生臭い
全て
形容詞
629 の用例
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しかし、彼らは生死をかけた戦いの非情さ、残酷さを骨身にしみて知っている。
知っているからこそ平和な時間にはその生臭さを持ち込みたくないのだ。
空しいことでもきれい事でもいい。
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茅田砂胡『デルフィニア戦記 第08巻 「風塵の群雄」』より引用
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すばらしい御馳走を食べつけていると、ちょっとぐらいの御馳走じゃ食べた気がしないのよ。
生臭料理か精進料理かわからないような味は、食べない方がましなのよ。
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駒田信二『好色の戒め 「肉蒲団」の話』より引用
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影は右手を上げておれたちを招きながら、反対方向に生臭い塊を投げた。
動物の気を引く作戦だろう。
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喬林知『今日からマ王 第14巻 「やがてマのつく歌になる!」』より引用
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それらがこすれ合うたびに、皮革の匂いが流れ出すのだ。
汗と皮の匂いがないまぜになり、ジムには獣の檻のような生臭さがある。
金子ジムの内部はそう広くはなかった。
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沢木耕太郎『一瞬の夏』より引用
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全身が濡れていて、ものすごく寒い。
寝ている地面も濡れていて、コンクリートのようだがなんとなく生臭い。
「あ」なんということだ。
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田中哲弥『大久保町は燃えているか』より引用
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光秀は、信長公の代りに惟任の花押を書き記した。
しかし思いとは別に、戦場では血生臭い風がすでに吹きはじめていた。
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茶屋二郎『遠く永い夢(上)-本能寺 信長謀殺の真実-』より引用
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両手で頭を抱えて目を閉じたそのとき、暖かく生臭い息を首筋に感じた。
コヨーテが戻ってきた。
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篠田節子『レクイエム』より引用
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私の好きなテーマは、たいていが日常的で俗っぽく、井戸端会議で語られるような話である。
そんな話を生臭くなく書くためには、舞台設定は大きなポイントになった。
正直に告白すると、私はまだ一度もアメリカに行ったことがない。
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小池真理子『第三水曜の情事』より引用
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鶏がとうもろこしやこぼれた米や地虫をついばんでいた頃のほうが、混合飼料で促成に育った昨今より、カラは固く、黄身の色も濃く、こんもりと盛り上っていた。
タイ国から遊びにきた知人は、「日本の卵は生臭い」といって食べない。
ぬくもりも違っている。
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向田邦子『父の詫び状』より引用
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鎌鼬に噛まれたという農夫が幾度か、田舎の医師であった私の父の家の玄関にかつぎ込まれるのを私は見た。
それは暗い空に走った最初の稲妻のように、生臭く、怖いものであった。
鎌鼬は土の精であり、百姓にだけ現われたファントムであったのか。
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小堺昭三『カメラマンたちの昭和史(5)』より引用
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荒くれた漁師と病気の乞食の場合は、まつぴらなんだ。
実生活の生臭い風にお顔を撫でられるのが、とてもとても、いやなんだ。
お手を、よごすのがいやなのさ。
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太宰治『お伽草紙』より引用
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返ってくるのは、甘く腐った匂いに満ちた、生ぬるい風だけです。
でも今夜は、いつもと違った生臭さがして、蠅の羽音が漂っていました。
闇に目を凝らすと、窓ガラスを割られてドアを引きちぎられたワゴン車が、停まっているのが見えました。
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雀野日名子『トンコ』より引用
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猫のひくい唸り声は村の入口ちかくまでくると、さっきより、もっとはっきり聞えました。
吐き気のするような生臭い臭気がその方向から風に流れて鼻についてきます。
魚の腐ったような臭気でした。
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遠藤周作『沈黙』より引用
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死んでしまって初めて人間から生臭さがとれて重みが出てくるの。
大藪春彦『野獣死すべし』より引用
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これはパラオと島野さんの配慮だろう。
三十組だか四十組だかの新婚の間にいたんでは生臭くっていけない。
フランス語のアナウンスがあった。
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山口瞳『酔いどれ紀行』より引用
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その粗暴な外見とは反対に、徳次はさういふ血生臭いことが嫌ひだつた。
そして、人並外れた敏感さを示すのであつた。
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田畑修一郎『医師高間房一氏』より引用
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私は吐き気を堪えた。
義姉のイメージとともに生臭い血の匂いが思い出されたからであった。
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高橋克彦『幻少女』より引用
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ここへ来て以来、俺のまわりで何かが変わり始めている。
平和な現実世界を逸脱し、血生臭い非現実的の世界へと移りつつある。
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高橋龍也『痕 ―きずあと―』より引用
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村人たちはダム計画と戦うためならどんな血生臭い手段もいとわない。
それもまた県警本部で聞かされたはずだ。
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竜騎士07『ひぐらしのなく頃に 04 暇つぶし編』より引用
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学生時代語り合った青春の野望を、奴は女への愛などというふにゃけたしろものによって去勢してしまった。
女を利用するのも実力の一部だとうそぶいたあの生臭さは何処へ行ってしまったのだ。
奴のこれからの将来は目に見えるようだ。
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森村誠一『虚無の道標』より引用