尊い
全て
形容詞
1,887 の用例
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小太郎は、絵に書いた京都を見たことがある。
京都はなんとなく想像できたが、尊い人というのが誰だか分らなかった。
それを教えるのが基氏だった。
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新田次郎『新田義貞(上)』より引用
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初夜から始めさせた法華経を続けて読ませていた。
尊い声を持った僧の十二人のそれを勤めているのが感じよく思われた。
灯は僧たちのいる南の室にあって、内側の暗くなっている病室へ薫はすべり入るようにして行って、病んだ恋人を見た。
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与謝野晶子『源氏物語』より引用
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「忘れられぬぞあのことを」でござりまするか。
なんじゃ知らぬけれど、わたくしどもには一そ尊いように感じられます。
お上人さまの御証明を得たからには、もう安心いたしました。
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岡本かの子『取返し物語』より引用
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これは複雑な気持です。
実際こんなときに込上げて来る笑いほど尊い笑いはないと私は信じます。
この笑いきれぬ笑いを笑い得るものこそ、本当の強い、正しい、人間ではないかと考えます。
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岸田国士『笑について』より引用
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一時間半ばかり歩いてから町へ引きかえし、泉のところまで来た。
ぼくにはなつかしい泉だが、いまはそれが千倍も尊いものになったんだ。
ロッテは低い石垣に腰をかけ、ぼくたちはその前に立った。
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ゲーテ/井上正蔵訳『若きウェルテルの悩み』より引用
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北国にも夏はあった。
それは極めて短い夏であったが、それだけに一年中で夏は尊いのだった。
島は現地の人といわず、日本人といわず、昼も夜ものべつ幕なしに、飲み歌い踊って暮すのだった。
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海野十三『鍵から抜け出した女』より引用
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かれは嫌悪のほか軽蔑しか船長に対して感じなかったし、船長を殺すという決心を堕落した精神によって、くもらされもしなかった。
ナービイの計画は、政治家としての尊い考えの上に立っていたのである。
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ハインライン『宇宙の孤児』より引用
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金色の日輪は、密雲を噛み破るように、端だけ見えていた。
今や何か尊いものがこの世に生れかけているような感銘を彼女もうけた。
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吉川英治『三国志』より引用
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わたしにとってかれの名誉は自分の名誉とおなじぐらい尊いものですから。
しかしながら、わが国の法によれば、証明することのできない問題は武力で審理することになっているはず。
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エディングス『ベルガリアード物語2 蛇神の女王』より引用
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島は現地の人といわず、日本人といわず、昼も夜ものべつ幕なしに、飲み歌い踊って暮すのだった。
僕たちの監守にとっても、それはやはり尊い夏祭りの夜だったのである。
午後九時に、僕たちの部屋を二人の監守が見まわるのが常例になっていた。
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海野十三『鍵から抜け出した女』より引用
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然し生活の習俗性の要求にのみ耳を傾けて、自分を置きざりにして、外部にのみ身売りをする専門家は、既に人間ではなくして、いかに立派でも、立派な一つの機械にしか過ぎない。
いかにさもしくとも力なくとも人間は人間であることによってのみ尊い。
人間の有する尊さの中、この尊さに優る尊さを何処に求め得よう。
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有島武郎『惜みなく愛は奪う』より引用
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何万年とも知れぬ悠久な天地の流れのうちに、六十年や七十年の人生は、さながら電瞬のような短い時でしかない。
その短い一生のあいだに、会い難き人に会うというほど尊いものはない。
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吉川英治『宮本武蔵』より引用
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本当は私も強い人になりたい。
そして教会の中に強さが生み出した真の生命の多くを尊く拾い上げたい。
私は近頃或る尊敬すべき老学者の感想を読んだが、その中に宗教に身をおいたものが、それを捨てるというようなことをするのは、如何にその人の性格の高貴さが足らないかを現わすに過ぎないということが強い語調で書かれているのを見た。
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有島武郎『惜みなく愛は奪う』より引用
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民主主義にもたしかにいい所はある。
自由ということを君らがこの上もなく尊いものに感じているのもよく判る。
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半村良『不可触領域』より引用
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恋は人心の最も深き願いの一つである。
そして多くの尊い問題をその内より分泌する、重要なる生活材料である。
しかもその意識のうちには、私の信ずるところでは、天に通ずる微妙なる架橋を含んでいる。
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倉田百三『愛と認識との出発』より引用
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しかも、聖職は神のすべての宝の中でもその頭に位するもので、神の純潔を象徴する特別なしるしであります。
最も尊い生命であるところの純潔に参与することを示すものであります。
そしてこれらの聖職に任命された人々はとくに神に奉仕し、神の特別の下僕となるのです。
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チョーサー/西脇順三郎訳『カンタベリ物語(下)』より引用
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光線を奪えば光線、空気を奪えば空気を、活動、音声、嗜好品、それらは、それが奪われるまでは第二義的であっても、奪われると同時に、それは一切第一義的な欲望に変わるのだ。
自由を奪われたものは自由を生命より尊いと思うようになるものだ。
菓子には、銀色の小さなフォークが楊枝代わりについていた。
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葉山嘉樹『海に生くる人々』より引用
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そして尊いその球を僕らが守護していることも世間の人は知っている。
国枝史郎『沙漠の古都』より引用
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頂相は字義的には「頭部の相貌」という意味であるが、元々は三十二相の一つ無見頂相に基づき、決して覗き見ることのできない崇高な如来の頭頂部の有様を示す。
転じて師や祖師の顔姿も尊いとの考えからその肖像を表す用語となった。
頂相の語は北宋末から南宋時代の文献に散見され、これが日本にも伝わったと考えられる。
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私たちも山下君たち五人を葬る。
尊い生命がこんなに簡単に処理されて果たしてよいものであろうか?
板片に鉛筆で小さな墓標を書いて立てた。
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永井隆『長崎の鐘』より引用