柔和な目
27 の例文
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無口で始終何かぼんやり考え込んでいるようなふうで、他の一般に快活な連中からはあまり歓迎されぬほうであった。しかしごく気の小さい好人物で柔和な目にはどこやら人を引く力はあった。自分はこの男の顔を見ると、どういうわけか気の毒なというような心持ちがした。
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その柔和な目の奥に彼だけに見える地獄があるのだろう。
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それにしてもなんのためにお前はいまごろわれわれの邪魔をしにやって来たのだ?それに、どうしてお前は黙ってしみじみとその柔和な目でわしを見つめておるのだ?怒るがよい、わしはお前の愛などほしくはないのだ、わしのほうもお前を愛してはいないのだからな。
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やつれた清兵衛の顔がびくりとしたが、すぐに柔和な目を見せた。「正吉がいなくなってから、いまの返事が初めてきく正直な声じゃないか」 返事の代りにおしのが優しく笑いかけた。
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緒方はちょッとからかってみたい気持になった。「君は柔道も強いそうだな」 牛は童児のように柔和な目に笑みをたたえた。
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笑うと、今しがたちかりと光った細い目が、たちまちえも言われぬ柔和な目となった。
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近ごろ明がときどき「じじい」と呼ぶ。そのとき友江は、細い柔和な目をいっそう細めて、おかしそうに笑うだけだ。友江と会った五十にいたるまでの年の、鶴吉の苦しみは、おそらく友江にはわかるまい。
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頭がすっかりはげあがり、顎の肉も少しだぶついた老人の顔が映った。しかし、老人とはいえ、柔和な目には強い意志があふれ、肌は若者のそれのようにつやつやとしている。銀河系一の魅力を持つといわれた顔だ。
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そして二言目には、 「なにせわたしが死んだら討ち入りもなにもパーだもんね、わたしが『忠臣蔵』の主導権を握ってるんだからね」 と内蔵助らに脅しをかける。もはや、かつて柔和な目で物静かに有職故実を語った上野介の面影はなかった。確かに、吉良家の辞めていった家臣が噂し合うように、人間が変わってしまったと言ってよいほどの横柄さで人に接していた。
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明子をみると、牧浦はハッとしたようだった。「いまちょうど、あなたのことを考えていたものですから、びっくりしましたよ」 眼鏡の奥に、いつも柔和な目が笑っている。肩幅の広い背の高い独身の医師だった。
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目尻の下がった柔和な目とストレートな長い黒髪が印象的だ。くるぶしまで隠れるような花柄の長いスカートがよく似合っている。
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愛子は羊のように柔和な目をまばゆそうにして、姉をぬすみ見ながら、着物を着かえて下に降りて行った。葉子はなんとなく性の合わないこの妹が、階子段を降りきったのを聞きすまして、そっと貞世のほうに近づいた。
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よく拭きこまれた廊下に腰をおろしたマックナイトは、ひと目で保郎のあり方を見て取ったのかも知れない。柔和な目が更に、慈愛に輝いて言った。
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それに正一は、目つきが鋭いとは言えない。父はむしろ柔和な目の持ち主だ。その上、今の正一は常にサングラスと手袋を着用しているらしい。
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惣右衛門は、出府前に、久富のところへ挨拶にいった。久富は、柔和な目をしていた。どう見ても悪人の目ではなかった。
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足裏を破り脛を傷つけ、危巖を攀ぢ棧道を渡つて、一月の後に彼は漸く目指す山巓に辿りつく。氣負ひ立つ紀昌を迎へたのは、羊のような柔和な目をした、しかし酷くよぼよぼの爺さんである。年齡は百歳をも超えてゐよう。
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足裏を破り脛を傷つけ、危巌を攀じ桟道を渡って、一月の後に彼はようやく目指す山顛に辿りつく。気負い立つ紀昌を迎えたのは、羊のような柔和な目をした、しかし酷くよぼよぼの爺さんである。年齢は百歳をも超えていよう。
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