遅れ馳せ
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名詞
28 の例文
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しかし、池田屋を避け、禁門の変で戦闘部隊に積極的に参加しなかった小五郎を、単純に卑怯とは決めつけられないだろう。しかも、遅れ馳せではあったが、一度は乱闘の中に躍りこんでいるのである。生き残ったすべての長州人が帰国したとき、小五郎はひとり危険な京都に身をひそめようとしたのだ。
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「オヤッ」 「オヤ、これはどうだ」 「オヤオヤオヤオヤ」 安心しきっていた一行は、急に壁につきあたりでもしたかのように、立ち止りました。私も遅れ馳せに駈けつけてみましたが、鳴呼これは一体どうしたというのでしょう。山の上に、まるで噴火口でもあるかのように、ポッカリと大穴が明いているのです。
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遅れ馳せにやってきた神奈川県警のヘリも隣を飛んでいる。
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その時もし廉州先生が、遅れ馳せにでも来なかったなら、我々はさらに気まずい思いをさせられたに違いありません。しかし先生は幸いにも、煙客翁の賞讃が渋りがちになった時、快活に一座へ加わりました。
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中川瀬兵衛も、高山右近も、兵を外におき、伴れて来た質子と少数の従者と共に、境内の一隅に佇んでいるしかなかった。ただ、その間も、時を忘れて眺められていたのは、後から後からと到着して来る遅れ馳せの軍馬に見える旺んな流汗であった。
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もっとも、この僕だって、あのとき、それに類したことを、たといおぼろげなりとも、感じていさえしたら、けっしてお母さんに無遠慮に話しかけるようなことはしなかったと思うよ。きょう、家へ帰ったら、遅れ馳せながらも、お詫びを申しあげておいてくれたまえ。それにしても、僕がどうしても腑に落ちかねるのは、君の言うように、煩いの原因がすっかり明らかになっているのなら、どうしてお父さんが、お母さんを引き留めて、空気療養させてあげないのかということなのさ。
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ところへ、余杭の地から、遅れ馳せに、凌統が着いて、中途から宴に加わった。
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ほっとする間もなく、七郎は駈け付けた百戯団の団員たちと、くすぶり続ける幕の火を踏み消さなければならなかった。遅れ馳せに、何台もの消火器が集まった。瀬川の火はその消火器で消し止められたが、すでにどうすることもできない状態だということは、誰の目にもはっきりしていた。
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脚がみじかいため大馬ではまたがりにくく両脚で馬の胴を締めにくくもあり、そのために落馬したのであろう。そのころ、熱田で休止している信長の手もとには、遅れ馳せの者がつぎつぎと集まってきて、ついに千人にのぼった。
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襲封当時、忠義がまだ十九歳だったので、久光は事実上の藩主として、その独裁者的な性格を発揮したのである。薩摩が、長州を敵にまわし、維新の戦列に遅れ馳せとなったのは、この保守的な独裁者のためだといってもよい。長州が本州の最西端なら、薩摩は九州の最南端に位置している。
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かれには頭上の鷹が、八甲田の山霊か、画神の象徴のようにおもわれていたのかも知れない。その一心不乱の有様に気圧されて、大原も遅れ馳せに棟方の背後から、いずことも知れぬ鷹に向かって手を合わせた。のちに棟方は、このときの情景を『神鷹祭舞の図』という絵に描いて、鹿内仙人と大原の二人に贈った。
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琵琶弾きが三味線にかけて語つたのは、浄瑠璃であらう。説経は尚暫く、琵琶を守つてゐる間に、時代に残されて、遅れ馳せに三味線に合せたと見ればよい。此が室町末の状態であつたらう。
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遅れ馳せながら戦闘態勢を取るのがフィリップのモニターに映る。連中がトリガーを引くよりも先に、フィリップたちの一〇〇ミリが火を吹いた。
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要するにこれらの人々があつまって、演劇に関する談話会をひらくというに過ぎないのであるから、桜痴居士からは我が国の劇界現状について二、三の談話があり、西園寺侯からは仏蘭西の劇場の話があった位のことで、わたしたちは別に書記役を申付けられるような事もなくて済んだ。それから桜痴居士は自作の脚本「向井将監」の本読みをすることになったが、その頃になって歌舞伎座の仕切場に出ている甲子屋萬蔵というのが遅れ馳せに出席した。なぜこういう人までが劇談会に加入しているのか、それは私には判らなかったが、かれは歌舞伎座の座主千葉勝五郎のふところ刀で、内部ではよほど勢力のある人らしいから、そんな関係で桜痴居士が推薦したか、あるいは本人自身から進んで参会を希望したのであろうと察していた。
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ぼく自身も、それは大前提として考えることもなく、文章を書いてきた。いまこれを、遅れ馳せながら疑ってみたい。レコードと同じように、本も雑誌も売るために作られるのだから、いつまでも本質論にこだわってはいられない。
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もしかすると、彼の口元に漂っていたのも、けっして笑みごときものではなくて、少年時代の幸福感であったのかもしれない。なにを思ったのか、奇妙なことに、ハンスは、ひどく遅れ馳せに、Kがいつかラーゼマンのところに立ち寄ったときから、すでにKを識っていたことを、やっと白伏したのだった。Kは、それを聞いて、喜んだ。
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遅れ馳せながら、護衛の駆逐艦が対空砲火の火蓋を切った。