胆をつぶす
29 の例文
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ぼくたちは艇をとび出して、水を渡って海岸の砂の上に馳けあがり、気のゆるみで二人とも、人事不省に陥った。ぼくたちは知らなかったが、近くにいた人々は胆をつぶしたそうな。そうでもあろう。
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そのころまでには、クラメニンはもう、まるで手のひらに丸められた粘土みたいになっていた。おまけに、車の物すごいスピードにすっかり胆をつぶしてしまっていた。曲がり角を曲がるたびに、いま死ぬかいま死ぬかと思っていたからである。
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先日は散歩の帰りに、小川で水を飲みかけて、二度もざんぶり転り落ちた。こっちは犬のことは無経験だから、溺れはしないかと胆をつぶした。二度まで落ちるというのでは、確かにバカ犬の素質がある。
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私は急いで外へ飛びだして、新鮮な空気を吸いこみ、あのような気味の悪い場所から逃げだしたことを喜んだ。洞窟の入口からつづいている狭い岩棚に出たとき、私はふと目の前の風景を見て胆をつぶした。目に映ったのは見知らぬ空と見知らぬ景色だった。
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もともと三百十二人の乗組員を乗せている二千五百トン足らずのフリゲート艦である。これにさらに二百数十人の一行が乗り込んで来るというのでアメリカ側では胆をつぶした。正式の使節は正使、副使、お目付の三人で、これに多少の随員がつくとしても二百数十人とはどういうわけかときいてみると、何しろ三人が十万石のダイミョーの格式だからという。
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その肘金の音は、彼の耳には最後の審判のラッパのようにはげしくひびいた。彼は胆をつぶして、ふるえながら爪だっていた足のかかとをおろした。こめかみに動脈が鍛冶屋の槌のようにはげしく脈打っているのがきこえ、吐息は洞穴からでる風のような音におもえた。
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あまり思いもかけない風景に、さすがの猛兵曹長も胆をつぶしたようです。山の向こうには、一体どんな風景があったでありましょうか。
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ある所では路の横の叢があまり茂っていなかったので、私は素速く飛び、そして溝に添って疾駆することによって追い越すことが出来たが、私があまり突然出現したことと、私の大きい白い日除帽とが牡牛を驚かせ、彼は踊ったり蹴ったりし始めた。御者は死ぬ程胆をつぶし、まるで山が頭上に崩れかけでもしたかの如くに飛び上った。我々がはるか先に行ってもまだ、彼が驚愕した叫び声をあげたり、苦情をいったりするのが聞えたのは、面白かった。
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そこへ、別室に上った上杉の侍たちの大乱痴気騒ぎがはじまったのである。座にいた遊女たちはむろん、甚内までが胆をつぶしてそっちへ駈けつけた。ヒョット斎らにしてみれば、蜂須賀一行に鞘当のつもりで騒ぎ出したのだが、蜂須賀のほうでは、蛙の面に水であった。
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その時、突然、柵がマッチ棒のように飛び散り、マホの巨体が部落の中へ押し込んで来た。胆をつぶしたアザール族は、身動きもできないほど茫然として立っていた。ゾールとわたしはクリートのそばへとんで行き、彼女をさっと引き起こした。
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けれども、驢馬が逆らうのを感じて、男は後ろを向いて、これを叱りつけようとしたところが、見ればそこには、獣のかわりに頭絡をはめた泥棒が、神妙な様子をして、訴えるような眼つきをしているのでございました。男は胆をつぶして、しばらくは泥棒のまえで身動きもできないくらいでした。
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二人に朝食を知らせに行ったとき、お嬢さまはすでにヘアトンを説きつけて、すぐりの茂みを広く切り開かせ、そこヘスラッシクロス屋敷から草花を移し植える計画を熱心にたてていました。わずか半時間のうちにひどく荒らしてしまったので、わたしは胆をつぶしました。黒すぐりはジョーゼフ秘蔵の木だったのに、お嬢さまはその真ん中を花壇の場所と決めてしまったのです。
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肱金が生き上って突然恐ろしい生命を授かり、すべての人に変を告げ眠った人々をさますために犬のようにほえていると、彼はほとんど思ったほどであった。彼は胆をつぶして震えながら立ち止まり、爪立っていた足の踵をおろした。動脈は両のこめかみに、鍛冶屋の槌のように激しく脈打っているのが聞こえ、胸から出る息は洞穴から出る風のような音を立ててるらしく思えた。
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おれのところへ寄ってこようとするから、おれは胆をつぶした。
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彼れは敵意をふくんだ眼で一人一人睨めつけた。函館の停車場に着くと彼はもうその建物の宏大もないのに胆をつぶしてしまった。不恰好な二階建ての板家に過ぎないのだけれども、その一本の柱にも彼れは驚くべき費用を想像した。
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信乃に軽くつかまれている手くびからの激痛に胆をつぶしたのである。
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この術は人がベンジンなどの揮発性液体燃料を口に含み、小さな火種に向かって吹き付けると、燃料は一時に燃え上がり、ちょうど口から火を吹いたように見えるのだ。火は唇の端にまで達するから、初めて見る人は大抵胆をつぶす。火に向かってベンジンを吹き掛けるとは、いかにも無謀に見える芸だが、正しい方法で演じれば、術者は火傷を負うことはない。
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