せめてもの慰藉
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太十は泣き相になる。それでもお石の噂をされることがせめてもの慰藉である。みんなに揶揄われる度に切ない情がこみあげて来てそうして又胸がせいせいとした。
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そして、月に二三十枚の原稿を野村の所へ届けて、渡される僅かな金で満足していた。大変立派な訳だと向うの人が喜んでいた、そういう野村の言葉だけがせめてもの慰藉だった。斯くて、彼の二つの矜りも、単なる矜りの外には出なかった。
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昔、君と机を並べてワシントン・アービングの『スケッチブック』を読んだ時、他の心の疵や、苦みはこれを忘れ、これを治せんことを欲するが、独り死別という心の疵は人目をさけてもこれを温め、これを抱かんことを欲するというような語があった、今まことにこの語が思い合されるのである。折にふれ物に感じて思い出すのが、せめてもの慰藉である、死者に対しての心づくしである。この悲は苦痛といえば誠に苦痛であろう、しかし親はこの苦痛の去ることを欲せぬのである。
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幼ない道綱はいつの間にか數へ年の三つになつて、此頃は片語雜りの言葉を可愛い口から言ふやうになつた。窕子に取つてはそれがせめてもの慰藉であつた。
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今日も臥床、読書をせめてもの慰藉として。夜、樹明君来訪、停留所まで送る、酒をよばれた、いそがしい酒であつたけれどうれしい顔だつた。
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