遮るもの
355 の例文
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おどろいたことに、正面に見たこともない青々とした森が見えたが、これがよく考えてみると、上野の森にちがいなかった。なにしろこの辺は目を遮るものとてなんにもないのであった。
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手抜き工事で造られた建物全体が今にも丸ごと崩壊しそうな恐怖感を与える。大学自体が山の上にあるために、前方には遮るものもなく、大阪湾が遠望できた。ふだんはけむったようにしか見えない海は、ぼんやりと白く光っていた。
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今日もいい天気だった。東京だとすぐ横に視界を遮るものがあって、青空が頭上だけにある気分だが、ここではそんなことがない。地べたに立って横を見ても、ずーっと青空は広がっている。
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ほどなく、館の正面鍛錬場でのどかは見つかった。遮るものがほとんどない滑らかな鍛錬場の床が月の光を受けて昼とは違った印象を持たせる。のどかは物陰に隠れて、ある一点に視線を注いでいた。
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電車に乗っても、出羽ヶ嶽の釣行姿は目立つのだ。立っても座っても、人々の視線を遮るものがない。出羽ヶ嶽は顔の持っていき場がないから、胸骨が彎曲してつくる内懐ろへ、菱形長大な顔を埋めてしまうのである。
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その板張の一部分に、ポッカリと二尺四方程の穴があいているのだ。穴の上には何の目を遮るものもなく、遥かの彼方に、キラキラと星が光っている。アア、何ということだ。
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小高い丘を越えたところで、クラスは道の脇に鎮座している平べったい岩に腰掛けた。辺りには遮るものがなにもなく、大して高い丘でもないのにかなり遠くまで見渡せる。どこまで行っても似たような風景が広がり、海に続く道だと聞いていたのに川すら見える気配がない。
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今回も、手ごろな場所を探すのに時間を取られた。平原ならば簡単にこれだけのスペースを確保できるが、遮るもののない場所での待機は不安だ。アヒルたちの身体にも、今はカモフラージュ用のネットが被されている。
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冬だったんですけど、視野がすごく広くて遮るものが何もない。あるものは、枯れ果てた大地と空だけ。
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何物も遮るもののない時には、平静に流れて波をも立てない。然し一度、その流れが堰止められ、その勢いが蓄積される時には、如何なる堤防をも乗り越し破壊する。
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そのたびに雪の庇が深くなった。その上を一気に辷りおりて、遮るものもないイシカリの原野に暴れて行く。原野にある高みの雪は削り取られて低みに運ばれる。
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梢がたわみ、元にもどり、また、たわむ。この木の他に視界を遮るものはない。空と海だけだった。
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孝史は大通りに歩み出た。ここから赤坂見附の交差点まで、視界を遮るものは何もない。そして、孝史は初めて目にした。
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六十年ぶりだといふ暑熱に、苦しみ通した街は、更けてからの雷雨に、なにもかもがぐつすりと濡れて、知らずに眠つてゐる人も快げだ。叩きつける雨の勢ひは、遮るものにあたつて彈きかへされ、白い霧になつてゐる。
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彼の恣意な感情を横あいから遮るものがなかったからである。
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誰がなんと云はうとも、内外の情勢は、ただ暗鬱であつた。国民各々全力の発揮に努めながら、その力を遮るものが互のうちにあることを感じてゐた。しかし、理想を追ふものは、現実のすがたに失望してはならぬ。
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闇を溶かしたように暗かった夜明け前の海も、朝凪が終わるころには、美しい布を広げたような群青色に変わっていた。男は眩しげに目を細めて、遮るもののない水平線を見つめている。その様子を見て、船長は呵々と明るく笑った。
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山頂は二等三角点「布引谷」があり、付近の窪地に池が見られる。岩壁に隣接していて遮るものがないので、周囲の展望が良い。また、山頂南側は下ノ黒ビンガという大岩壁である。
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古くから航路の目標として親しまれていた5本のマツであったが、あるとき美保神社に参拝する当地の領主に供をしていた者が持つ長槍が、そのうち1本に引っかかった。そのため、通行の邪魔になり、また眺望を遮るものとして1本が伐採された。土地の人々はマツの運命を嘆き、せめてもの抗議として『リキヤ節』という唄の調べにのせて「関の五本松一本伐りゃ四本、あとは伐られぬ夫婦松 ショコ ショコホイノ マツホイ」と歌った。
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