寄る辺のない
12 の用例
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その約束というのは町を作るということだ。
おれは寄る辺のない人々が住む場所を作ろうとし、あの女はそれを見たいと言った。
おれはそのために実の親と戦い、また海を渡ってこんなところまで来た。
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小川一水『風の邦、星の渚 レーズスフェント興亡記』より引用
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底抜けに明るい、というのがこの歌を評する時に出てくる言葉だが、パウラには、この歌のメロディが明るいとはどうしても思えなかった。
寄る辺のない不安が底に流れているというか、同じ明るさでも、いまにも消えそうな蝋燭が風に揺れている感じというか。
あの頃は日本人と自分の感性が違うのだろうと思っていたが、いまではそうでないことがよくわかる。
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福井晴敏『終戦のローレライ(下)』より引用
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それはいうまでもなく寄る辺のない婦人、特に子供をかかえた寡婦や未婚の母親たちであった。
中世社会においては成人した婦人の数は男性に比べて相対的に多かった。
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阿部謹也『ハーメルンの笛吹き男 ――伝説とその世界』より引用
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とくんと跳ねた心臓に手をやり、瞬く星々に目を凝らす。
予感めいたざわめきはすぐに形を失い、寄る辺のない心細さだけが胸中に残された。
風が吹き、中庭の木々がざわざわと葉を揺らす。
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福井晴敏『機動戦士ガンダムUC 05 ラプラスの亡霊』より引用
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怒りの引火性が高く、すぐにヒステリックな癇癪をおこし、その怒りをコントロールすることができない。
寄る辺のない不安感、孤立無援の思いを抱えていて、ささいなことに怯える。
そのせいか、つねに自分に注意を惹こうとし、無理難題をいう。
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多島斗志之『症例A』より引用
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彼女がいったいなぜわたしたちを自分のところへ呼ぼうとしたのか、それはわたしにはいまだに謎である。
彼女ははじめのうちこそわたしたちにかなりやさしくしてくれていたが、やがて、わたしたちがまったく寄る辺のない、どこといって行き所もない身の上であることを見てとると、たちまちその本性をあらわした。
その後彼女はわたしにはすこぶる当たりがよくなり、なんだか不作法なくらい、お追従に近いくらいちやほやするようになったが、はじめのうちはわたしもおかあさんとおなじ苦しみをなめていたのだった。
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ドストエフスキー/北垣信行訳『貧しき人びと』より引用
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リチャードとともに国際的な人種を問わない養子仲介機関であるウェルカム・ハウスも設立している。
また、リチャードの死後、自分の娘達の若きダンス教師であったセオドア・ハリスと再婚し、彼とともに米国人とアジア人との混血の寄る辺のない子供達を教育するためにパールバック財団を設立した。
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といって、今は、寄る辺のない御身と聞く。
堀和久『春日局』より引用
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ジョン・ボウルビィの研究によると、母に置き去りにされた子どもは周囲を探索し、いないとわかると淋しくなり、悲しくなり、不安になり、しくしくと泣き始める。
それでも帰って来ないと恨みと怒りから大声で泣き出し、やがて泣き止むが、最後には孤立無援感、空虚感、寄る辺のない不安から遂には無感動に陥るという。
境界性パーソナリティ障害に共通する感情は、こうした見捨てられるということによって生じる感情体験そのものであり、これら言語成立以前に端を発する衝動が、過食、性的逸脱、リストカット、過剰服薬、アルコール依存などの行動化として表現される。
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相楽も松から金を借りて返済が滞ったために、厳しい督促にあった。
彼の勤め先の前へ来て、「寄る辺のない老人から金を借り倒す不埒な男に制裁を」とガリ版で刷ったビラを通行人に配られたり一日中会社の前に立って携帯マイクで「年寄りの敵」とどなりたてられたのには音をあげたものである。
結局会社に居辛くなり、借りた金の代りにしばらく松の取立て代行屋をやった。
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森村誠一『花刑』より引用
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ところが先頃、知人の婚礼に呼ばれた帰りの途で、両親が、隅田川の土手から川に落ちて死に、店は人手に渡ってしまった。
他に寄る辺のないお琴は、父方の叔父の家に引き取られたが、山谷堀のそばでささやかな乾物店を営むというこの叔父夫婦が、夫婦揃って大変な因業者で、事毎に、お琴に辛くあたる、と言う。
朝から晩まで、それこそ足腰の立たなくなるほどこき使い、失敗すれば、「愚図」だ「馬鹿」だと口汚く罵る。
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藤水名子『浪漫’s 見参!桜子姫』より引用
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境界性パーソナリティ障害の抑うつには特有の構造が見られ、それは見捨てられることに関連する特殊な感情反応に由来している。
憤怒、空虚感、絶望、寄る辺のない不安、孤立無援感、抑うつ、自暴自棄の感情といったマーガレット・マーラーが「黙示録の7人の騎士」と呼んだ見捨てられに関連する破壊的な感情である。
境界性パーソナリティ障害にはこれらの抑うつの嵐が次々と、あるいは一挙に襲ってくるという特殊な構造が見られ、「穴に吸い込まれる」「落ち込む」と表現される深い抑うつの波は伝統的なうつ病の姿とは異なるものである。
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