魚河岸ものがたり
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故・石川達三氏は、二十も三十も考えて、編集者に選ばせたというが「結婚の生態」なんてうまいなと思う。「魚河岸ものがたり」という題は、梅沢さんとの対話の中から生れた。私がいろいろなタイトルを口走るのを、彼はじっと聞いていたが、こちらもいやになってしまって「今更、魚河岸物語でもないでしょうし」と言ったところ、パッと顔を上げた梅沢さんは、「それ、行けそうですよ、ううん、第一候補だなあ」と言い、そして、きまった。
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「魚河岸ものがたり」は、昭和六十年九月〝新潮書下ろし文芸作品〟として刊行され、その後、幸運にも第九十四回直木賞を受けました。それが今、新潮文庫の一冊に加わり、そのあとがきを求められましたが、受賞直後「直木賞ものがたり」と題して、日記をもとに作品の執筆経緯を一文にまとめましたので、その〝抄文〟をもってあとがきにかえます。
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