柔和な眼
51 の例文
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色の白い、口髭の生えた、立派な男ではあるけれど、何處か恁う奧のあるやうな、厭なところがある。柔和な眼でそして細長いけれど矢張り何處かに恐ろしいやうな所がある。仔細に見ると餘り感じの宜い男ではない。
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「昨日電話で聞いた赤木さんのことですが」 と亀井が切り出した。「ああ、あの時の刑事さんですか」 林は柔和な眼になってニッコリした。
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どこへ行っても久保川は、柔和な眼で、うすく口をあけて眺めている。反応は鈍かった。
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皮膚のたるみや皺は見えず、サングラスの奥の柔和な眼だけが見えた。
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そして少年の手を受取ると、俯むき加減につくづくとこの珍らしい来客に見入った。それは悲しい柔和な眼つきだったが、好意といっては少しも感じられなかった。彼は少年を机に近い椅子に坐らせた。
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ホアハオ婆さんはそれまでにないような柔和な眼で姪を見つめた。「お前も、日本くんだりまで行っちまうんだねえ」 と、タメ息をついた。
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深緑の手術服を着た中年の男性が、子犬を抱いて現れた。濃い眉と柔和な眼もとが、青年にそっくりだった。
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世にもあどけない限りの子供っぽい顔に、まだ成りきらぬ鼻と、何も知らぬ口とがある。ただ漆黒の柔和な眼の下のあたりには、すでにやや疲れた色があって、はっきりと隈ができている。ちょっと見には九つぐらいだが、実はようやく八つで、しかも触れ込みは七つなのである。
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洋服の柄もネクタイの好みも、教養を偲ばせている。彼はやや痩せていたが、柔和な眼をしていた。熱海の灯が窓の下に動いているのを一瞥すると、ポケットからパイプを取り出し、真白いハンカチで磨きはじめた。
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髪のもじゃもじゃの、柔和な眼の、顔色のわるい、痩せた青年だった。
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嫂は、若妻らしい初々しさで兄の身の廻りの世話をし、家事を手伝った。母にも優しかったし、清夫にも柔和な眼を向けてくれた。ただ兄は、別人のように無口になった。
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あたしは眼をあげて相手を見た。青年の柔和な眼が暗くなった。
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彼は長身をもてあましたように椅子にすわり、いま必要なことは、強力な軍隊をつくることだ、といった。「われわれがいまどのような立場にいるかを、きみは理解しなければいけない」と彼は澄んだ柔和な眼をおれにむけてつづけた。
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亮太郎はちらとおふくの顔を見た。常識では言えぬことを言ってのけたおふくの柔和な眼は廊下の暗がりできらきらと異様に光っていた。その眼の中に亮太郎はおふくの怒りを見た。
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澄んだ柔和な眼が濃い髯のなかからおれたちを見まわす。そしてその蒼白い顔は話につれて次第に紅潮してくるのだ。
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窓から射すレースカーテンごしのやわらかい光線が局長の禿げた前額の上を陶器のように輝かせていた。ハンゲマン博士は濃い眉と柔和な眼で山上を迎えた。背後の壁いっぱいくらいのスクリーンに、参謀本部にでもあるようなヨーロッパの大地図がかかっていた。
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普段は好々爺然とした柔和な眼が、芸に関する限り容赦のない厳しさで光る。吉哉は顔が上げられなかった。
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