廻るやう
16 の例文
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綿の毛房は数百万の鈎に止められて、果てしもない長い糸が紡錘から紡錘へ動いて行つて、そして自然と糸巻に巻きつく。二三時間の中には綿の山が地球全部を六七回も廻るやうな長い糸になつて了ふ。アムブロアジヌお婆あさんのやうな上手な糸紡ぎを何十万人も要る様な此の仕事は、何んで出来るのだらう?
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その入口で車を捨てると、彼は一枚の木の葉のやうにその中にもぐり込んだ。動物園の檻を覗いて廻るやうな残虐な気持で、彼は人々の間を揺れて行つた。しかしここでも気持は満されなかつた。
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それ故ここでは、人間本来の温かさが甚だ素朴に身に触れて感ぜられるのであつた。昼も夜も先生はなるべく群衆の中を歩き廻るやうにした。同じ一人ぽつちでも、つくねんと部屋に閉ぢ籠ることは、或る意味で結局饒舌であり五月蠅いものだ。
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興奮した彼はくらくらと目が廻るやうに感じた。と地震のやうな激しい力が自分を地の底から持ち上げて、自分をはうりだしたやうに感じた。
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フロルスは隅々まで気を配つて、しかも足早に監獄を見て廻つて、最後の地下室をも剰さなかつた。その目附は馴染のある場所を見て廻るやうな目附であつた。最後にフロルスは詞せはしく問うた。
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その勢で例のぱちぱちいふ音がするのである。兎に角或る生々したものが飛び込んで来て、部屋の隅々まで荒れ廻るやうな気がする。折々ぱちぱちが止むと、煙突の口から寒空へ立ち昇る火の子のぷつぷついふのが聞える。
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廿四時間で太陽が地球の東から西へ廻るやうに見えるのは、地球が廿四時間で西から東へ、自分で廻つてゐる証拠ですわね。
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そこでその御褒美を楽しみに、眠りました。真夜中頃、トロちやんの枕元で、ごそごそと、誰やら歩るき廻るやうでした。ふと眼をさましました。
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譲はあんなに玄関が遠くの方に見えてゐたのは、眼の勢であつたらうかと思つた。彼はまた電燈の笠のくるくる廻つたことを思ひ出して、今晩はどうかしてると思ひながら、花の垂れさがつた木の方に眼をやると、廻転機の廻るやうにその花がくるくると廻つて見えた。「姉があんなに申しますから、ちよつとおあがりくださいまし、」 女が前へ来て立つてゐた、譲はふさがつてゐた咽喉がやつと開いたやうな気持になつて女の顔を見たが、頭はぼうとなつてゐて、なにを考へる余裕もないので、吸ひ寄せられるやうに火のある方へと歩いて行つた。
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あの鉄砲を持ち出して暴れ廻るやうな腕白坊主が、一人ほしかつたな。
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「病気なのかい」 彼は僅に頭を掉りぬ。「それぢや心配でもあるのかい」 彼はなほ頭を掉れば、 「ぢやどうしたと云ふのさ」 宮は唯胸の中を車輪などの廻るやうに覚ゆるのみにて、誠にも詐にも言を出すべき術を知らざりき。彼は犯せる罪の終に秘む能はざるを悟れる如き恐怖の為に心慄けるなり。
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房一は、相沢といふ男からは、極端にむら気な、何か容易に手につかめないもどかしさを感じてゐたが、同時に、一脈の執拗さを受けとつてゐた。それだけに、競馬場でのあのくるくると廻るやうな、速い、曖昧な云ひ残しが、ふしぎに印象を残してゐた。「あの訴訟はどうなつたのかね」 と、房一は小谷に向つて訊いた。
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そして病的に過敏になつた彼の神経は、そこらを嗅ぎ廻るやうに閃めき動いて、女中を通して、自分のこの室にも病人がゐて、それが彼のはひる少し前に不治の身体になつて帰郷したのだと云ふことや、こゝの主人も丁度昨年の今頃亡くなつたのだと云ふことなど、断片的にきゝ出し得たのであつた。彼は毎晩いやな重苦しい夢になやまされた。
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四月二十一日 初めて取締生徒になる。あまりの忙しさに目が廻るやうなり。この忙しい間に自分の事をすることによつて、軍人精神が養はれると云ふことを知りたり。
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腹話術などといふものは京の土地柄気に入るらしい。昼「蛇姫」大カット、時間急ぎで眼の廻るやう。昼終ると、南僑と近くの四海楼といふチャチ支那料理へ入ったら、玉木潤一郎がビールのんでた。
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