淡鈍色
5 の例文
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淡鈍色の喪服を玉鬘は祖母の宮のために着ていた。そのために顔がいっそうはなやかに引き立って見えるのを、女房たちは楽しんでながめている所へ、源宰相の中将が、これも鈍色の今少し濃い目な直衣を着て、冠を巻纓にしているのが平生よりも艶に思われる姿で訪ねて来た。
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純然たる尼君のお住居になって、御簾の縁の色も几帳も鈍色であった。そんな物の間から見えるのも女房たちの淡鈍色の服、黄色な下襲の袖口などであったが、かえって艶に上品に見えないこともなかった。解けてきた池の薄氷にも、芽をだしそめた柳にも自然の春だけが見えて、いろいろに源氏の心をいたましくした。
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そんなことで妻は生涯心から打ち解けてくれなかったのだなどと、源氏は悔やむのであるが今はもう何のかいのある時でもなかった。淡鈍色の喪服を着るのも夢のような気がした。もし自分が先に死んでいたら、妻はこれよりも濃い色の喪服を着て歎いているであろうと思ってもまた源氏の悲しみは湧き上がってくるのであった。
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それだけのことでも約束してくれた義務としてしなければならぬと責められて、少将が姫君の室へはいってみると、人に見せないのは惜しいような美しい恰好で浮舟の姫君はいるのであった。淡鈍色の綾を着て、中に萱草色という透明な明るさのある色を着た、小柄な姿が美しく、近代的な容貌を持ち、髪の裾には五重の扇を拡げたようなはなやかさがあった。濃厚に化粧をした顔のように素顔も見えてほの赤くにおわしいのである。
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源氏が座敷の中を見まわすと几帳の後ろとか、襖子の向こうとか、ずっと見える所に女房の三十人ほどが幾つものかたまりを作っていた。濃い喪服も淡鈍色も混じっているのである。皆心細そうにめいったふうであるのを源氏は哀れに思った。
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