたりに人ひとりいないし、そろそろ愚痴が出て来る。
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酒は白鹿の四斗樽がまだ何んぼも手え付けへんよつて、何んぼ何んでも飮み切れまい。
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私はその麦湯が好きだった。私の家はそれほど大人数というわけでもなかったが、四斗樽を糠味噌桶に使っていた。私は母が糠味噌をかきまわしているそばにいて、母がその中から、糠にまみれた茄子や胡瓜や大根を掴み出すのが面白くて、よく見たものだ。
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此處には四斗樽ほどの大きな圓い金屬製の煖爐が入れてあつた。その側に破れ古びた洋服を着て老人は煙管をとつてゐた。
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ふらりと農家に立ち寄っては、米麦の値段や野菜の出来具合を聞いたり、夜の海岸へ出かけて地引網の見物をし、イカ釣り船の漁夫に話しかけたりしたという。地元の祭りの時には、四斗樽の鏡を抜いて酒を振舞い、地域との融和を心がけていたという。伊藤の死後は梅子夫人が居住したが、1921年に養子の伊藤博邦により朝鮮の李王家に譲渡されて別邸となった。
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その像は、下げ髪に十二単ではなく、小町が実在した平安初期の時代考証にのっとり、意外にも、ロングドレスふうな薄地の襲裳で身をつつんでいた。お堂の入口に眼をうつすと、小町酒造の献納した四斗樽が数個つまれてある。
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總代等はそれでも羽織袴の姿であるが一人でも滿足に袴の紐を結んだのはない。更に其の後から鏡を拔いた四斗樽を馬の荷繩に括つて太い棒で擔いで跟いた。
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脚がきかないので又八はどうにもならなかった。自分の顔が見るまに四斗樽のように腫れたかと思う。
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それが人さえ出せば町方から、いつでも菰かぶりが取寄せられるようになって、始めて今日のような酒宴が、随時に開かれることにもなったのである。酒の普及がこの四斗樽というものの発明によって、たちまち容易になったことは争われない。しかもその桶屋の業、すなわち竹をたがにして大きな桶や樽を結ぶ技術は、近世に入るまでは都会でも知られていなかった。
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四斗樽ほどの焼石が幾千万となく流星のように吹き上がり、夕立のように降る。
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ですからおつまみ用に毎年お漬けものは四斗樽に十本漬けますわ。
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それは沢庵であった。車輛の一つに四斗樽がぎっしりと積まれていて、それが破壊されて内部から沢庵が線路上にも散乱していた。私同様、線路づたいに歩いてきた人たちがたちまちそれにむらがってつかみ、リュックサックの中に押し込む。
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私をきたえあげた自分に彼女は眼を細めて満足をおぼえているようであった。仕事のあいまあいまに仕事場のすみの四斗樽に腰をおろして私が本を読むのにふけっていても彼女は何も不平をいわなくなった。蚤のような活字がギッシリつまっている頁を通りがかりに覗きこんで、彼女は楽しげに、私ら頭痛なるワとつぶやいた。
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そこへ、近所の酒問屋から番頭が注文取りにきた。菰冠りの、にせ正宗四斗樽一本を、金四十円で入れましょうというのだ。正宗と名がついていれば、にせでもなんでもよろしい。
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征服慾を駆り立てられるのであった。四斗樽のように腫れた脚をかかえて寝ていると、なんとなく気に喰わない気がしてならない山の傲岸さである。衆山を抜いて、白雲のうえに、超然としている鷲嶺の頭の尖を見ていると、武蔵は、柳生石舟斎のすがたが思い出されてならない。
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全身灰色をしておった。尾の細い割に、鬣に渦を捲いた深い頭は四斗樽ほどもあった。前足を揃えて、波を打つ群集の中に眠っていた。
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此処には四斗樽ほどの大きな円い金属製の暖炉が入れてあった。その側に破れ古びた洋服を着て老人は煙管をとっていた。
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この時期のせいの思いつきで、いまも伝説的に語り伝えられているのは、冷やし飴の売り方である。それまでの冷やし飴は、瓶ごと四斗樽に放り込み、氷の塊りを入れて冷やしていた。だが氷の触れ具合で冷えたり冷えなかったりする。
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