始終
全て
副詞
名詞
3,515 の用例
(0.01 秒)
-
三沢は在学中Hさんを保証人にしていた。
学校を出てからもほとんど家族の一人のごとく始終そこへ出入していた。
帰りがけに挨拶をしようと思って、ちょっと嫂の室を覗いたら、嫂は芳江を前に置いて裸人形に美しい着物を着せてやっていた。
…
夏目漱石『行人』より引用
-
公の務を退いた今日でもその惰性だか影響だかで、知合間の往来は絶える間もなかった。
もっとも始終顔を出す人に、それほど有名な人も勢力家も見えなかった。
その時の客は貴族院の議員が一人と、ある会社の監査役が一人とであった。
…
夏目漱石『行人』より引用
-
老紳士は鼻眼鏡の後から、眼でちょいと頷いた。
あの始終何かに微笑を送っているような朗然とした眼で頷いたのである。
…
芥川竜之介『西郷隆盛』より引用
-
彼は自分を始終脅かしていた物の正体を明瞭に見たような気持ちがした。
その形が彼の前に現れたなら必死になってとり組んでやると思った。
…
横光利一『御身』より引用
-
同じ宮城の中といっても、始終そばにいるわけにはいかないんですもの。
荻原規子『西の善き魔女3 薔薇の名前』より引用
-
ところで武の妹はお幸と申しまして若い者のうちで大評判な可愛い娘でございまして年はそのころ十七でした。
私も始終顔を見知っていましたが言葉を交わしたことはなかったのです。
先方では私が叔母の家の者であり、学校の先生ということで遇うたびに礼をして行き過ぎるのでございます、田舎の娘に似わない色の白い、眼のはっきりとした女で、身体つきよくおさよに似てすらりとしていました。
…
国木田独歩『女難』より引用
-
おせいはそれが崇っているのだと始めて始終が見えきったように思った。
有島武郎『星座』より引用
-
父母のどちらから言っても近い間柄であったから、右大臣家の息子たちの遊びに来る時はあまり隔てのない取り扱いをこの家ではしているのであって、女房たちにも懇意な者ができ、意志を通じるのに便宜があるところから、夜昼この家に来ていて、うるさい気もしながら心苦しい求婚者とは尚侍も見ていた。
母の雲井の雁夫人からもそのことについての手紙も始終寄せられていた。
…
与謝野晶子『源氏物語』より引用
-
人の言葉に従ってさえいれば間違いがないと信じ切っていた。
そして始終心の中に誰れかを立てておかないと気がすまないのである。
子供のころは校長先生や酒屋の旦那様だった。
…
矢田津世子『鴻ノ巣女房』より引用
-
実はあなたのようになれたら結構だと思って、始終考えてるくらいです。
夏目漱石『虞美人草』より引用
-
そうして私の直覚がはたして当ったか当らないか、要するに客観的事実によって、それを確める機会をもたない事が多い。
そこにまた私の疑いが始終靄のようにかかって、私の心を苦しめている。
もし世の中に全知全能の神があるならば、私はその神の前に跪ずいて、私に毫髪の疑を挟む余地もないほど明らかな直覚を与えて、私をこの苦悶から解脱せしめん事を祈る。
…
夏目漱石『硝子戸の中』より引用
-
だが、船着き場へ上がってみると、岩場には意外に棚状の部分や窪みなどがあった。
始終風に吹きさらされているせいか、岩の表面には苔すら生えていない。
灰色で、殺伐とした光景が続いている。
…
二階堂黎人『奇跡島の不思議』より引用
-
そのうち若紫を二条の院へ迎えたのであったから、源氏は小女王を愛することに没頭していて、六条の貴女に逢うことも少なくなっていた。
人の所へ通って行くことは始終心にかけながらもおっくうにばかり思えた。
常陸の女王のまだ顔も見せない深い羞恥を取りのけてみようとも格別しないで時がたった。
…
与謝野晶子『源氏物語』より引用
-
誰もが始終世界の歴史について考えているわけにはいきませんもの。
森本薫『女の一生』より引用
-
立て続けの二点目は、巧たちを調子づかせた。
始終走り続けて重いはずの足が、まるで練習のときのように軽く動く。
ヒョイと敵を躱した足で、どんどんボールを運んではパスを回す。
…
若月京子『トラブル・トラブル』より引用
-
それは門の竹の葉が、ざわめく音に交りながら、たった一度聞えたのだった。
が、その声は東京へ来ても、始終心にかかっていた男の声に違いなかった。
お蓮は息をひそめるように、じっと注意深い耳を澄ませた。
…
芥川竜之介『奇怪な再会』より引用
-
その向こうに柳の枝でできた帷なしの揺籃が半ば見えていた。
中には、その晩、始終泣き通しにしていた小さい男の児が眠っていた。
男はその室がテナルディエ夫婦の寝てる室に続いていることを察した。
…
ユゴー・ヴィクトル『レ・ミゼラブル』より引用
-
千代紙や江戸絵をお土産にもらつて、明る日、村へかへつてきました。
祭の日が暮れて友達のうちへ泊つた一分始終を祖母に話してきかせました。
すると、祖母は眼をみはつて、そのかたは父の最初の「つれあひ」だつたと驚かれました。
…
竹久夢二『桜さく島』より引用
-
私はそれが始終気にかかって、何かで占ってみなければいられないんです。
例えば、友人を訪問する時なんか、向うから来る電車の番号をみて、奇数だったら家にいるとか、偶数だったらいないとか、そういう占いをしてみますが、それが不思議によくあたるんです。
…
豊島与志雄『月かげ』より引用
-
邦文書は三四の小売店が競争で持つて来てくれるから先づ心配はない。
その中一軒は美術書専門で始終新らしいものを持つて来てくれる。
古書は東京と大阪の五六の書店から目録を送つて貰ひ、それによつて買ふことにしてゐる。
…
土田杏村『私の書斎』より引用