見取れ
30 の例文
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「どうかしら」 「いやそのあの」 森写歩朗はすっかりカオス状態だ。それを不満の色と見取ったクラレンスは自らの服のボタンに手をかけた。「肉体は二十五のままよ」 パラッ。
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だが、話をしていながら、彼の膝に凭れかかって、大きな眼を開いて聴いているモイラの顔を窺うようにして、微かに平常の微笑いを浮べている彼の、その微笑いの中にモイラは、彼の敬虔な話を裏切るものがあるのを見ていた。父親の眼の中に、又彼の頬の窪みの翳に、モイラはそれを見取っていた。モイラの恐怖は父親が充分に表現していた基督教というものの持つ雰囲気の中にあったのだが、そこには聖母学園のロザリンダがモイラに与えた印象が混入していた。
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キャラウェイは知人ワイトからの手紙を読み上げて、シェイを発掘見学に誘う。道中シェイは、地元民が発掘に否定的な態度をとっている様子を見取る。現場ではワイトが、学生ボランティアを率いて発掘を行っていた。
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裂けた木片は、砕けた岩石と共に別棟にも飛んできた。新城は爆発の際の火炎の明りで、自分のいる部屋のなかの様子を一と目で見取っていた。十数人の男が倒れている。
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法子は改めて、真剣な表情の公恵を見つめ返した。公恵の方でも法子の表情の変化を見取ったのかも知れない。
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また、人のからだの姿勢や動きを見事に真似し、その姿勢や動きの志向するものを自らのからだで感じ直して、指摘することができた。こうした人のからだを直に見取る力は「竹内レッスン」時に生かされた。
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私は正面の壁際に能の面が荷物の上に乘せられ、髮をふりみだした般若の面が扉の隙間から、正面に見える位置にあつた。粗惡なこしらへであるため、一さいを掌握してゐた醜さが見取られた。氣付かずに此處に置いたものであらうが、どう見ても凄みのある美しい面ではなかつた。
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Kが横眼で見取ったところでは、監督もおそらく彼の言うことに同感だったらしかった。しかしまた、全然彼の言うことに耳をかしていないようにも思えた。
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見据え、聴きとめ、嗅ぎ分けるのは標的のみ。相手もこちらの戦意を見取ったのか本腰を入れて迎撃態勢を取る。試合開始三十秒、早すぎる決着を着けるため疾走する。
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クーンズは後に彼の三番目の妻となり、その死を見取った。ガルシアは1974年にクーンズと家庭に入る。
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その、善く見ていなければ解らぬ程の僅かな動きを見取って、後ろに控えていた僧がするりと前に出た。慈行は更に首を曲げ、その僧に耳打ちをした。
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飛雄馬は大リーグボール左1号、2号、3号、右1号を取り混ぜ完全試合を達成し、シリーズMVPを獲得する。時を同じくして明子が子供を産み、一徹が伴に見取られ死亡する。翌年、飛雄馬は長嶋邸で長嶋に別れの挨拶を告げて巨人を退団し、これからも野球一筋で生きていくことを一徹の墓石に誓い、仲間が見送る中、野球留学のためにアメリカへと船で旅立って行った。
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若し一週間で通じなかったらまた改めて挿入するということにし、今のところ一週間で打ち切ることを私は言い張った。すでに私の憔悴が極端に異常であることを見取った秋成主治医は、では、そういうことにすると言って扉から出て行った。その日の夕刻、私は相子の顔を見て今日は何時もとは化粧の方法がちがっているのかといい、何時もより冴えている顔をながめた。
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佇まいは深窓のお嬢様といった風情であり、鎧甲冑の厳しい少女を想像していた志貴は、目を見開いて上から下からその姿を確認する。「そうしてると、かわいいもんだ」 己の言動に非を見取ったときにはもう遅かった。首筋に「何か」が突きつけられていた。
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それを見取って、戦場ヶ原から返還された杯を、元あった場所に、忍野が返す。
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それが果して本物であったとするなら、それこそそれは、嫉妬の感情などを持つも恥かしい彼が、自分の親友に抱いた嫉妬の感情ではなかろうか。そうして彼は僅かばかりの考えと僅かばかりの感受性とをもって、幻の表現に過ぎないこの人間生活のなかから、あらゆるものを見た目だけで確実なものであると見取ったこのことを、彼は恥かしく思いはじめた。
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このようにしてあたかも虫のごとく暗闇の中を這うようにして進んだ。しかしながら私はこのように暗中模索で砂丘の上を進み続けることは不可能であることを見取ったので、ラクダを下り、カンテラをともして砂の海の巨大な波の中間の最も容易な通路を見つけるために先頭に立った。私は手にコンパスを持ち東に向かって歩んだ。
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而も、それをちゃんと、生活からかっきり截り出して作品にしている。ほかに学問や歌に対する手柄はいろいろあるが、この一つは、よく我々の同時代人には、見取っておいてほしいものである。我々の次々の時代には、もうどういう風に、歌の考え方が変っているか訣らないからである。
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左列の中央から二番目の像がハヴィエルだと案内者は説明した。ハヴィエルの像の信用すべきものは少いと聞いてゐたので私は熱心に見たが、俯向いた横顏で個性の表はれはよく見取れなかつた。
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それが放つのが甘ったるくどこか妖艶で、嘔吐感を煽る臭いであり、恐らくは死の臭い。聖域に相応しくないものだったが、生を受け死を見取るのも教会だと思い出し、邪推しはじめた思考をストップさせる。扉に手を掛け、深呼吸を一つ。
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エノイクラに弟子入りしたゴットラムは優秀な成果を上げ、すぐに認められる。師の隙を見取ったゴットラムは、石から猟犬を解放してエノイクラにけしかける。だが、エノイクラがとっさに万物溶解液を浴びせたことで、猟犬は召喚者の元に送り返され、ゴットラムを殺す。
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「どうしたのだね、私の顔が、どうかしたのかい」 大介は胸中を見取られまいと、慌てて盃を手にし、鉄平の視線を避けた。
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そこで文献を楯に取るといふ事は、それがよく行つて、つまり物の核心をつかむ為の方便とか、技巧とかいつたものにしかならない。折角指月の指も、その指に見取られてしまつては肝心の月のわからう筈はない。私のこの解説、或は知らず識らずの間に飛んでもない独断、或は許し難い不遜を敢てしてゐるやうな事になつてゐるかも知れないが、それかといつて、私には別に何等他意はないのである。
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恵の立った位置からは、塀と植樹されたばかりでひ弱な感じのする気の先端と建物の屋根だけが見える。それでも恵は、家の外形が現れた頃からずっと工事を見守っていたので、塀を透かして建物の全部を見取ることができた。黒ずんだ灰色の石でできた壁、やはり黒ずんだ窓枠とそこに嵌った板戸。
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裕子は敏之の腕の中で向き直り、顔を上げた。そのとき、偶然だったのだが、裕子の胸元に目が行き、そこに、小さな斑紋を見取ってしまった。そこで、全てがふっ切れた思いがした。
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三歳の太郎を抱えて、リツ子の介抱に奔命した。或はその献身と奔命は、一見、通常の夫が妻を、見取ってやり得る限度を越えていたかも知れなかった。けれども私の心の置場は、不気味であった。
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おれの心中を見取ったか、オハラが嘲笑するように言った。
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山の懐に抱かれているせいか、この岩屋では良く眠れたし、出された食事も、素朴だが、どこか懐かしい味がして旨く、旅の疲れをさっぱりと癒すことができた。長年の習慣で、新しい場所に来ると、万が一の場合の攻守と逃亡の段取りを見取っておきたくなるのだが、ユナが寝ている間に岩屋を見てまわって、大体の構造を頭に入れることもできた。病んだ人というのは、自分の病について話したがるもので、岩屋の中を巡っていると、出会った人々と立ち話をすることになった。
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