違つてゐるやう
17 の例文
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私はもう一度お慶びを云つて引退つたが家へ帰つてきて考へると何となく変である。叔母さんの言葉の何処かが間違つてゐるやうに思はれてくるのである。
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その價値のあるものを社會の爲め、國家の爲めに犧牲にする處に、人生の高尚な一面があるのではないでせうか。どうも個人主義が即ち利己主義だとするのは、間違つてゐるやうですが。
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あーん、あーんと、泣声の絶え間には、ふと、彼は自分の泣声を吟味するやうに聞いてゐた。しかし、これは女を瞞すための気どつた泣き方とは違つてゐるやうであつた。空二は泣きながら得態の知れぬ滑稽感が頭を持上げさうになるので、一層泣き募つた。
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「ああ」と、空二は奇妙な声を出して唸つた。いつもの自分の声とはまるで違つてゐるやうであつた。彼は指で眼を小擦つて、もう一度あたりを改めて見廻した。
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どうも方角が全く違つてゐるやうにかれ等には感じられた。しかしかれ等は何も言はなかつた。
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ほんとにそれでいゝんだつたかなあ。どうもどこか間違つてゐるやうな氣がしてならない。
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古澤先生初め來栖氏御夫婦、満鉄の坂本岡部二氏、佐藤四郎氏と浦崎さんなどが見送つて下さるのであつた。今日よく見ると駅の建物の模様が変つたので、伊藤公遭難の跡の位置が私の大正元年に見たのと少し違つてゐるやうに思はれた。私達は人人の御厚意を謝しながら、午後一時五十五分発の汽車が動き出してからも、猶人人と哈爾賓とに別れを惜んだ。
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澄江はべつだん予期した答を心にいだいて、待ち構えてゐたわけではないのだ。けれどもまるで予期したこととあまり違つてゐるやうに思はれたほど、それはただ冷めたい厭な言葉であつた。
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私は新短歌が現に挙げてゐる成績に偏執し過ぎたかも知れない。然し新短歌様式を規範的に吟味してみて、私の考へが余り間違つてゐるやうには思はれない。新短歌のみならずすべて一呼吸詩歌が、その詩歌の中に生活を見出すものでなくて、生活の傍に生ずるものとしてだけ意義を有するものであるといふことを、左にもう少し言添へよう。
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それに別に不思議はない。然しその漱石と私との趣味を比べてみると、私も東洋人・日本人ではあるに相違ないが、いくらか違つてゐるやうである。例へば西洋で生活するにしても、私は漱石ほど日本を戀しがることはなかつた。
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が然し、こゝで考へなければならないことは、それがために、傑作『人間嫌ひ』は、飽くまでも傑作『人間嫌ひ』であることに変りはなく、天才モリエールは飽くまでも天才モリエールであることであります。此の事実から推しても、俳優の技芸は、それ自身に芸術たる要素を備へてゐるといふ考へは、間違つてゐるやうに思ひます。
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でないと上手の方がつまらないと思ふ。玄人と素人との棋力を格段に違つてゐるやうに云ふ人がある。素人の初段は、玄人の初段とは二三段違ふと云ふのである。
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いつたい彼女は何時もむつつりと黙り込んでゐる性で、何事かを深く考へ続けてゐるやうにまなざしは自分の内部へ向つてさされてゐることが多いのである。もつとも、一度び考へが定まると男のやうに猪突するので、私も今まで何度となく吃驚させられて来たものであるが、しかし今夜の彼女の態度は、なんとなく何時もと違つてゐるやうに思はれてならぬ。するとふと私の心内に秋津大助の姿が浮んで来た。
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さうです、高野の眞言とはいくらか違つてゐるやうです。
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が、自分の妻がまだ無垢なお政さんのやうな娘もゐる前でそんな、自分自身でさへ云つたことのないほどの卑しい物の云ひぶりをするのが、道學者的なここの主人の手前もあるから、如何にも不本意に思へた。で、「どうも、妻はこの頃少し氣が違つてゐるやうですから、今のやうな失禮は、どうぞ惡からず」と、渠は老人の方へ向いて、ここの主人と交際し出してから初めての詫びごとをした。「どう致しまして」と、老人も初めてつぐんでゐた口を開らき、一層まじめ腐つた顏になつた。
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組とは別々に誘拐され、何んの關りもないことは唯今まで申上げた通りで御座いますが、私が行方知れずになつて三十日も經たないうちに、助十郎殿と祝言をする氣になつたお禮殿とは、心構へが違つてゐるやうに存じます。