蒼白い
全て
形容詞
1,634 の用例
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かつ感情家であった。
その蒼白い額の中にあるいはこのくらいな事を考えていたかも知れない。
あるいはそれ以上に深い事を考えていたかも知れない。
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夏目漱石『行人』より引用
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お幾は何と云ってよいのか分らずに蒼白い小さいお恵さんの面を眺めた。
宮本百合子『加護』より引用
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かつ感情家であった。
その蒼白い額の中にあるいはこのくらいなことを考えていたかもしれない。
あるいはそれ以上に深いことを考えていたかもしれない。
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夏目漱石『行人』より引用
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その細君の性癖は蒼白い脂の滲み出たような肉体にかわった。
蒼白い鬼魅悪い肉体の感じは緑青色の蛇の腹の感じといっしょになった。
彼はまた胃のぬくみを感じた。
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田中貢太郎『文妖伝』より引用
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医師は娘の身体をまた椅子の上におろした。
娘の唇はその輪郭が顔のほかの部分と区別がつきかねるほど蒼白かった。
医師はじっと、彼の動きを待ちその意味を読みとっていた老人を見た。
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アレクサンドル・デュマ/泉田武二訳『モンテ・クリスト伯(5)』より引用
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ジェラールは、哀れな顔が車の隅で、右に左に揺れているのを眺めていた。
蒼白いために車の隅を明るくさせているような顔を、下から見ていた。
閉じた眼ははっきり見えなかったが、鼻孔のかげと、血の小さな塊りが周りについている唇はよく見えた。
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コクトー/佐藤朔訳『恐るべき子供たち』より引用
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それがよく見ると、四対ある単眼の七つが、押し潰されて、そこに黒ずんだ粘液が盛り上っているのだ。
弟はそっとそれとその前にある黒眼鏡をかけた兄の蒼白い顔とを見較べた。
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十一谷義三郎『青草』より引用
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その顔にも容子にも、少しも快よさそうな所は見えなかった。
部屋の内から顔を出した細君は代助を見て、蒼白い頬をぽっと赤くした。
代助は何となく席に就き悪くなった。
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夏目漱石『それから』より引用
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黄金の黄ろい頸鎖を頸に巻き、三本の尖頭ある黄金の輪を頭に載せ、脚は鹿皮の革紐で巻いて、赤く染めた牝牛の皮で足を包んでいた。
女の顔は蝋のように蒼白く、この世のものでない恐しい美しさであった。
二人は長く彼女の眼を見ていられなかった、その眼は暗黒のように黒く、その暗黒の中にさまよう赤い火焔があった。
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松村みね子『かなしき女王』より引用
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ほんのまたたきする間のこと、振向いた千尋は、裏塀の戸が素早く閉められるのを見た。
雲の影は去り、蒼白い坂の上の空地には、猫の子一匹もいないのだった。
千尋は突進した。
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山田風太郎『自選恐怖小説集 跫音』より引用
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人々は、胃をかたくして、柄を握りしめた。
人々が、額を蒼白くして、腋の下に汗を出して、刃の音のした方を見た。
小柄な青年は、狂人のように眼を剥き出して、山内を睨んでいた。
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直木三十五『南国太平記』より引用
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寒さに傷んだ大地は陽をうけて汗をかき、溶けかかっていた。
斜めにさしてくる太陽の紅の光が、蒼白い草の上をそっと照らしている。
空中に物のはぜるようなかすかな音が感じられる。
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ツルゲーネフ/佐々木彰訳『猟人日記(下)』より引用
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したがって、農薬を流した密漁犯人の行為は昨日か一昨日か、よくわからなかった。
とにかく、これで夜釣りの温泉客が見た海の蒼白い鬼火の正体は知れた。
農薬をどのように海に流したところで、川や池と違って、それほどひろがるはずはないから、浮きあがった魚は農薬投入の直後にやられたものと思われた。
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松本清張『黒の様式』より引用
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蒼白い顔になった私を見ながら、阿仁連平は煙をこっちに吐きつづけた。
松本清張『火と汐』より引用
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其顔にも容子にも、少しも快よさゝうな所は見えなかつた。
部屋の内から顔を出した細君は代助を見て、蒼白い頬をぽつと赤くした。
代助は何となく席に就き悪くなつた。
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夏目漱石『それから』より引用
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彼女は、いまにも爆発しようという自分の感情を押えるような顔つきであった。
黒い絽の着物を着ているために、ますますその蒼白い顔が目立っていた。
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川上宗薫『赤い夜』より引用
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で四郎も走って行く。
こうして半刻も経った頃には夕陽が消え月が出て四辺は蒼白くなりました。
その時初めて老人は立止まったのでございます。
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国枝史郎『天草四郎の妖術』より引用
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玄児は言葉を切り、蒼白い顔全体を引き攣らせるようにして薄く笑った。
綾辻行人『暗黒館の殺人(上)改訂06 02 08』より引用
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この数日来のことだ。
わずか数日のことであったのに、彼はみるみる蒼白く憔悴してしまった。
それは五十三歳の彼が、この夢と同時に、おびただしい夢精を強いられるからであった。
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山田風太郎『信玄忍法帖』より引用
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清子の身体が硬くなると共に、顔の筋肉も硬くなった。
そうして両方の頬と額の色が見る見るうちに蒼白く変って行った。
その変化がありありと分って来た中頃で、自分を忘れていた津田は気がついた。
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夏目漱石『明暗』より引用