蒸す
全て
動詞
312 の用例
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その間にお徳は、更に温かい飯と、新しい松茸の料理にかかるべく焚火を加えて、その火加減をながめています。
それによって見ると、飯を焚いているのではなく蒸しているものらしい。
よく山の旅に慣れているものがするように、湿気のある土地に穴を掘って木の葉を敷き、それに米を入れてまた木の葉と土とかぶせて、上で焚火するという仕組みでやっているものらしい。
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中里介山『大菩薩峠』より引用
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昼近くで腹が空いてゐたし、その茶店へ腰をおろすことにした。
隣の卓子で中年の男が食べてゐる蒸し饅頭のやうなものを私も注文した。
通路の片側には菊の鉢が一列に並べてある。
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岸田国士『従軍五十日』より引用
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風は、熱風である。
雨季にはいるまでには、まだ間があって、腹が立つくらいに蒸していた。
これも温暖化現象のひとつではないかと思えるし、そう思ってしまうのが、現在の人びとの精神状態だった。
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富野由悠季『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ(中)』より引用
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一方、膨張剤となる重曹の入手が手軽になり、これを使って醗酵の手間を省き、日本に古くからある調理器「蒸篭」にかけて作ることができる蒸しパンは、子どものおやつや米にかわる代用食としても食されるようになる。
大正時代の米騒動の頃に玄米パンと呼ばれる玄米の蒸しパンが誕生した。
見た目は餡を抜いた饅頭のようなもので、あまり美味しいとはいえず、当時の不景気を象徴するものだった。
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女じゃねえてめえの姿だ。
その人形を抱いて共焼きに蒸され死にした弥七郎の了見がわからねえんだ。
女なら考えようもある。
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佐々木味津三『右門捕物帖』より引用
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風が吹いて葉群が一斉にざわめくと、緑の大波が覆いかぶさってくるような錯覚を覚える。
夏の熱気に蒸されて絞り出された緑の匂いが辺り一面を支配していた。
一行は奥の本殿に向かって石畳の上を進んだ。
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柴村仁『我が家のお稲荷さま第01巻』より引用
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若葉をていねいに手で摘む。
手摘みした茶葉はその日のうちに蒸した後、揉捻を行わずに乾燥させる。
もまないところが煎茶や玉露との大きな相違点である。
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作り方としては、蒸したものと焼いたものがある。
蒸したものは白い皮であるが、焼いたものは光沢のある茶色の皮である。
外見的には他の包子と似ているが、生地に酵母とベーキングパウダーの両方が使われているのが特徴である。
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しかも三日にあげず来るのだから、ボーイは私がつぶやいただけでビールとカニと殻を割るためのナット・クラッカーを持ってくる。
そしてしばらくすると、手を拭くための蒸しタオルを持ってきてくれる。
よく冷えた、ねっとりしたビールの泡がアパートを出がけにひっかけた二杯のウォツカの小さな炎を鎮め、散らしてくれる。
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開高健『ロマネ・コンティ・一九三五年 六つの短篇小説』より引用
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組合員数は16生産者となっている。
生産されている茶はさしま茶と呼ばれ、深蒸し製法が一般的となっている。
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深蒸し茶は通常、深緑色で濁って見える。
九州においては、被覆栽培されたものを深蒸し茶にするケースが多い。
また、蒸し機の回転数を極端に上げ、茶の葉を粉砕したものを深蒸し茶といって販売されている場合もある。
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海風に混じって魚を干す臭気が鼻をつき、静寂を豚の鳴き声と子供の喚声が掻きまわす。
所どころに石蒸し料理の炎が見え、焦げたコプラ油の匂いも流れてくる。
五分ほど浜をぶらつき、タバコを一本吸ってから、カヌーに腰をおろしている年寄りを見つけて、デチロは足を止めた。
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樋口有介『楽園』より引用
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午過ぎ、杜真が門を守る同輩と交代して門前に着いたとき、岩棚の下には熱気に揺らめく堯天の街が広がっていた。
これほどの高所にあっても風はなく、蒸すような暑気が立ち込めていた。
やがて頭上に雲が集まり始めた。
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小野不由美『十二国記 09 黄昏の岸 暁の天』より引用
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それには一旦里芋をよく蒸してそれから章魚と一所に味をつけて煮ます。
その時醤油を先へ入れてはいけません、塩気で締まって柔くなりませんからお砂糖ばかりで長く煮抜いて火から卸す前にお醤油を加えます。
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村井弦斎『食道楽』より引用
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楽俊の母親は息子から陽子の事情を聞きながら、手早く蒸しパンに似たお菓子を作ってくれた。
「それでな」 と楽俊は小さな手に大きな蒸しパンの塊をかかえて言う。
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小野不由美『十二国記 02 月の影 影の海(下)』より引用
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劇場からの帰りがけに、ピカデリイからバークレイ・ストリートヘ曲る角じゃった。
うっとうしい、蒸しむしするような晩でな、車の窓はみな開けておいた。
あのあたりは街灯もまばらで、うす暗い場所なんだ。
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カー/宇野利泰訳『帽子蒐集狂事件』より引用
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蒸せたか蒸せないかを知るには小楊子かあるいは外の細いものを真中へ通してみて何も附かなければよし、生々しい処が附いて来ればまた暫く蒸します。
何を蒸すのでもこういう風にして検査しなければなりません。
これだけでも既に立派な御馳走になりますが今日のは別にゼリーを添えます。
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村井弦斎『食道楽』より引用
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ともに周囲の展望はきわめて良好である。
甑とは米を蒸す木桶のことで、山の形から名付けられたと考えられる。
また、男甑にはシンボルとなる烏帽子岩があり、女甑には女陰のごとき「赤穴」があり、男女の名の根拠となっている。
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植えてから約1年間で収穫され、昭和初期以前は正月用として収穫される冬植のみであったが、その後、春植や夏植も行われるようになった。
生の状態では出荷されず一度蒸して芋の良否を判別してから出荷される。
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男学員ペンは上下の歯をバリバリ噛みあわせながら、額からはタラタラと脂汗を流していた。
国楽はだんだん激して、熱湯のように住民たちの脳底を蒸していった。
紫色に染まった長廊下のあちらこちらでは、獣のような呻り声が発生し、壁体は大砲をうったときのようにピリピリと反響した。
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海野十三『十八時の音楽浴』より引用