染まる
全て
動詞
1,056 の用例
(0.01 秒)
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女はもちろんその話を聞かれたと思ったのに違いない。
猫に似た顔は目を挙げたかと思うと見る見る羞かしそうに染まり出した。
保吉は前にも言う通り、女が顔を赤めるのには今までにもたびたび出合っている。
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芥川龍之介『トロッコ・一塊の土』より引用
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この島で生き続けるには、やはり闇に染まる以外にないのかもしれない。
マーモの住人たちのこれまでの生き方こそが唯一の方法であったとも考えられる。
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水野良『新ロードス島戦記1 闇の森の魔獣』より引用
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光源氏に口説かれた時も、 「世間一般のつまらぬ身分の田舎者なら、こうしてかりそめに都から来た人にも、簡単に身を許すかもしれないが、自分なら数にも入らぬ身分でそんなことをすれば、すごく苦しむだろう」 と、卑下する中にも「自分はそこらの田舎者とは違うのだ」という自負をのぞかせていた。
娘は父の夢に知らず知らずのうちに染まり、父の野望に支配されてきた。
入道の手紙は、そんな娘に向けた、最後で最強のマインドコントロールでもあったのだ。
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大塚ひかり『源氏の男はみんなサイテー ―親子小説としての源氏物語』より引用
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おそらく、自分でも信じられないほどの悲鳴をあげたに違いないのに、その声は咽喉を抜けるよりも早く赤いフィルターに吸収されてしまった。
真赤な血の色に染まった風景の中では、音は全部吸収されてしまうのだ。
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荒俣宏『帝都物語5』より引用
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春山のところに勤めに行くようになったら、香苗はどっぷり大久保暮らしに浸かってしまう。
きっと一生この街で、そうした暮らしに染まって生きていくことになる。
いつかここを出ていく、そう思うから先に希望が持てる。
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明野照葉『輪(RINKAI)廻』より引用
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悔やみの言葉など聞きたくはなかった。
窓の外に広がる西の空が赤く染まる頃になると、私の不安は増していく。
帰宅するのが恐ろしかった。
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大山誠一郎『アルファベット・パズラーズ』より引用
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太陽の明かりが透けて見えた。
灰色の雲は、そこだけ、生命の始まりのような複雑な色に染まっていた。
人の姿は海岸のどこにも見えなかった。
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片岡義男『波乗りの島』より引用
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つまり、彼女が途方もない粗忽、笑うべきへまを往々しでかしても、それは自分の身のための慎重さが欠けていたということで、誰かに不快感を与えるようなことがないのだ。
彼女はとしはもゆかぬうちに意に染まぬドゥドト伯爵と結婚させられた。
伯爵は身分の高い人でいい軍人だったが、賭博好きでへりくつ屋、人好きのしない人物だった。
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ルソー/桑原武夫訳『告白(下)』より引用
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三方はモルタルの壁で、綰ねたゴムホースや、消火器や油差などが掛かっている。
頭のほうに戸口があって、そこから薄緑に染まった陽がさしこんでいる。
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久生十蘭『肌色の月』より引用
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人魚を不老不死の象徴として捉え、そのそばに身を置くことで、よりいっそう自分たちの存在の特異性が保証される、というふうに。
影見湖の水が人魚の血で染まる、という例の云い伝えについても同じさ。
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綾辻行人『暗黒館の殺人(下)』より引用
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もし彼等がスカァアの前に在るのなら、ミストの島の女軍の女王の前に在るのなら、彼等は水中で死んだ方がよかったのだ。
スケエの城の灰色の石は殺された捕虜の古い血で朽葉色に染まっていた。
「私はスカァアだ、お前方はロックリンのスヴェンとミドル・アイルのファルカか」彼女は問うた。
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松村みね子『かなしき女王』より引用
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祖父の今西平兵衛のとき明治維新になり、二代目府知事槇村正直の積極的な勧業政策をうけて、平兵衛はフランスのリヨンに留学、ここで織機の勉強をして帰っている。
ところが、祖父をついだ彼の父は、この商売が気に染まなかったらしい。
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草柳大蔵『実力者の条件 この人たちのエッセンス』より引用
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梢には分っているのだろう。
彼は次第に自分がこの場に最も馴れ染まない異分子のように思えてきた。
そんな彼の気持を察したのか、それともコースが丁度終ったからか、梢がタイミングよく「出ましょうか」と言った。
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森村誠一『虚無の道標』より引用
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頭の狭い中で、決闘がまたしては繰返されているようである。
この辺の景物が低い草から高い木まで皆黒く染まっているように見える。
そう思って見ている内に、突然自分の影が自分の体を離れて、飛んで出たように、目の前を歩いて行く女が見えて来た。
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森鴎外『女の決闘』より引用
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悪とは人間が神の本性を発見するのを妨げるものであるという。
人間は悪に染まらず神に帰還するように選択するべきだと信じられている。
クリスチャン・サイエンスでは、自然の善に対する無理解から生じると信じられている。
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森野は普段、だれにどう思われようと自分を貫く部分があった。
クラスメイトたちには染まらず、他人のどのような言葉も気にかけない。
ほとんどの時間を一人、無表情に過ごしている。
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乙一『GOTH リストカット事件』より引用
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それが生前からのものなのか、それとも神話に生ける者を美化した結果なのかは定かでないが、およそ奇跡としか言い得ないレベルで、彼らは象られている。
その顔が苦渋に染まっているのを見るのは非常に不思議な気分になる。
イリヤスフィールは内心に湧き上がってきた好奇心と嗜虐心を抑えつつ、キャスターの言葉を待った。
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事務狂『fate/stay night 月姫 (TYPE MOONクロスオーバーの最高峰、文庫5~6巻のボリューム)』より引用
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けれど、はるか彼方の雑踏の中にも銀髪の少女の姿を発見することはできなかった。
駅前広場から見上げる五月の空は青と灰色の中間の色に染まっていた。
渋谷に着いたときよりはだいぶ高く昇った太陽が、夏の到来を感じさせるまばゆい光を放っている。
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桜坂洋『よくわかる現代魔法 第02巻 ガーベージコレクター』より引用
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智子はかすかに首を捻って助手席の私を見たが、含み笑うだけでそれ以上はなにも言わなかった。
左手に見える海は群青に染まり、潮流が幾条もの帯を作って走っている。
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阿刀田高『異形の地図』より引用
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透明感がありながらも、妖しく艶やかだった。
津田とのセックスではこんなに美しく肌が赤く染まることはないはずだ。
意識していないと思っていたのに、仲本は知らず知らずのうちに、津田と自分を比較していることに気づいて驚いた。
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神崎京介『禁忌』より引用