唯一の慰藉
7 の例文
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君とは久しく往来も絶えて了ったが、その手紙を読んで、何故に君が今の住居の不便をも忍ぶか、ということを知った。君は子供の墓地に近く住むことを唯一の慰藉としている。不思議にも、私の足は娘達の墓の方へ向かなく成った。
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アッラーにかけてな言いそ、わが心を慰めよと。わが唯一の慰藉は、汝をわが腕の中に感ずることにこそあれ。
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臨終の床にのぞんで心に慰まむものがあるか、どうか?死に臨んでは少しもにげ隠れたり等した覚えはない、むしろ堂々と堪うべきことを堪えしのんだのだと言うことが唯一の慰藉ではありませぬか。人間がいかなる仕事を果しえたか或いは果しえなかったか、ということは人間の力の及ぶ範囲にはない事であります。
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いわゆる東京の俳友の消息なるものが私にとってそれほど興味あることでなかったがために、それらの通信も怠り勝ちではなかったろうかとも思う。後年は文壇の権威をもって自任した漱石氏も、その頃は僅かに東京俳友の消息を聞いて、それを唯一の慰藉とする程度にあったのだと思うと面白い。なおこの時の漱石氏の寓居は熊本合羽町二百三十七番地であった。
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自分は帰りの便船を待つべき三日間をば尚少し遠く尚少し離れた処に送りたいと思ひ、ホテルの案内書をたよりにして島原の小浜と云ふ海岸に赴いたのである。こゝは人も知る通り、上海やマニラや浦塩あたりから、日光箱根などへ行く事の出来ない種類の西洋人が、日本の風景を唯一の慰藉として遊びに来る土地である。自分は其れ等の外客と小蒸汽に乗つて島原の入海を越え海岸の小さな木造りのホテルに宿を取つた。
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須磨の保養院で初めて居士から話を聞いた時に、截然として謝絶することが出来たらその上越すことはなかったのであるが、その時それが出来なかった以上、婆の茶店で率直に断ったという事は双方に取って幸福なことであったとも考えられるのである。のみならず、後継者を作るというようなことは、生い先きが短いと覚悟した居士に在っては、それが唯一の慰藉ともなるのであったろうが、冷かにこれを言えば、そういう事はやや幼稚な考であって、居士の後継者は決して一小虚子を以てこれに満足すべきではなくして、広くこれを天下に求むべきであったのである。一番居士の親近者であるという事が、決して後継者としての唯一の資格ではなかったのである。
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