漂うよう
213 の例文
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シゲルは鼻をうごめかせた。美也子の髪かと思ったが、そうではなく、なにか香料が漂うようだった。ほどなく、ジャンパー姿の男が現われ、栗原だと名乗った。
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まるで最初からそんな話は聞かなかったかのように振るまっている。だが、両者の間に目に見えぬある種の緊張感が漂うようになったのは事実だ。アイラはあずま屋の床に毛布を敷いて仮の寝床をつくると、ヨシュアを横たえた。
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あの山の鞍部の線と云ったら無いですね。漂うように右から降りて来て、溜息を衝くように左へ登って行くのですね。あれなんぞが線と云う名を附けていい線の一つです。
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私は立派な声明だと思って校長を支持する気になった。この校長になってから一種の民主的な空気が校内に漂うようになった。私が卒業してずっと後までこの校長が奉職していられた。
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「ちょいと見てくる」ちびの魔術師がようやく言った。かれは時間をかけて、鴎の姿になると、霧の中へ漂うように昇っていった。もどってきたとき、ベルディンは小気味よさそうにくすくす笑っていた。
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幻のような姿の男は、ふわふわと漂うように、森の小道を横切っている。ディードリットたちが見守るうちに、その姿は霧が晴れるように消えていった。
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この生命のしるしは彼をよろこばせた。彼はそのほうへ急いだが、その燈火のほうも彼のほうへ向って漂うように近づいてきた。それが二人の助手だと見わけがついたとき、なぜそんなに落胆したのか、彼にはわからなかった。
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その薔薇の皮膚はすこし重たそうであった。そうして笑う時はそこにただ笑いが漂うようであった。彼はいつもこっそりと彼女を「ルウベンスの偽画」と呼んでいた。
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唇に浮かぶ微笑みは、かわらず穏やかなものだった。ある種の満足感さえ漂うように思えるその口元が動き、澄んだ声が流れた。
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落ち葉がまた数枚、ゆっくりと漂うように一弥の周りに落ちてきた。
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オシラサマたちはそういうと、漂うように闇の中を進みはじめた。佐助は神秘に酔ったようにそのあとにつづいた。
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雪の道をうしろから、漂うようにやって来たのは麻羽玄三郎と一人の甲賀者だ。死んだ玄三郎が生き返ったことは、なるべくおげ丸に知られない方がいいだろうと、これまで後方にひき離してあったものだ。
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新宿の夏は、とにかくやたらと暑くて、べったりしていて、そして、頭が痺れるくらいにやかましかった。私とマリエは、音の洪水の中に身を浸し、漂うように日々を過ごした。そして十日も過ぎた頃、マリエは突然、男と暮らすことにしたと言い出した。
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向かって左は、左向きの垂直に立ち上がった銀の獅子。向かって右は、銀の胸壁のある塔を持つ銀の城が半分だけ漂うように描かれている。シュタインスフェルトは、ロマンティック・フランケン観光連盟に加盟している。
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海の男たちはどうやら、魔法には慣れていないようだ。光球はリーフの精霊語に操られ、漂うように水兵たちに近づいていった。そして、青白い光を脈動させながら、道幅いっぱいに踊るように飛ぶ。
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それを見ながら吟子は腰から落ち込むように椅子に坐った。大海の中を一人で漂うような侘しさが、音もなく吟子の中に忍び込んできた。「さあ治して貰いましょう」 もとはすえの膝元から少年の手を一本ずつとり放すと、少年の顔を再び吟子の方へ向けた。
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干渉はほとんどしないし、顔をあわせている時間もそう多くはない。だが、ここ数年、夫婦のあいだにあぶない倦怠感が漂うようになった。二人一緒に暮らしていて邪魔にはならないが、昔のような愛情があるとは思いにくい。
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