福々しい
全て
形容詞
85 の用例
(0.00 秒)
-
それが今ではでっぷりと贅肉がついて、贅肉の分だけ人間が丸くなったようにみえる。
スペードのように尖っていた顎が今では二重になって福々しくみえた。
歳のせいか、涙もろくなって、昔の話をしては目頭を拭く。
…
今邑彩『赤いベベ着せよ…』より引用
-
その博多焼きの泥斎ならば、二十年間博多で修業したといういま江戸で折り紙つきの名工だ。
左の耳下に福々しいこぶがあるところから、人呼んでこれをこぶ泥というのよ。
…
佐々木味津三『右門捕物帖』より引用
-
台所にこもって、煮たり焼いたりしているときが佐和の一番の幸せなのだ。
そして、そういう料理人にふさわしく、福々しい顔と体つきをしていた。
…
荻原規子『RDG レッドデータガール はじめてのお使い』より引用
-
福々しい父親に似ぬ、冷たい感じすらする面長の美しい娘であった。
山田風太郎『明治断頭台 山田風太郎明治小説全集7』より引用
-
いちど、嘉七がひとり、頭をたれて宿ちかくの草むらをふらふら歩きまわって、ふと宿の玄関のほうを見たら、うす暗い玄関の階段の下の板の間に、老妻が小さくぺたんと坐ったまま、ぼんやり嘉七の姿を眺めていて、それは嘉七の貴い秘密のひとつになった。
老妻といっても、四十四、五の福々しい顔の上品におっとりしたひとであった。
主人は、養子らしかった。
…
太宰治『姥捨』より引用
-
この福山から、英文学者で希代のエッセイストだった福原麟太郎博士、作家の井伏鱒二氏が出ている。
二人とも福々しい相で、福山は名前もいいが、風土もゆたかなのであろう。
…
戸板康二『新々ちょっといい話』より引用
-
謙遜に謙遜で答えながら、こうした虚偽の社交の類が、ジョルジュは嫌いな質ではなかった。
福々しい丸顔は大きく弛み放しであり、これで気分が悪かろうはずがない。
昔から煽てに弱い男だったんだよ。
…
佐藤賢一『王妃の離婚』より引用
-
仕上げとして歯には銀箔を押し、舌や唇に朱を描き目を描くが、絵の具を溶くには男女の二諦をもってし、好みの美女、稚児の貌にするが福々しく表現せねばならぬ。
舌や口に朱を描くというのであるから、この首は口を開いている顔になるのであり、福々しくするとは笑顔ということである。
金銅仏と同じに仕上がった首であるが、仏師の彫刻と違って絵心の無い者が描いたとしたら土俗的人形の首より異様であろうが、それだけに催眠的幻覚に酔える妖しさがあるかも知れない。
…
高橋克彦『南朝迷路』より引用
-
商人は笑ったが、ふとっていて、食べものもよいので声までが福々しかった。
パール・バック/大久保康雄訳『大地(1部)』より引用
-
「俺もおかしいと思ったんだ」横が言った。
太り気味の福々しい見かけで、軍にいた頃はその見かけどおりの人格で部下をまとめていた。
兵の面倒をみるというよりは、兵が面倒をみたくなってしまうという型の将校であった。
…
佐藤大輔『皇国の守護者2 名誉なき勝利』より引用
-
右手には筆、左手には紙をもち、その膝下には歌人らしく硯をひきよせている。
なにか思念に沈んでいるかのように顔をかしげているのだが、その顔は前のものよりはずいぶんと福々しい。
彼はどうやらこの人麻呂を見せたかったらしい。
…
藤村由加『人麻呂の暗号』より引用
-
いかにも小金をためているという風に見えましたね。
そういえば、福々しい顔なんだけれど、どことなくきついところがあったな。
…
海野十三『少年探偵長』より引用
-
まるで太鼓でも入りそうな陽気な調子を、相沢は、にやりとつめたく笑って聞きながら、居ずまいをただした。
障子をあけて入って来た男は、中年の商家の隠居とも見える福々しい相をしていた。
とろんとしてなかば眠っているような目の色に、量をすごした酒の酔いが、それとすぐわかるのだった。
…
大佛次郎『赤穂浪士(上)』より引用
-
品の良い老人の直面が、白式尉に似た福々しい笑顔に変わる。
だがそこには、人ならぬものの気配が凝集していた。
…
山藍紫姫子『花夜叉』より引用
-
俊夫は、その指が太くて短いのを見て、紐の環を結び直すことにした。
が、旦那の指は、顔と同じように福々しいだけで、あまり器用ではないようだった。
太くした環を指にはめてもらうと、旦那は立ち上がって試技をはじめたが、ヨーヨーは下に降りたきり、微動だにしなかった。
…
広瀬正『マイナス・ゼロ』より引用
-
淀川教授を含むほかの面々は先ほどの衝撃がさめやらぬまま、座敷の隅でこちらへ尻を向けて頭を抱えているのに、弁天とその老人は座敷の真ん中に膝を揃えて泰然自若としている。
弁天が何か耳もとで囁くと、老人は福々しい笑みを浮かべた。
どこか高みの見物といった暢気さを漂わせているのは、ただ者でないと思わせた。
…
森見登美彦『有頂天家族』より引用
-
現在は秋田放送のラジオ番組「花ちゃんの民謡は日本一」のメインパーソナリティーを務めている。
声量豊かな民謡歌手らしい、福々しい容姿にも親しみが持たれている。
…
-
と、鴻池善右衛門のように福々しい佐渡屋の旦那は手を出した。
俊夫は、その指が太くて短いのを見て、紐の環を結び直すことにした。
…
広瀬正『マイナス・ゼロ』より引用
-
ただ当時、島尾にとって家庭はイバラの冠であったのに、庄野にとってそれは天使の光輪のごとくにかがやかしく、そのため私たちは、この二人を真ッさかさまの人間のように誤解していたともいえる。
そうでなくとも福々しい顔つきの庄野は、実際にわれわれにとってしばしば貴重な金ヅルであった。
そのころ朝日放送では「掌小説」という番組で、若い作家の書き下ろし短篇の朗読をやっており、私たちは四〇〇字詰原稿用紙で七、八枚のコントを庄野のところへ持って行きさえすれば、即座にかなりの原稿料を支払ってくれた。
…
安岡章太郎『良友・悪友』より引用
-
それは、青いガラスのようにさえた冬の空に輝いているのでありました。
仰向けになって、じっとその星を見つめていますと、それが福々しいおじいさんの顔になって見えました。
おじいさんは、頭に三角帽子をかぶっています。
…
小川未明『酔っぱらい星』より引用