彼は千鶴子

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  • 宿へ着いてから欄干よりのテーブルに彼は千鶴子と対い合った。 横光利一『旅愁』より引用
  • 今はもう彼は千鶴子や矢代のことには介意ってはいられなかった。 横光利一『旅愁』より引用
  • 薄汗が首のあたりににじんでいるのを拭きつつ、彼は千鶴子を探してみたが分らなかった。 横光利一『旅愁』より引用
  • 彼は千鶴子と自分との間にもし子供が生れたら何をその子供らがするものだろうかと、まだ父には告げぬ自分の嫁のことなども考えられたりした。 横光利一『旅愁』より引用
  • 艶のある爪が軽く頬の上で揺れるのを眺めながら、彼は千鶴子の和服姿を見るのも初めてだと思った。 横光利一『旅愁』より引用
  • コーヒーも飲まず彼は千鶴子のホテルへすぐ自動車で行って、その車を下で待たせたまま、五階へ上っていった。 横光利一『旅愁』より引用
  • 実際、彼は千鶴子をこの夜見たときから、全く別の舞台で昨日と違った劇を見始めているような、乗り移らぬ気持ちを感じて沈んだ。 横光利一『旅愁』より引用
  • 彼は千鶴子よりも少くとも理性的なところが自分にあると思う以上、旅愁に襲われている二人の弱い判断力に自分だけなりとも頼ってはならぬと、最後にいつも思うのだった。 横光利一『旅愁』より引用
  • 彼は千鶴子を心の中で自分の顔を合せる対象だと一度はマルセーユで感じたのを思い起すと、あのとき騒いだ自分の心の自然の結末をここでゆっくり一度清めてしまいたいと思うのだった。 横光利一『旅愁』より引用
  • 彼は千鶴子のいるときよりも、むしろ今のひとりの方が延びやかに感じられ、汁粉を待つ間が、思いがけない幸福な時間になるのだった。 横光利一『旅愁』より引用
  • 部屋から出てエレベーターの中でも、彼は千鶴子に触れる身体を慎しみがちになり離れるのだった。 横光利一『旅愁』より引用
  • 彼は千鶴子の来る東門の方の楡の繁みをときどき見た。 横光利一『旅愁』より引用
  • 彼は千鶴子との結婚のことを母に云い出すのを、寝る前の静かな時を選びたいと思い、この日は朝から夜の来るのを待っていたのだったが、日の落ちそうに傾いて来た今となっても、さてそれを云い出すときのことを思うと、不思議なほど羞かしさを感じてつい怯んだ。 横光利一『旅愁』より引用
  • 彼は千鶴子とこうしてただ並んでいるだけですでに身体が溶け合い、皮膚の隅から隅、内臓までも一つの連係をもって自由に伸縮している貝のように感じられた。 横光利一『旅愁』より引用
  • 賑やかな通りに出てからも、傍を人の通り抜けようとするとき、身を除ける自分の肩が千鶴子に触れると、つい押し気味になって彼は千鶴子を道の片側によせていった。 横光利一『旅愁』より引用
  • 油煙で黒く煤けている部分に布を通し、呼吸をガラスにふきかけては拭くのだがその間も、曇りの消えて透明になってゆくホヤに窓際の雪が映って来ると、また彼は千鶴子の誓詞の言葉を思い出した。 横光利一『旅愁』より引用
  • 彼は千鶴子のさきまでの不機嫌の原因を、彼女の頭の中からカソリックの崩れゆく様の表れと解し、ひそかに自分の苦心の効きめを喜ぶ勇みもあったときだけに、自分の言葉の強さが、反対に却って、千鶴子を鳶に誘惑された身体と表現した拙劣さの手伝うところだったと気がついて、自然に楽しみもまた半減した。 横光利一『旅愁』より引用
  • 金串に刺した鳥肌が火の上でじじッと脂肪を垂らす音を聞きながら、彼は千鶴子と槙三に御馳走をするその前に、ルネッサンスの中核を嗅ぎあてることの出来た午前を、山小屋に来た甲斐があったと喜んだ。 横光利一『旅愁』より引用