膨らさ
全て
動詞
18 の例文
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このとき赤ちゃんの着ている富士絹らしい白いベビー服が、ムクムクと膨れあがってきた。それはまるでベビー服の下で、ゴム風船を膨らしているような具合だった。ベビー服はピーンと突っ張って見る見るはち切れそうになった。
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人間の声でもウ行に音を出すには口を狭く突き出さねばならぬ。「吹く」という言葉も頬を膨らし口をすぼめた時に出る声から起ったものであろう。
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水で膨らされた腹が重くて、有月は避けきれなかった。尖った杖の先端が黒い宝石のような、うわばみの目を貫く。
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しかもそれでおしまいというのではなかった。私がやっと腹を膨らして人心つくかつかぬに、私の充たされない残酷な欲望はもう一度私に夜の道へ出ることを命令したのであった。私は不安な当てで名前も初耳な次の二里ばかりも離れた温泉へ歩かなければならなかった。
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と丁寧に小腰を屈めて挨拶をしたが、うっかり禁句とは心着かなかった。飯炊は面を膨らして、といいずてに伸をして、ふてくされてふいと立った。小間使はともあれ半季がわりの下働きは、上の弟子なる勝山さえを知らずして、その浴衣、その帯、その雪踏、殊に寝惚目なり、おひるに何か取ったらしい、近い辺の鳥屋の女中と間違えたのである。
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夕闇の中に泉邸の空やすぐ近くの焔があざやかに浮出て来ると、砂原では木片を燃やして夕餉の焚き出しをするものもあつた。さつきから私のすぐ側に顔をふわふわに膨らした女が横はつてゐたが、水をくれといふ声で、私ははじめて、それが次兄の家の女中であることに気づいた。彼女は赤ん坊を抱へて台所から出かかつた時、光線に遭ひ、顔と胸と手を焼かれた。
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起るべきところ以外何事も起らぬであろうからな。余はこのとおり、三つ島の老翁に会いに行くべく、あらゆるわが勇気がわが胸を膨らしておるぞ。
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それよりも茶なと貰つて腹を膨らさうぢやないか。
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それから高姫に飯を盛られ、種々の煮〆を盛られ、夫婦は十二分に腹を膨らした。されど両人の身体には些しの変化も無かつた。
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彼らは、最初の機会に、寮監をとっちめなけりゃならんと相談を決めた。つまり頬を膨らし、唇で山蜂の飛ぶ音を真似、かくて不満の意を表わすという次第だ。そのうちに、きっとやらずにはいないだろう。
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田舎の家へ着いて見ると、おもんの楽さは一層増した。軟かな春の空気は、ぐんぐん草の芽を育てると一緒に、彼女の心まで膨らすように感じられた。手脚には嘗て知らなかった愉しい活力が漲り、瞳は輝き、天は彼女の上で新しくなったようであった。
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するとすぐに鳥は、小さな叫び声をあげ、白い毛を膨らしながら、明らかに悦んで、食べはじめました。
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これは仏経に多頭竜王と訳したもので、梵天の孫迦葉波の子という。日本はこの頃ようやく輸入されたようだが、セイロン、ビルマ等、小乗仏教国に釈迦像の後に帽蛇が喉を膨らして立ったのが極めて多い。
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親方と警官は腮を撫でた。手錠をかけられた男は恐ろしく面を膨らした。
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余程気の練れた者でなければ、如彼は行かぬ。これがお竹ででも有ろうものなら、直ぐ見たくでもない面を膨らして、沸々口小言を言う所だ。
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そして若い娘たちがその仕事を終り、大理石が銀のようになると、床に実に立派な織物を敷き詰めましたが、それらは私の店をそっくり売っても、そのなかで一番豪奢でないものを買うに必要な額にも足りないほど、立派な織物でした。そしてその織物の上に、麝香をつけた仔山羊の毛で作った絨緞と、駝鳥の毛で膨らした座褥をいくつも置きました。それが済むと、娘たちは五十枚の金襴の座蒲団を持ってきて、それを中央の絨緞のまわりにきちんと並べ、次に引き取りました。
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幼い時から、あらゆる人生の惨苦と戦って来た一人の女性が、労働力の最後の残渣まで売り尽して、愈々最後に売るべからざる貞操まで売って食いつないで来たのだろう。彼女は、人を生かすために、人を殺さねば出来ない六神丸のように、又一人も残らずのプロレタリアがそうであるように、自分の胃の腑を膨らすために、腕や生殖器や神経までも噛み取ったのだ。生きるために自滅してしまったんだ。
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