狭い
全て
形容詞
19,851 の用例
(0.02 秒)
-
「ここなら見つからんな」と鉄郎は並んで立つ克夫に言った。
暗くて狭いそんな場所に、二人肩を寄せ合っているのは妙な気分だった。
精米所の息子が何かぶつぶつ言いながら小屋の前を通り過ぎた。
…
佐野良二『尾なし犬』より引用
-
それは実際、ただ下の暗くて狭い女中部屋から生まれた夢にすぎないよ。
それはあの女中部屋でならぴったりだろうけれど、ここのひろびろとした酒場じゃ奇妙に見えるね。
…
原田義人『城』より引用
-
つまり向うから来る人、横から来る人も、それぞれ相当の用事もあり、理由もあるんだと認めるだけに、世間が広くなければなりません。
ところが狭く深くなると前に云うた御医者のようにそれができなくなる。
抽出法と云って、自分の熱心なところだけへ眼をつけて他の事は皆抽出して度外に置いてしまう。
…
夏目漱石『文芸の哲学的基礎』より引用
-
その国道のすぐ下に海岸があった。
黒と言っていいほどに濃い色をした、魅力のない砂の、狭い海岸だった。
海岸は汚れていた。
…
片岡義男『夏と少年の短篇』より引用
-
おばあさんは泣きながらボクを出そうとしてくれましたがおじいさんに止められてました。
タケシ君も一緒に入ったんですがそんなに狭そうにはしてませんでした。
タケシ君に耳をふさがれるとあったかくなるかなと思ったけど耳は冷たいままでした。
…
宮谷シュンジ『絶望の世界 4狭間の世界 ボクの日記』より引用
-
入口で古風な呼鈴の紐を引くと、ひとりで戸があいた。
狭い階段をいくつも上っていちばん高い所にB君の質素な家庭があった。
二間だけの住居らしい。
…
寺田寅彦『異郷』より引用
-
帆村探偵は、傍の小扉をあけて、小さな階段をコトコトと下って行った。
下り切ったところが狭い廊下になっていて、そこにだだっ広い室がある。
そこは、この建物にいる皆の寝室だった。
…
海野十三『麻雀殺人事件』より引用
-
叔父は自分では肺尖加答児だと称していた。
狭い田舎の町では、お庄は姿が人の目に立って、長くもいられなかった。
磯野とも一度鰻屋で二人一緒に飯を食ったきりで、三日目の午後には、もう利根川の危い舟橋を渡って、独りで熊谷から汽車に乗った。
…
徳田秋声『足迹』より引用
-
狭い町の取沙汰が思ひやられ、少年は眼の色かへて憤つてゐるのだつた。
小寺菊子『父の帰宅』より引用
-
知らず知らずの間に少しずつの変化が起って行くのは免れぬ。
そしてその変化は、交通の範囲が狭いだけそれだけ多かるべき訳である。
ラ行とダ行とを取り違えるが如きことは、九州地方では一向に珍らしくはない。
…
喜田貞吉『特殊部落の言語』より引用
-
さすがに速度は落ちている。
階段も狭くなっているので二人並んでやっと通れるぐらいの幅しかない。
木箱のたくさん並んだ倉庫を通って次の階段へさしかかったとき、私の足はがくがくして前へ進まなくなった。
…
吉田知子『無明長夜』より引用
-
しかしまだ僕等の仲間にはいってから日も浅かった。
そしてごく狭い意味での僕等の団体とは直接に何の関係もなかった。
そして僕は無事に大船から下りの列車に、彼は上りの列車に乗った。
…
大杉栄『日本脱出記』より引用
-
今晩も電燈が点いたので、鶴見は出居から土間に降りて、定めの椅子を引き出して腰をおろす。
鶴見の席は卓の幅の狭い側面を一人で占めることになっているのである。
家族の人々は老人夫婦をはじめ出揃っている。
…
蒲原有明『夢は呼び交す』より引用
-
家は狭くてきれいじゃなかったけど、そういう環境は嫌いじゃなかった。
井田真木子『もうひとつの青春 同性愛者たち』より引用
-
田舎風の屋造のことで、裏口から狭い庭を通って、表の方へ抜けられる。
表座敷へ通う店頭の庭のところで、三吉、正太の二人は沢田老人の訪ねて来るのに逢った。
…
島崎藤村『家』より引用
-
わたしが途中まで上がると、彼女が後に続いてくるのがわかった。
内部はわれわれの組合の独房とほとんど変わらないくらいの狭さだった。
しかし、似ている点はそれだけだった。
…
ウルフ/岡部宏之訳『新しい太陽の書1』より引用
-
互いを知り得る者たちの境界条件が混濁している場合、夢というものは双方に干渉し矛盾を修正する。
おまえのように外を狭く使っている者は、稀にこのような場を形成する。
…
奈須きのこ『歌月十夜 01 本編』より引用
-
一方、吉備上道臣田狭が、自分の妻の美しさを自慢したのを聞いた雄略天皇は、田狭を自分の代理として任那に使いに出し、その留守中に田狭の妻の稚媛を横取りにしてしまいます。
これを知った田狭は、新羅と内密に通じて帰国しなかったというのです。
…
高木彬光『古代天皇の秘密』より引用
-
大阪府統計年鑑によると、1日の平均乗車人員は以下の通りである。
このほか、駅の東側は古くからの商店や住宅が所狭しと軒を連ねている。
阪和線の高架下には商店が軒を連ねている。
…
-
施療院は、狭い低い二階建ての建物で、小さな庭が一つあるきりだった。
到着して三日後に、司教は施療院を見舞った。
…
ユゴー・ヴィクトル『レ・ミゼラブル』より引用