幾許
全て
副詞
192 の用例
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なおこの時代の野蛮人は、一般にごくお粗末な霊魂不滅観を抱いていた。
すなわち人が死んだ後、なお幾許かの間、生きているものと信じていた。
死人の影が、地上の生活と同じような生活を、どこかで続けているものと信じていた。
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大杉栄『奴隷根性論』より引用
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それに彼女は、何もかも知つてゐた。
父が受取つた金の高、仲人がそのうち幾許はねたかといふやうな事まで。
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徳田秋声『チビの魂』より引用
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その道が飛騨への裏街道だった。
弥三郎はそこまで案内して来てくれた樵に幾許かの金を与えようとした。
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新田次郎『槍ヶ岳開山』より引用
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少しづゝ彼は列から後れた。
さうして幾許もなくアツシジの巷の靜かな夜の中に唯一人とり殘された。
此處で主が再び彼を見舞つた。
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阿部次郎『三太郎の日記 第二』より引用
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記した品物のほとんど凡ては私が親しく眼で見たものでありますから、ただ文献による記述よりは、活きた実状を伝えているかと思います。
もっともそのうちの幾許かは早くも絶えてしまったかも知れませぬ。
移り変りの激しい昨今では、その憂いがなお深いのであります。
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柳宗悦『手仕事の日本』より引用
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そして貧民として一生を終ったのだ。
しかしこれが為め英国の学術上の名声を高めたことは幾許であったろうか。
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愛知敬一『ファラデーの伝』より引用
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あのとき世界から消え失せていれば、まだ幾許かの救いがあったのだと。
虚淵玄『Fate/Zero Vol.4 「煉獄の炎」』より引用
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その頃は、まったくです、無い事は無いにしろ、幾許するか知らなかった。
皆、親のお庇だね。
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泉鏡花『女客』より引用
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戦時中にあっても、選挙で積極的に候補を擁立している。
終戦時においては幾許かの力を有していたが、その直後危機が訪れた。
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けれどもそれまでの私の仕打に就いては随分自分が好くなかった、ということを、十分に自身でも承知している。
だから今話すことを聞いてくれたなら、お前の胸も幾許か晴れよう。
また私は、お前にそれを心のありったけ話し尽したならば、私の此の胸も透くだろうと思う、そうでもしなければ私は本当に気でも狂れるかも知れない。
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近松秋江『別れたる妻に送る手紙』より引用
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義仲はその中に突入して血路を求めたが、股肱と頼む根ノ井、楯は戦死した。
とにかく近江まで落ちて来た時、つき従うものは既に幾許もなかった。
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菊池寛『日本武将譚』より引用
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そこへ、蘇生した女は、康範から太刀を奪いざまに、その胸を突いて殺してしまった。
康範は死んだが、女は自らも傷を負っており、あと幾許の生命もない。
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夢枕獏『陰陽師付喪神(つくもがみ)ノ巻』より引用
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父方の祖父については、私は何の知るところもない。
思うにそれは、祖父が早く死んだので、幾許も父の記憶に残っていなかったためだろう。
父方の祖母はかなりシッカリした婦人であったらしい。
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堺利彦『私の母』より引用
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そんなものは幾許でも上げるけれども、一体どうして今頃こんな所へ来たのさ。
岡本綺堂『飛騨の怪談』より引用
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その頃は、真個です、無い事は無いにしろ、幾許するか知らなかった。
皆、親のお庇だね。
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泉鏡花『歌行燈・高野聖』より引用
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そのため、現在連載中の作品にも過去に連載した作品のキャラクターが出演する。
また、連載作品間で内容が相互的に影響しあう時も幾許かある。
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此例などは、世間では必此感情論理の展開を認めないであらう。
が、幾許とも知れぬ沢山の例を擁しての立言であることを思うて頂きたい。
「かに」は、其自身欲する語と、自由な結合を作つて行く筈である一方に、かうした過去の制約に囚はれてゐるのであつた。
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折口信夫『副詞表情の発生』より引用
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あはは、と笑いながら琥珀さんはテーブルを拭き直した。
その顔に幾許かの憂いを見て、俺はなんと言ったらいいのか言葉に詰まった。
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奈須きのこ『歌月十夜 21 胡蝶の夢』より引用
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外にこれを求むる能はず、重ねてこれを得べからざる父と母とは、相携へて杳に迢に隔つる世の人となりぬ。
炎々たる猛火の裏に、その父と母とは苦み悶えて援を呼びけんは幾許ぞ。
彼等は果して誰をか呼びつらん。
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尾崎紅葉『金色夜叉』より引用
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彼は自ら雜色なミンストレルの衣を拵へて之を着た。
彼の富裕とその物惜みせぬ性質とは幾許もなく彼をアツシジ青年間の中心人物とした。
彼は決して商家の事務に疎い者ではなかつたが、唯餘りに交游に夢中になる性質がその家人を惱ました。
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阿部次郎『三太郎の日記 第二』より引用