眺めるような眼つき
7 の用例
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大橋は遠方を眺めるような眼つきをしていたが、上杉に瞳を戻して言った。
松本清張『空の城』より引用
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話しながらも、佐川は稀夢子を、まるで無機物を眺めるような眼つきで見続けていた。
事務的な会話しか、したくないらしかった。
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筒井康隆『『筒井康隆100円文庫全セット』』より引用
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持田は、じいっと、それを見ている。
そして、彼は、いわば、会社の裏切者ともいうべき大野を、まるで、犬か猫でも眺めるような眼つきをしているのだった。
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源氏鶏太『天上大風』より引用
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膃肭獣はきょとんと狭山の顔を眺めていたが、その意味がわかったのだとみえ、いくども首をあげさげして、お辞儀をするような真似をした。
狭山は首を振ったり、クックッと笑ったりしていたが、膃肭獣との愛情を誇示したくなったらしくいろいろな掛声をかけると、膃肭獣は遠いところを眺めるような眼つきをしながら、狭山の肩に凭れかかったり、膝のうえに這いあがったりした。
恍けた、愛らしいともいうべきしぐさであるにもかかわらず、なぜか、それが私の心をうった。
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久生十蘭『海豹島』より引用
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人生経験もゆたかな年長のひとの言うことは、筋道が立っていて、理路整然とし、Aさんのことを不倫の女とまでよんで、悪魔の化身を眺めるような眼つきで軽蔑した。
田中澄江『なぜ愛なのか 十三の報告から』より引用
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鴨居麻子とは、彼女のたった一冊の本の出版記念パーティ以来、顔を合わせていなかった。
「お久しぶり」と、陽気すぎるくらいの声で麻子はそう言い、よく男が女を眺めるような眼つきで、夏世の頭のてっぺんから爪先まで、一瞬のうちに眺める。
しかしそれは男のような柔らかいハケのひとはきといった眺め方ではなく、細くよくしなうムチのひとふりといった残酷な一瞥だった。
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森瑤子『渚のホテルにて』より引用
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何か、えらいことが始まったような気がするが何がどうえらいのか、その意味が、はっきりと頭に訴えて来ない。
卓の上に置かれた、物々しい紙挾みと嵩張った白い大きな角封筒を、珍らしい生物でも眺めるような眼つきで、眼の隅からジロジロと見物していたが、そのうちに、なんともいえない重苦しい不安と、得体の知れない憂愁の情に襲われはじめた。
紙挾みのほうには、『常松法律事務所』と固苦しい大きな活字で名を入れてあり、正金銀行の角封筒には、警察の徽章とよく似た金色の紋章が鮮やかに刷り出されてある。
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久生十蘭『キャラコさん』より引用