細雪
全て
名詞
116 の例文
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それなのに「細雪」に於て、果してもう一度同じことが言えるかどうか。どうも僕には、作者が将棋盤の上で雪子という駒を中心にして、作者の愛著措く能わない風景や行事の間に、幾つもの駒を巧みに出し入れしてその効果をゆっくり愉しんでいるような気がする。
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谷崎潤一郎の『細雪』の仏訳者に決まったこともあったが、実現しなかった。
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この戦はそう長くは続かず、いずれどちらかが島から退く外あるまい。昨日の東京新聞に潤一郎の「細雪」は今後自粛的意味で発表中止と出ている。当世女風俗であるから、あんな傑作でも困るのであろう。
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そしてこの作品は悪く言えば古典の通俗化の試みであり、また創作というよりは一種の翻案に違いないが、その発想の点では、種彦は現代小説としての源氏物語の再現を目論んだものと言ってもよいと思う。後になって谷崎潤一郎の「細雪」を読んだ時にも、私はやはり同じような印象を受けたのである。ただ種彦の場合には、谷崎さんのように翻訳をしたあとから小説に取りかかるだけの余裕がなく、謂わば両者を兼ねた作品だったから、勢い原作に較べて、あらゆる点が卑小になるという破目に陥ったのはやむを得なかった。
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西郷従道の仲裁による三菱と共同の大合同のための最終協定案が成立、この協定書が農商務省に提出されたのが十八年二月五日。その翌日の細雪が舞う朝、三菱の幹部たち全員が湯島の岩崎邸に詰めていた。ときおり表門から、あわただしく人力車が走り出していった。
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内容は、折口が谷崎から『細雪』上巻の寄贈を受け、それに対する礼状である。そして折口が谷崎の『細雪』を読んでいたのは、昭和二十年四月のころのことであった。ということは、当時起居を共にしていた者が目撃している。
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文豪谷崎潤一郎の旧居。ここで執筆された代表作にちなんで「『細雪』の家」とも呼ばれる。庵号は夫人の名前「松子」に因む。
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戦後に発表が再開されたものの、今度はGHQによる検閲を受け、戦争肯定や連合国批判に見える箇所などの改変を余儀なくされた。それらの過程を経た『細雪』全巻の発表経緯を以下にまとめる。
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ほかの光の霊も、それにつれて赤色に変わって、第八の天はまるで夕焼のようになってしまう。その光の霊たちは、水気のように細雪となって昇天して、ダンテの視野から消えていく。ベアトリーチェはダンテに、地球を見おろしてみよ、という。
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十二月、『細雪』中巻を脱稿したが、軍当局から印刷頒布を禁止される。昭和二十年五十九歳 八月十三日、永井荷風の訪問を受け、原稿を託される。
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「細雪」のなかの或女性は、花のなかでは何が好きかと訊かれて、「それは桜やわ」と答へた。たべ物としての魚類のうちでは何が好きかと訊かれて、それは鯛であると答へた。
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桜について書かれた小説で最も美しいのは、谷崎潤一郎の「細雪」の中に出てくる平安神宮の花見の描写であろう。この作品とは別に、谷崎家で働いた女性について書かれた「台所太平記」が劇化された時、「お手伝いさん」たちが、京都を離れている作家を慰めるために、熱海の家の庭にしだれ桜を紙でこしらえる場面があった。
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実にはっと思う。それは「細雪」があまり戦争と無関係な「現代上流女性」の描写に終始しているからである。巧いと思うが、それは持って行き場のない技巧の集成のような感じで、生命が無いようにも見える。
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人類のもつ美しく立派な文学の一つでもが、何かの意味で無情な破壊力の抗議であり、人間の訴えと欲求に立っていないものがあっただろうか。世界文学の中に日本の現代文学がどういう価値をもつかということは、決して「細雪」をもっていることだけでは計られない。
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谷崎は更にこうした伝統的云い廻しのなかへ深く入りこんで行き、そうした我が国独特の古典的文体の根元ともいうべき『源氏物語』を、彼自身の言葉に置き直してみるという大業を完成します。そうして、その現代訳の仕事を通して獲得した新しい文体によって、代表作となる『細雪』を書きはじめます。この作品は、そこに描かれた現代の関西におけるブルジョワの家庭生活の情景が、戦意昂揚に何の役にも立たないという理由で、戦争中の政府によって、野蕃にも発表を禁じられたのですが、作者はそれにも屈することなく、遂に完成した偉容を、戦後に世に送り出すことになります。
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まことにもつともな指摘であつて、たしかにこれでは江戸明渡しと『細雪』とがいつしよになつたやうで具合が悪い。
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谷崎の秘書を務めた伊吹和子は、「谷崎が仕事で必要な時以外に源氏物語を読んでいる姿を見たことがないし、谷崎が最も機嫌が悪くなったのは細雪などの自身の作品が源氏物語の影響を受けているという他人の発言を聞いた時だった」といった証言を行っている。なお、生前に谷崎と交流があり、自身も『源氏物語』の現代語訳を手がけた円地文子は、周囲に対して「谷崎さんは源氏がお嫌いなのよね」と語っていたという。
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