美しくも
全て
副詞
332 の用例
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全くやり切れない気がする。
やはり人間は全体として見て置く方が完全であり、美しくもあるようだ。
それだのに、私は何んだか部分品が気にかかる。
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小出楢重『めでたき風景』より引用
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日本の空を飛んでいると同じように安全で快適でのびやかな気持であった。
ただ支那大陸は地上の眺めが日本ほどに美しくもなく親しみもなかった。
しかし、地上に百万人の血は流されても、大陸の空は太古のままの秋の色であった。
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石川達三『武 漢 作 戦』より引用
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写楽は役者の個性を一瞬の表情にとらえ、それを写楽自身の印象でまとめた。
だから写楽の描いた役者はどれも決していい男でもないし美しくもない。
むしろみにくいものさえある。
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光瀬龍『歌麿さま参る』より引用
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刀身の幅が広い、頑丈な刀ばかりが並んでいた。
飾りはないし、美しくもなかったが、武器としては恰好なものであった。
市が開かれて、三日目に売り切れとなった。
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新田次郎『新田義貞(上)』より引用
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ジリアンはたんなる快感を得ただけでなく、もっと深く、もっと強い契りを結んだのだ。
どうやらわたしは、美しくも恐ろしい夫に恋をしてしまったらしい。
彼女は沈んだ心で思った。
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シモンズ『尼僧院から来た花嫁』より引用
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石棺たちが喜悦に身もだえし、ありもしない喉を鳴らしているかのようだ。
おぞましく、しかしこの世のものでもない光のうごめきは美しくもある。
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宮部みゆき『ICO 霧の城』より引用
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あれだけ派手にやったんだ。
つばさの美しくも激しい伝説は一年生にも広がっていると思う。
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沖田雅『先輩とぼく 00』より引用
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夏と秋行きかふ空の通ひ路という躬恒の歌があるが、わたしはその頃、二十代と三十代との通い路にいて、心ぼそい思いに身をふるわせていた。
鏡台の前に坐って、もともとあまり美しくもない自分の顔をぼんやりと眺めていた。
お師匠さんのうちの二階に遠縁にあたるとかいう大学生が下宿していた。
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福永武彦『忘却の河』より引用
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風景も畢竟は人間的なものだ、と私は考えた。
自然はそれのみでは美しくも醜くもない、それはただそこに在るというだけだ。
人間の眼が見るからこそ風景は風景としての意味を持ち始める。
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福永武彦『海市』より引用
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それからであれば、たぶん私もその安ぴか物を拝見して、結構な物と思えるかも知れない。
本末転倒した馬の前の荷車などは、美しくもなければ役にも立たない。
家を美しい物で飾り立てる以前に、まず壁を全部裸にし、生活を裸にする必要があるし、立派な家政、立派な生活を土台としてすえなければならない。
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ソロー/神原栄一訳『森の生活』より引用
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ほんとに小さくて、まえの船のように美しくもない荷物船でした。
わたしの親友の窓ふき屋は、本国の港まで、どこでもよいから乗せて行ってもらうように、その船の船長と話をとりきめました。
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ロフティング『ドリトル先生物語11巻 ドリトル先生と緑のカナリア』より引用
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もしそうだったら、美しくも気高い舞台が展開されたでしょうに!
それを読んで、わたしは涙を流し、感動に震え、マルゼルブといっしょに絞首台にのぼりたくさえなったでしょう。
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ユゴー/斎藤正直訳『死刑囚最後の日』より引用
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そのため、亡び行く街の最後の光芒のようなものを、私たちは見たように思う。
それは決して先輩諸氏の語られるように、美しくも哀しいものではなかった。
むしろ大変なまなましく、しかも薄汚れた遠景として記憶の底に残っている。
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五木寛之『風に吹かれて』より引用
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だから、今日わしの家に帰って貰いたい。
あんたは美しくもなったし、同時に気持も立派になったよ。
わしはあんたを連れ戻すよ。
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モーパッサン/新庄嘉章『ある女の告白』より引用
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人の姿に身をやつし、越えてはならない一線を越えてきてもなお、まだそこには矜持があった。
その最後の砦が瓦解する瞬間は、痛々しくもあり、同時に美しくもあった。
しかし、ハスキンズのその言葉に口を挟んだのは入り口に寄りかかっていたホロだ。
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支倉凍砂『狼と香辛料Ⅹ』より引用
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けんかもしたし、死ととなりあわせになったこともあった。
その郷愁は、かれが別れてきた、美しくも恐ろしい暴力の世界を美化した。
日々にかれの焦燥感は高まっていった。
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ムーア『大宇宙の魔女―ノースウェスト・スミス』より引用
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ゴーヴァンはシーソーのように上下に動く板の上に横たえられた。
その美しくも誇り高い頭が、あの恥ずべき首輪型の板の中にはめこまれた。
死刑執行人はゴーヴァンの髪をやさしくかきあげてから、バネをおした。
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ユゴー/榊原晃三訳『九十三年』より引用
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戦争中は日本軍に接収され、戦後はインドネシア人によって経営されているが、先年わたくしがジャカルタを訪問してここに泊まったときは、ひどく荒れて、かつての面影は見られなかった。
個人の住宅でも、住む人によって美しくもきたなくもなるのだ。
使節たちは、何はさておいてもまず入浴を希望した。
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大宅壮一『炎は流れる3 明治と昭和の谷間』より引用
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そんなのは、形のうえだけで、美しくも、きれいでもありません。
それと清潔とは違いますよ。
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松本清張『黒の回廊』より引用
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「源氏物語」を美しくもし、わずらわしくもさせているのは敬語である。
敬語は文中に蝶のようにおびただしく乱舞して、誰もかれも敬語まみれになっている。
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田辺聖子『源氏紙風船』より引用