波間に漂う
28 の例文
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一瞬のうちに四輪馬車は、後を追ってきた人々と、前から来た人々との間にはさまれた。たちまち馬車は波間に漂う島のように荒れ狂う群集の上に押し出された。不意に波間に漂う島は動かなくなった。
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卵は海水に触れるとすぐに孵化し、無数の幼生が雲のように波間に漂う。幼生は外海へと流され、3-4週間にわたって漂いながら数回の脱皮を繰り返し、最終的にエビに似たメガロパ幼生となる。
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そのような騒ぎのなかにあって、沖の釣り舟のなかの松岡は茫洋として釣り糸を垂れていた。彼を乗せている舟のように、日本丸は茫漠として波間に漂っている。行方もさだかではない。
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私は服の裾を持って、ひらひらさせてみた。長めのスカートが波のように揺れ、波間に漂う龍涎香の塊が頭に浮かんだ。五千万円の夢が萎みに萎み、ついに七十万円になってしまった龍涎香。
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遺体はすべり板のようなものを傾け、海へ投じられた。「兄さーん、兄さーん」 弟は波間に漂う遺体を追って、甲板を走った。
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ネットでつながる時代になればなるほど、薄いコミュニケーションを繰り返しているだけでは、自分の居場所を持ったキャラクターの強い人にはなれない。やや極端に言えば、自分をすり減らして、情報の波間に漂っているだけでは、何のために生きているかも分からなくなって当然です。ケータイに電話がかかってこないと心配。
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また裕子が見つけた。「近くに人が浮いているわ」 黄色い救命具をつけた人間が波間に漂っている。エンジンを弱くしてそっと近より長い棒をさし出したが、反応が無い。
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殊に着物だけで若い女と分ったから、むしろ喜んで方向をとり直した。近づいてみると、着物の裾から白い脚が二本と、両手がひろがって波間に漂っている。船頭の位置からみて脚のほうが手前だったので顔まではよく分らない。
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たちまち馬車は波間に漂う島のように荒れ狂う群集の上に押し出された。不意に波間に漂う島は動かなくなった。一人の蹄鉄工が鉄槌を振って、二頭の馬のうち一頭を殴り殺したところだった。
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その時S署員はふと不思議なものを波間に発見したのである。それはまるで主のない捨小舟のように、ブカブカと波間に漂う一艘の汽艇だった。しかもその汽艇の周囲に、おびただしく鴎の群れているのが、S署員になんとなく不吉な予感をいだかせた。
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おそらくいまはもう、燃えつくしたのだろう。波間に漂う微生物は分解をつづけ、体内の化合物を〈海〉へ返しつつあるのだ。「泳がなければならなくなったら」と、乗組員はアーンスト博士に警告されていた。
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ここに来るまでは、小さな氷塊が波間に漂う程度にしか、陽子は流氷を考えることができなかったのだ。更に十七、八メートルにも及ぶ丘状の流氷があるといわれても、陽子には想像を超えることだった。
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悠子は、波間に漂う漂着物の一つ一つに興味を抱き始めた。漂着物は、拾った人間の想像力を異様にかきたてる。
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私は上の空で頷いた。私の頭には、波間に漂う宝船の姿が浮かんだ。その船の上には恵比須さまが乗っている。
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卵からは20日ほどで孵化し、幼体は浅い海で小魚や甲殻類を捕食して成長する。夏には体長数cmの幼体が浅い海で落ち葉のように擬態し、波間に漂う様が観察できる。幼体は沿岸の浅い海で体長15cm-20cmほどまで成長し、冬になると深場に移動する。
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いちめん萱におおわれたその山の斜面に二百七十六体もの石像が、あるものは空を仰ぎ、あるものは地にうつ伏し、あるものは横ざまに倒れて風に吹かれていた。私は波打つ萱原のただ中に茫然と立って、まるで波間に漂っているかのように見えるモアイの群れを見つめた。すると、私のすぐ脇に、半ば倒れかけながら、かろうじて身を支えている大きなモアイが何かをつぶやいているのがきこえた。
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どこへ行くあてもない、午後のたわむれであった。スピードをゆるめ、波間に漂うようにして陸を見ると一台の小型車が細い道を辿って磯の岩場の近くに停めてあった。エリと名乗る伊沢の週末のパートナーが、上体を反らせてそのほうを見た。
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