薄志弱行
全て
名詞
29 の例文
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他人との接触がすべてであるが、それさえも把握し得ぬわたし。余りにも不完全な、薄志弱行な、口にも言えぬほど孤独なこのわたしは。わたしはそこに坐った。
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そうしてむしろ抽象的でした。自分は薄志弱行で到底行先の望みがないから、自殺するというだけなのです。それから今まで私に世話になった礼が、ごくあっさりとした文句でその後に付け加えてありました。
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君も自分の薄志弱行を認めて居るのだから、今度は一つ書き付けを取って置こうじゃないか。
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少なくともこれらの人を、子孫までも安居楽業せしむる土地を選定しなければならぬ。そこに念に念を入れての研究と、研究から来る変化や転向が生じても、それは薄志弱行ということにはならないでしょう。北進を捨てて南進を取るとすれば、駒井の念頭に起る最初のものは、亜米利加方面ということになるのは、当然の帰結でもあり、同時に当時の常識でもありました。
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こうやってみても絶対に禁煙するまでになるにはおよそ一年かかった。薄志弱行になりがちな彼にもなお我慢と忍耐とが、痩せた体のどこやらにその力を潜めていたのであろう。鶴見はこれも父から受けた沈黙の実践によって養われて来たものと反省してありがたく思っている。
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しからば北進策を捨てて、南進策を取るとしてみると、この船をいずれの方に向け、いずれの地点に向わしむべきか。今となって、そういうことを考えるのは薄志弱行に似て、駒井の場合、必ずしもそうではなかったのです。事をここまで運び得たにしてからが、尋常の人には及びもつかぬ堅心強行の結果というべきだが、船を航海せしむることだけが駒井の目的の全部ではない。
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私が酒をやめようやめようと努めながらもやめることが出来ないのは、必ずしも私の薄志弱行ばかりではない。
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私は劉伶をまねて自分を偽るのではない。やはり、薄志弱行のために禁酒が続けられないのだ。必の契りを破るたびに、劉伶の話を思い出し百万の味方を得た感を深うするのである。
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わたくしは決して惑溺なぞはしていません。ただ薄志弱行だと云われれば、それだけはいたし方がありません。それにはわたくしに極まった人生観が無いのが原因になっています。
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いろいろと親切なことを言ってくれましたが、町じゅうが騒いでいたあたしの裁判には彼女も非常に関心をもっていたのだけれど、その話題の本人があたしだとは少しも知らなかったそうです。こうして、例によってあたしの薄志弱行は、乞われるままに彼女の部屋に連れて行かれ、そこで不幸な物語の一くさりを話して聞かせることになりました。
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いやしくも職を官途に奉ずる男子として、あなたのような薄志弱行は実に恥ずべきことですよ。このようなことは三歳の童児も心得ていることで私から申し上げるまでもないですが、立派な才能を天から与えられながら、そしてもしこの悪癖がなければどんな高位高官にも昇れたような人間が、ただこの悪癖あるがために徒らに身を滅した実例は実に多いのですな。
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東郷平八郎さんなども学生で居られた。皆々気概があつて今の書生の薄志弱行のやうではない。
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「純粋で高貴な、きわめて道徳的な男、英雄に必要な強靱な神経をもたぬ愛すべき男が、背負うことのできぬ、それでいて抛りだすこともならぬ重荷に押しつぶされてゆく」というのが真のハムレットの姿であろうか。ハムレットは、ゲーテたちの言うような薄志弱行の徒ではない。それは、彼が劇中劇の直後に王を刺そうとしたり、母の寝室で敵のクローディアス王と間違えて一気にポローニアスを斃してしまうことで、明らかである。
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こう云う風にして、己は此れ迄何十遍となく、Kを欺いては再び臆面もなく借りに行き、例の如く議論を闘わし、例の如く期限を誓い、例の如くすっぽかす事を繰り返した。Kと云う好人物の友人がある事は、薄志弱行な己をして、際限もなく背信を重ねさせる因だった。
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しかしこんな無益な告白が何になる?人は私を薄志弱行の徒と笑ふであらう。ディレッタントとも嘲るであらう。
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そのためにこの文明の利器に親炙する好機会をみすみす取り逃がしつつ、そんなこだわりなしにおもしろそうに聞いている田舎の人たちをうらやまなければならなかった。このような「薄志弱行」はいつまでも私の生涯に付きまとって絶えず私に「損」をさせている。大道蓄音機が文化の福音を片田舎に広めた事は疑いもないが、同時にあの耳にはさむ管の端が耳の病気を伝播させはしなかったかと心配する。
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君にしたって、予め薄志弱行と云う逃げ路を作って置く程のあやふやな後悔を、何もわざわざ、金を借りようとする場合に云い出さなくてもいいじゃないか。君の告白する態度が純粋でないから、従って告白その物にも権威がなくなる訳だと思う。
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