濃い鈍色
12 の例文
(0.00 秒)
-
源氏は打ち解けた姿でいたのであるが、客に敬意を表するために、直衣の紐だけは掛けた。源氏のほうは中将よりも少し濃い鈍色にきれいな色の紅の単衣を重ねていた。こうした喪服姿はきわめて艶である。
...
-
源氏の方は、中将のより濃い色の喪服だった。亡き妻への哀惜の心が、いつまでも濃い鈍色をまとわせるのだった。やつれてなまめいてみえる源氏は、つねよりも一段と美しい青年である。
...
-
そして結びつきが深まるにつれて、二条という娘の性格も、少しずつ実兼には呑みこめてきた。ひさしぶりに再会した夜、二条は濃い鈍色の衣裳をまとっていた。父の久我大納言が世を去ってまもなく、あとを追いでもするように母方の祖母までが他界したからである。
...
-
濃い鈍色の紙に書かれて、樒の枝につけてあるのは、そうした人のだれもすることであっても、達筆で書かれた字に今も十分のおもしろみがあった。この日は二条の院においでになったので、夫人にも、もう実際の恋愛などは遠く終わった相手のことであったから、院はお見せになった。
...
-
長いつきあいの源氏は、それを知っているのであった。かつての葵の上のときよりは、更にいっそう濃い鈍色の喪服を、源氏はまとっていた。法要のことも、源氏ははかばかしく指図しないので、すべて夕霧が準備する。
...
-
-
喪の家として御簾に代えて伊予簾が掛け渡され夏のに代えられたのも鈍色の几帳がそれに透いて見えるのが目には涼しかった。姿のよいきれいな童女などの濃い鈍色の汗袗の端とか、後ろ向きの頭とかが少しずつ見えるのは感じよく思われたが、何にもせよ鈍色というものは人をはっとさせる色であると思われた。今日は宮のお座敷の縁側にすわろうとしたので敷き物が内から出された。
...
-
その二人の中の一方が庭に向いた側の御簾から庇の室越しに、薫の従者たちの庭をあちらこちら歩いて涼をとろうとするのをのぞこうとした。濃い鈍色の単衣に、萱草色の喪の袴の鮮明な色をしたのを着けているのが、派手な趣のあるものであると感じられたのも着ている人によってのことに違いない。帯は仮なように結び、袖口に引き入れて見せない用意をしながら数珠を手へ掛けていた。
...
-
現在の葬儀の色は黒と白だが、平安貴族にとって灰色は喪に欠かせないものだった。遺族は死者との関係性に従って定められた喪に服すが、両親や夫に先立たれた場合は特に長い期間喪に服し喪服もより濃い鈍色のものを着る。女性の場合、普通の袴は紅色か紫色だが喪の期間だけは「萱草色」のものを着用する。
...
-
中将はまだ喪服を着ていた。紅に黄ばんだ色の袴に単衣、濃い鈍色の袿という衣裳である。それらが寝乱れて重なっているのを、あわててとりつくろい、脱ぎ滑らせていた裳や唐衣をひきかけたりしている。
...
-
源氏は女御のお部屋へうかがった。濃い鈍色の直衣姿である。世の中が騒がしく、為政者として謹慎するというのが口実だが、実は、あのまま故宮のための精進をして、喪服でいるのであった。
...
-
赤くなっている顔を恥じて隠しているが、少し癖づいてふくれた髪の横に見えるのがはなやかに見えた。紅の黄がちな色の袴をはき、単衣も萱草色を着て、濃い鈍色に黒を重ねた喪服に、裳や唐衣も脱いでいたのを、中将はにわかに上へ引き掛けたりしていた。
...