生えている雑草
17 の例文
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まともに正面を向いて立っていられなかった。金網の下に生えている雑草には霜が降りており、色がくすんで見えた。金網をつかんだ指は、冷たさのために皮膚が切れるようだった。
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地下室へ降りる階段があるはずだ。コンクリートにへばりつくようにして生えている雑草の群れをかき分ける。
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つまりせっせとメロンの蔓の間に生えている雑草を栽培したのだ。まずひょろひょろとした雑草が一本生えているところへ丈夫なやつを二本植えて育てた。
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おちつきなさい北条麗華。そう、二ノ宮峻護なんて廃屋の屋根に生えている雑草ほどにも価値のない男なのだから。
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思わずつられて微笑み返してしまうような柔和な笑みだ。よく見ると手元に置いてあるのは植物辞典で、どうやら坂の脇に生えている雑草の名前を調べているらしい。その草にはたまたま見覚えがあった。
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あろえは道ばたにしゃがみ込んで図鑑を広げ、その背後で埜々香が故障中のロボットのような一歩進んで二歩下がるみたいな動きをしている。何をしているかと思えば、あろえは道路沿いに生えている雑草と図鑑を熱心に見比べている。彼女たちが出かけていって、すでに三十分以上が経過しているというのにだ。
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塀は低いものだし、塀の上に忍返しが付いているわけでもない。それに、庭に生えている雑草は、身を隠すのに好都合である。彼はレインコートを着て、そのポケットにガラス切りを忍ばせている。
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前庭のそこここに柔らかい光が溢れ、その光によって魂次は自らの精神が浄化されるような感じを感じていた。光は長屋門にも庭の片隅に這うように生えている雑草にも均しく降り注ぎ、すべてが恩寵とともにそこに存在しているようにみえた。そんな前庭に立つ魂次の前にひとりの娘がいた。
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ぽつぽつと生えている雑草を、三人は踏みしめてゆく。耕太は自分を引っぱり続ける男を見つめた。
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土地の人は一本松と呼び、その下に街灯がついている。左右からおおいかぶさるように生えている雑草をかきわけて、五、六分急な坂を下ると、やっと道らしいところにいきついた。その道は地蔵坂の麓をぬうてくねくねと、小磯のほうへつづいている道である。
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いくつかが刃の下で沈黙させられたあと、残党はせわしない恐怖のあえぎを洩らしながら暗闇のなかへと逃げ、その足音は奇妙な水のはねるような騒音を敷石に残して行った。ジレルはあたりに生えている雑草をひとつかみ集め、とびちったいまわしいものを足からぬぐった。せわしなく呼吸しながらあたりを見まわすと、この土地はあまりにも冒涜的で、十字架でも持たない者には正視に耐えられなかった。
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ハエが、陽の当る部屋々々の中を、縦横にとびまわった。窓ぎわに生えている雑草が、夜中にきまって窓硝子をたたいた。暗くなると、燈台の光が差してくる、かつては暗闇の敷物の上に、その模様をあらわしながらいかめしく差し込んだが、今は月の光と混った、柔らかな春の光として、やさしくすべり込んだ。
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夏海、思わずきょろきょろとあたりを見回す。でも、そこは、港の釣り場へと続く道の上で、あたりにあるのは、せいぜいがコンクリートで舗装された地面と、その隙間から生えている雑草だけ。「明日香が、呼んでる」 明日香。
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三十坪ほどの広さのなかに、カトレア、シプリペジウム、ミルトニアなど、百数十種類にわたる洋蘭が、紫、紅、淡桃色、黄、ブルーと、色とりどりの花を咲かせ、室内は春のような温かさだった。寧子は、昼食後、庭番夫婦に鉢の植替えや株分けをさせ、自分はピンセットで根ぎわに生えている雑草を一本一本、丹念に抜き取っていた。「奥さま、大丈夫でおますか、新のピンセットの先は尖ってまっさかい、お手を傷めはらんといておくれやす」 庭番が気遣うように云うと、寧子は五十半ばとは思えぬ細面の白い顔をかしげた。
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「ちょっと待て」 小春丸は立ちあがると、垣のそばに生えている雑草をよりわけ、なにかを摘んで、もどってきた。「血止め草じゃ」 草をちょっともんでから、小春丸は、そっとそれで傷をふいてやった。
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だが、ベトナム戦争終結の前年に生まれたクインフォアさんの少女時代、農村の暮らしはいまよりもさらに厳しかった。戦火と熱帯気候のせいで傷みの激しいフエ王宮の城址を散策しているとき、クインフォアさんは道端に生えている雑草に目を落としながら、ときおり少女時代の忘れ物でも見つけたかのように駆け寄っていた。
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