済まない気がする
18 の例文
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突然、黒々とした不安が胸に広がっていった。このまま栞子さんが母親と出かけたら、数日の旅行では済まない気がする。一週間か、一ヶ月か、ひょっとして彼女もビブリア古書堂に戻ってこないんじゃないか。
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豹一は二ヵ月の休暇を利用して、やっとお駒と離れてしまったということに、少し自責めいたものを感じていた。お駒を自尊心のだしに使ったということが、済まない気がしていた。豹一はただ、と周囲を見廻してみて、やっと心を慰めた。
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済まない気がして、正勝にはできるだけのことはしてやりたいと思うのよ。
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私は過去と、いずれは来るはずの日々のことを考えはじめた。私の心は妙に狭すぎるような気がして、私は歌を歌わずには済まない気がした。
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手紙を見た途端に、多鶴子は出掛ける心が決った。豹一に済まない気がしたかどうかは、ここで述べる筋合のものでもあるまい。矢野はやはり自分から逃げていたわけでもなかったと、ともかく多鶴子は頬を燃やしたのだ。
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それに京へ来たら訪ねようという約束のしてある人もその近くへ上って来ているのですから、済まない気がしますから、そこへも行ってやります。
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これまでも何かの場合によく私は、あの人の行くえを失ってしまったことを思って暗い心になっていたのだからね。聞き出せばすぐにその運びにしなければならないのを、怠っていることでも済まない気がする。お父さんの大臣に認めてもらう必要などはないよ。
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なんだか源氏に済まない気がする。
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この三人の男の夢が託されている梅を、離婚の荷物と一緒に持ち帰るのは、三人の男に対して済まない気がするのだ。さりとて、このままずるずると、夫のいい加減な生活態度に黙ってついていっても、結果はわかり切っていた。
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彼は明日の朝多くの人より一段高い所に立たなければならない憐れな自分の姿を想い見た。その憐れな自分の顔を熱心に見詰めたり、または不得意な自分のいう事を真面目に筆記したりする青年に対して済まない気がした。自分の虚栄心や自尊心を傷けるのも、それらを超越する事の出来ない彼には大きな苦痛であった。
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と、思うと何か済まない気がした。
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けれども、何より肝腎の、 「俺の心にすまんねえもの」 を、云いとくに入用だけの言葉数さえ知らない上に、どういう訳だからどうなって俺の心に済まないのかと、いうことは、彼自身にさえよくは分っていない。ただ心に済まない気がする。後にも先にもそれだけなのである。
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此の順で行くと此年は又去年の元日を読者に御覧に入れなければならん訳であるが、そうそう過去のまずい所ばかり吹聴するのは、如何にも現在の己に対して侮辱を加えるようで済まない気がするから故意と略した。それで猶のこと塞えた。
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そして今も独身です。K・S氏の展覧会の会場の銀座のデパートで、あなたが人中の僕を見て階段の上に佇んでいらっしゃったのを知り、僕が何故むす子さんの絵を買ったかを云わなければ済まない気がしまして、絶えて久しい手紙を書きました。今後はまた今まで通り一切手紙を差し上げぬつもりで居りますが、僕の生活もとにかく軌道にだけは乗っていますからご安心下さい。
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私はただそういうよりほかはありませんでした。それと同時に、図々しいYに対しては、私は助かった、という気がしただけでしたけれども、Mさんには何となく済まない気がしました。間もなく私共は一時雑誌を中止して鎌倉へ引越しました。
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蔭口や皮肉をとばす、整調森さんの意地悪さ、面とむかって「ぶちまわすぞ」と威かす五番松山さんの凄まじさ、そうした予感が、堪えがたいまでに、ちらつきます。またそうした先輩達の笞から、いつも庇ってくれるコオチャアやO・B達に対しても、ぼくの過失はなお済まない気がします。悶え悶え、ぼくは手摺によりかかりました。
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彼女の唯一の頼りは死んだ叔母の思い出であって、彼女はそれに包み込まれた。先ごろは幼い利己心のため閑却しがちであり、今日では利己心によっていたずらに呼びかけてるその叔母にたいして、たいへん済まない気がした。彼女は叔母の面影を理想化した。
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