痒いところへ手
17 の例文
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世間には、そのような同情の涙をさんざん浴びせられ、いまさら私などが涙を注ぐ余地のないような連中もいる。ストリックランド夫人も痒いところへ手が届くほど同情心を発揮するひとだった。彼女の同情の言葉に耳をかしながら、かえってこちらが相手に恩恵でも施してやっているような気がしたものである。
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高高度飛行のため、機内は気密になっている。快適な旅行のための設備は、痒いところへ手がとどくようである。彼は美味しいご馳走を心ゆくまで賞美し、飛行機で九万フィートの上空に達し、時速八百マイルで遠い首都上空をめざして巡航している間、よごれた衣服を脱ぎ、ベッドに入った。
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ベテランのオジサンの手にかかれば、若者とのセックスにはない巨大なオルガスムスを味わえるものと彼女らは期待している。性急な若者は複雑微妙な痒いところへ手のとどきかねる場合が多い。それを物足りなく感じているギャルが、オジサンに期待をかけるのである。
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目が涙に曇って、そこに溢れ流れている噴井の水もみえなかった。他人の中に育ってきたお蔭で、誰にも痒いところへ手の達くように気を使うことに慣れている自分が、若主人の背を、昨夜も流してやったことが憶出された。そうした不用意の誘惑から来た男の誘惑を、弾返すだけの意地が、自分になかったことが悲しまれた。
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不器用なお作が拵えてくれた三度三度のゴツゴツした煮つけや、薄い汁物は、小器用なお国の手で拵えられた東京風のお菜と代って、膳の上にはうまい新香を欠かしたことがなかった。押入れを開けて見ても、台所へ出て見ても、痒いところへ手が届くように、整理が行き届いている。
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事件後まぎらされていたダメージと痛みと、事件後の混乱がようやくおさまって、真正面から向かい合わなければならなくなったのである。父親は母親のように常に至近距離にいて、痒いところへ手が届くようなキメの細かい世話をしてくれることはないが、いつも母の背後から一定の距離をおいて優しく庇護の傘をさしかけてくれていた。幼いころ、なにか事あるごとに母に呼びかけても、父に呼びかけることはなかった。
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けれども、「マリー・ロオジェ事件」を読まれた読者は、以上の点を除いては、文中に挙げられた大小すべての事項が遅かれ早かれ洩なく、分析解剖されていることに気附かれるであろう。実際一面からいえば、痒いところへ手の届くように書きこなされてあるのであって、これは到底凡手の企て及ばざるところである。最近わが国に於ても、盛んに探偵小説の創作が試みられるようになったが、「マリー・ロオジェ事件」のような本格探偵小説を書く人は極めて少ないのであって、私自身も本格探偵小説が書いて見たいと思いながら、つい、むずかしいので手を出し兼ねている。
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朝、夫が商用で家を出かければ、にこにこと愛想よくおくりだすし、帰ってくれば、いそいそと迎えに出る。友だちがくれば、痒いところへ手がとどくようにもてなすし、家のきりもりなども、よくこれほどまでに頭がまわると思われるほど、経済に切りまわした。金のかかるねだりごとなどは、めったに言いだしたことがない。
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尤も、女子が白粉をつけて居るときには、速度は少くなり、而もそれは一定の係数を乗ずればよいのであって、その係数が、「御園おしろい」と、「クラブ白粉」とではそれぞれちがうといったような微細に亘る研究でした。言う迄もなく、この種の研究は頬の上のうぶ毛の関係、脂肪の多少等にも綿密な注意を払わねばなりませんが、鯉坂君の頭脳は、いわば痒いところへ手の届くように、それ等の研究を纏め得たのであります。かくの如く、鯉坂君の選んだ研究題目は、未完成に終るものと、完成されるものとの二種類に分られましたが、いずれにしても、鯉坂君の着想は頗る奇なるものがあります。
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すべてが男女の人間関係でありながら、肉体というものが全くない。痒いところへ手が届くとは漱石の知と理のことで、人間関係のあらゆる外部の枝葉末節に実にまんべんなく思惟が行きとどいているのだが、肉体というものだけがないのである。そして、人間関係を人間関係自体に於て解決しようとせずに、自殺をしたり、宗教の門をたたいたりする。
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田山白雲の身の廻りのことは、三度の食事から、蒲団の上げ下ろしまで、痒いところへ手の届くように世話してくれる者があります。それは主として、両国橋の女軽業の一座の手のすいた者が、入代り立代りして、親方からいいつけられた通りにするものですから、不足ということはありません。
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それで取まわしがいゝ、誠に痒いところへ手の届くようにせられましたから、何うも捻りぱなしで二度を返さずにおくことが出来なくなる。
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つまりは、これ等の洋食屋は、レストランというよりは、花柳界の、色町の、延長と言ってもいいだろう。だから、こういう店には、ボーイに、古老の如きオッサンが必ずいて、痒いところへ手の届くようなサービスをして呉れる。此の旦那がいらしったら、祇園の何番へ電話を掛ければいいとか、あの姐さんが来たら、こういう酒を出せばいいとか、万事心得ていて、トントンと運んで呉れる。
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旅へ出てからも、もとよりあり余る路用があるというわけではありませんから、主従は極めてつつましやかな旅をいたしました。この間、若党の奥様に仕えることの忠実さ、道中は危ないところへ近寄らせないように、時刻もよく見計らって、宿へ着いての身の廻りからなにから、痒いところへ手の届く親切ですから、奥様としては、全く不自由な旅へ出たとは思われないくらいの重宝さでした。この下郎の、こんな忠実な働きぶりは、今にはじまったことではなく、亡き夫のいる時分から邸に於て、この通り蔭日向がなかったのですが、こうして旅へ出てみると、この親切さが全く骨身にこたえる。
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各人の性格と能力に応じて、第五系列超エネルギーは違っていた。サクネル・カルフォンは遠征軍司令官に指名され、これからは人類文明の希望を託されて征途にのぼる宇宙船の動力装置、機械器具、操縦方法などについて、痒いところへ手のとどくような懇切詳細な説明が与えられた。オスノーム人のうち、もっとも冷静沈着な人物であるタルナンには、これよりは制限された知識が授けられた。
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昔から男の悩みとするところは、男根という、この男の大切な一物が、何とも鈍感にできていることである。男根を膣に挿入して、単に進んだり退いたりの単純な摩擦にとどまらず、上下左右へと自由に動かすことができたなら、痒いところへ手が届くように、膣壁を撫で擦ることができるはずなのだけれど、それがとうてい叶わぬのは、思えば何ともじれったい。奉仕精神の旺盛な男なら誰でも、つねにそのことを嘆きとしているであろう。
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