顔色は冴え
38 の用例
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私は、流しの棚のコップに手を伸ばしながら、歯磨の飛沫がいくつもの白い点になっている小さな掛鏡を覗いた。
二日酔い気味のせいで顔色は冴えなかったが、平常通りの顔をしていた。
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森禮子『モッキングバードのいる町』より引用
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が、その言葉と違って、又左衛門の顔色は冴えてはいなかった。
瞳が重くすわっていた。
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松本清張『かげろう絵図(上)』より引用
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ドルイット氏はうなずき「昨日、ロンドンに参りました」と云う。
顔色は冴えず、ジョンが兄の許にも行かなかったことを知る。
「キングズ・ベンチ・ウォークに行き、ブラックヒースの学校にも参りました」と彼は僕が事務所のドアに差し入れたメモの山をポケットからつかみだした。
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服部まゆみ『一八八八 切り裂きジャック』より引用
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「傷は重いのか」スパーホークは若い見習い騎士に尋ねた。
「どうってことありませんよ」ベリットはそう答えたが、顔色は冴えなかった。
「パンディオン騎士団ではまずまっ先に、自分の傷のことは軽く言えと教えるのですか」セフレーニアが皮肉っぽく尋ねた。
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エディングス『エレニア記3 四つの騎士団』より引用
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宗方は面長の品のいい顔に微笑をうかべた。
久しく寝たり起きたりしているせいで、顔色は冴えなかった。
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藤沢周平『隠し剣秋風抄』より引用
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ぼくはウーロン茶割りで咽を湿らせてから、水穂の焼き鳥を平らげる。
顔色は冴えないが、水穂の口調に疲労感はなく、ぼくは本心から安堵する。
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樋口有介『魔女』より引用
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大治郎が見ても、父の顔色は冴えていたし、元気もよい。
池波正太郎『剣客商売 04 天魔』より引用
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大須は東京でいえば浅草にあたる町のようだった。
外の光の中でも、やはり、彼女の顔色は冴えなかった。
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駒田信二『一条さゆりの性』より引用
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桑木は胃腸のほうには前から自信があったが、それも疲れのためと思っていた。
胃薬を飲んでみたり、強壮剤のようなものを買ったりしたが少しも効果がなく、顔色は冴えないままだった。
食べ物の好みも、あまり食欲がないのに変ってきた。
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松本清張『虚線の下絵』より引用
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出張から帰って一週間も経つのに柿崎の顔色は冴えなかった。
熱もいっこうにひかない。
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高杉良『生命燃ゆ』より引用
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美夜は晴着として大切にしていた黒いビロウドのワンピースにウールの赤いコートを着、私のお下がりの兎の毛のついたマフラーを首に巻いて、いそいそと出て行った。
だが、送られて帰宅した彼女の顔色は冴えなかった。
少しお酒を飲みすぎて、帰りの車に酔ったみたい、と美夜は言い、私と夫が寛いでいた居間に入ろうともせず、すぐに部屋に引きこもってしまった。
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小池真理子『狂王の庭』より引用
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外に出ると、夜は一層、深くなっていた。
タクシーを拾って、浅草へ向かったが、亀井の顔色は冴えなかった。
西山の言葉が、鋭い刺となって、突き刺さってくるからだった。
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西村京太郎『終着駅殺人事件』より引用
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そういたわってくれる彼の顔色は冴えなかった。
つい一カ月前札幌に訪ねてくれた時とはちがって、どこか元気がなかった。
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三浦綾子『塩狩峠 道ありき』より引用
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ローズは自習室にいて、両足を炉棚に乗せ、坐れるものにはなんでもといったふうにして坐っている何人かの仲間を相手に、のべつ幕なしにしゃべりまくっていた。
彼は大よろこびしてフィリップと握手をしたが、フィリップの顔色は冴えなかった。
ローズが約束をすっかり忘れているのが、はっきりわかったからだった。
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モーム/北川悌二訳『人間の絆(上)』より引用
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主水正の顔色は冴えない。
昨夜と同じあの袴姿である。
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五味康祐『いろ暦四十八手』より引用
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上りの電車はガラガラになる時刻であった。
我孫子のほうでの調査が意外に長びいて、そんな時間になってしまったのだが、それにしても北尾の顔色は冴えない。
進行方向にむかって右の端の席に斜めに坐り、窓の外をじっと眺めている。
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半村良『下町探偵局PART2』より引用
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本田はさすがにげっそりしている。
街灯の光で見ても顔色は冴えない。
ふたりは首根っこを掴まれ、善行の前に引き出された。
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榊涼介『ガンパレード・マーチ 05 5121小隊 episode ONE』より引用
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白いものが混じる髪の毛は長くたれ、顔色は冴えず、やつれきった風貌である。
石井代蔵『千代の富士一代』より引用
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と言いながらも、茜の顔色は冴えなかった。
こいつ、姉ちゃんのこと心配している。
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榊涼介『ガンパレード・マーチ 05 5121小隊 episode ONE』より引用
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しかし顔色は冴えなかった。
福永武彦『草の花』より引用