一隅
全て
名詞
2,552 の例文
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今はだいぶひらけてしまったすが、そのころの宮城野原はただもう広くて、小高い丘があればその向うに野生の萩の密生する平地があり、さらにその先には小さな祠をまつった小さな林があるというようなところで、人もあまり訪れない静かな野原だった。二人はその一隅に、愛をかわすには願ってもないような場所を見つけた。二十米もあるような高い、そして太い銀杏の樹の下に小さな窪地があった。
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羅旋は、先に巨鹿関に着いているはずなのに、迎えにも出てこなかった。どうしたのだと心配して捜してみると、塞の一隅で眠り呆けていたのだ。
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食糧市場の一隅にテーブルを設けただけの場所であるのが桜子を拒ませた。ぼくはカズに婉曲に場所変えを頼む。
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今の三菱村がまだ原であった時分、その原の一隅に今の東京駅が出来た。その頃の東京駅はだだ広くって、旅客があちらに一人こちらに一人、駅員も尋ね廻らねば見当たらぬという状態であった。
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辰巳屋の勘定部屋は三方が壁で、出入り口は店と奥を結ぶ廊下に面している。吉兵衛は出入りの大工に頼んでその廊下の一隅に錠前付きの扉を作らせた。鍵がないとそこは開かない。
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そこは家具などのちゃんと整った気持よい部屋で、テーブルのうえに二本、マントルピースのうえに二本、ろうそくがともしてあった。一隅のつくえにむかって屈みこむようにしている少女らしい姿がみえた。私たちのはいったとき、彼女は顔をそむけてしまったから、赤い服を着て、白のながい手袋をはめていることだけしかわからなかったが、やがて急にこっちを振りむいたのを見て、私は思わず驚きと恐怖の叫びをあげた。
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行一が大学へ残るべきか、それとも就職すべきか迷っていたとき、彼に研究を続けてゆく願いと、生活の保証と、その二つが不充分ながら叶えられる位置を与えてくれたのは、彼の師事していた教授であった。その教授は自分の主裁している研究所の一隅に彼のための椅子を設けてくれた。そして彼は地味な研究の生活に入った。
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また磁器でつくった長さすくなくとも三フィートの植木鉢の、側面に藍色で横に松を描いた物に、倭生の松樹を植えたのは目立って見えた。この会の一隅には、私には全く目新しい、不思議な物が展観してあった。大きな竹の枠に、二枚の非常に細い網かモスリンか、とにかく向うが透いて見える一種の布が張ってあった。
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フレデリックは米国東部のメリーランド州の一隅にある小さな町である。ニューヨークの西南西四百キロ弱の、日本にはまことに馴染みのうすい田舎町に、ジョン・ローレルの保存する個人的資料に関心を寄せた者がいた。
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軍曹だって片方の眼のまわりに大きなしみをつけていたのだが、おれはべつにそのことを言ったりはしなかった。副官室のちょうどうしろにあたる営庭の一隅に、大きな柱が立てられた。命令伝達の時間がくると、毎日の内務班日程とか、ほかのこまごました命令にかわって、ヘンドリックの軍法会議の件が伝達された。
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庭の一隅に、小さな森と静かに流れる小川のある、人里離れた家に住む。選ばれた書物が並んだ書斎、行ないすました良識に富んだ少数の友人たち、清潔だが、質素で、ほどほどの食卓がほしい。
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頭の中でそれを計算している間に、空地の一隅で犬が吠えるのが聞こえた。その犬は、そばを走り過ぎた男にむかって吠えているのかもしれない。
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食後のスピーチも終わると両人種は会場を自由に歩き回ってあちこちで歓談の花を喋かせた。ハントはグラスを片手に会場の一隅で三人のガニメアンと話していた。
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神秘の世界はおとなにとっても子供にとっても同じことです。幾月ものあいだ彼女はこの墓地の一隅とこの少年のことを夢みました。もう一度この少年に会いたいばかりに、両親の金を盗みました。
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日本人の同性愛者のグループは言葉少なに彼を取り巻いた。そして、取材者である私は、広い会場の一隅から、彼らの姿を眺めていた。アクトアップの動向について、また、国際エイズ会議における同性愛者の位置づけについて、私は、彼らを通して情報と知識の収集を行なってきた。
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然し、わたくし自身が實はまだ童學の一書生にすぎないのだ。文壇の一隅から乳臭の作品を書いて作家とか呼ばれてゐる人間である。しかも狹隘な書齋にのみ多く日を消してゐる身なのに、どうして現下の烈しい時勢の潮流と、その中にある青年層へ向つて、かくあれといふ「道」などを示す資格があらうか。
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その晩ロンドンへ帰るときに、われわれは寝台車の一隅に席をしめた。しかしその旅は私と同様、大佐にとっても短い旅だったろうと思う。
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